賃貸住宅の清掃業務
賃貸マンションなどの共同住宅は、多くの入居者が生活する空間です。
清掃をきちんと行うことにより建物の美観を保つことは、安全・快適な暮らしには欠かせません。
このような環境整備は入居率にも少なからず影響を及ぼしますし、汚損や腐食を防止して修繕の周期を延ばすこともできます。
しかし清掃は、やらなければ法的な罰則があるような項目ではありませんし、建物の維持管理費用の中でも大きなウエイトを占める作業になりますから、管理費用を削減したいという思惑が働くと、まっ先に削られてしまう管理項目でもあります。
清掃状態は自分の目でチェック
物件を定期的に見に行くとわかりますが、清掃の状態がよくない賃貸住宅は入居者のマナーも荒れがちです。
例えば新築時。
初めての入居者は新築からの入居ということもありますし、気持ちよく暮らしたいという意識も高い傾向があり、清掃回数(工数)の割には物件がキレイに保たれていることも多いです。
しかし、2年、3年、5年と経過し、1回、2回と入居者が入れ替わると、これまでと同じ清掃回数なのに物件の美観が保たれない、ということがよく起こります。
ゴミ置き場の使い方やポストのチラシゴミ、放置自転車なども増え、マナーに関するクレームの電話も増えてきます。
もしここで家賃の下落や入居率の低下が重なり、清掃にかける費用を削減するとどうなるでしょう。ますます物件は荒れがちになり、入居は決まりにくく、家賃は下がりがちになり、負のスパイラルに陥ってしまいます。
このような場合大事なのは、現実をきちんと把握することです。
管理会社から届く清掃報告書やちゃんとやっていますトークをあまり信用してはいけません。
請負人である以上、やれていませんなどとは絶対に言わないからです。
やはり、できるだけ自分で定期的に複数回、しかも抜き打ちで見に行って、本当に今の回数・時間・清掃の質が適切なのかどうかを見極めた方がよいでしょう。もし可能なのであれば、経年と共に清掃の頻度は増やしていった方がいいかもしれません。
日常清掃
日常清掃とは、掃き掃除・拭き掃除・煤払いなどを中心とした清掃業務です。水洗い・除草などを合わせて行うこともあります。
常日頃から行う日常清掃の品質が環境衛生のためには重要です。
大家さんが自分で行うことももちろん可能ですから、毎回とまではいかなくても物件チェックも兼ねてやってみるのはとてもいいことだと思います。
管理会社に委託する場合は、チェックリストなどの作業項目表をみて足りない部分などがないか、再委託の場合はキチンと品質が担保されているか確認しましょう。
大手管理会社→地元の管理会社→町の清掃業者、などのルートで孫請け、ひ孫請けまで作業が流れることはよくあります。
それでも支払った分だけの品質を保ってくれればいいのですが、ひどいと中抜きだけして丸投げの会社もあります。なんのために管理を任せているのかわかりませんから、品質には妥協しない姿勢が大事です。
再三注意しても改善されなければ、管理会社の変更、または清掃業者に直接発注をして大家さんが清掃管理を行うなどの方法をとらなければなりません。
自分で直接、地元の清掃会社やシルバーセンターなどの請負業者さんに依頼をすれば、金額的には安い値段で業務委託をすることが可能です。
しかし、これらの業者さんは基本的には言ったことしかしてくれませんので、清掃管理表や仕様書などを自分で準備して、適切な指示とフィードバックを行う手間は必ず発生します。
また、完了検査などの後追いチェックも定期的に行わないと、品質は下がっていく傾向もありますから注意が必要です。
定期清掃
定期清掃とは、日常清掃よりも長いスパン、数ヶ月~年に1回くらいの頻度でいつもと違う清掃資機材を用いて行う清掃のことです。
賃貸住宅の場合は、ポリッシャーを用いた床面の機械洗浄やケルヒャーなどの高圧水洗浄機を用いた洗浄作業が行われることが多いです。
エントランスなど大人数が頻繁に行き来する場所は、床材に適した洗剤を使ってポリッシャー洗浄を行うのが効果的です。直接ブラシでこすりますから汚れも落ちやすいです。
共用廊下や腰壁はコンセントや水栓の問題もありますので、ポリッシャーよりも高圧水洗浄機が適しています。水で掻き落としますので洗剤残りなどの心配はありません。
しかし、かなりの水圧がかかりますので汚れた水が結構飛び散ります。階下の車や自転車などにかかるとクレームになるため、注意が必要です。
清掃後は濡れて滑りやすくなりますので、水切りをしっかり行う必要があります。
いくらこまめに日常清掃を行っていても、経年と共に汚れは蓄積していきます。
大して気になっていなかったとしても、プロに定期清掃に入ってもらうと驚くほどきれいになりますので、美観の維持だけではなく劣化の防止という観点からも取り入れた方がいいでしょう。
単発で依頼をすると少し高くつきますので、定期的に頼むつもりならその旨を伝えた方がいいと思います。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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