水回りに関連する法定点検 ~ 貯水槽/ブースターポンプ点検/浄化槽

人が生活する住宅において、給水・排水の水回りに関する設備は欠かせないものです。

日本では、水道の蛇口をひねれば飲用することのできる水質の水がでること、キッチン・お風呂・トイレなどから出る排水が適切に処理されて流れていくことは、当たり前のことです。

 

そのために賃貸住宅で必ず行わなくてはならない法定点検に、貯水槽の清掃と水質検査(簡易専用水道検査または小規模受水槽水道検査)、直結増圧給水ポンプ(ブースターポンプ)点検などの給水に関するものと、浄化槽の保守点検・清掃・定期水質検査などの排水に関するものがあります。

 

給水方法 / 3つの違い

アパートやマンションなどの賃貸住宅への給水方式は3つの方法があります。

ひとつめは「直結直圧式給水方式」。

文字の通り、水道局が張り巡らせている上水道の配管から部屋の蛇口まで直圧で水を運んでいます。

水を押し出す力は水道本管の圧力に頼っていますから、あまり高い位置までは押し上げることができません。

ですから、2~3階建てくらいまで(地域によっては4~5階までいけることもありますが、上階は水圧が低いことがあります)の低層の建物で採用される給水方式です。

 

ふたつめは「貯水槽(受水槽)方式」。

配水管から引き込んだ水をいったん建物の貯水槽に貯めて、ポンプや高架水槽を経由して給水する方式です。

貯水槽に貯めた水をポンプで汲み上げますから、高層マンションでも安定的に給水することができます。

しかし、貯水槽を定期的に清掃しないと飲み水に異物が混入してしまったり、ポンプが壊れるといきなり全戸断水することにもなりかねませんから、適切な管理が必須です。

 

最後が「直結増圧式給水方式」です。

受水槽を経由せず排水管から直結なのですが、間にブースターポンプと呼ばれる増圧ポンプをかまして直圧では届かない高層階まで水を押し上げます

しかし、いくら増圧とはいっても10階程度までが限界ですから、それ以上の物件では貯水槽方式を採用することになりそうです。

最近では、ブースターポンプを複数基直列に配置して10階以上まで給水する直列多段方式という方法もあるようなのですが、賃貸住宅に採用してコストが見合うかどうかが問題です。

 

3つの給水方式のうち、法定点検が必要なのは「貯水槽(受水槽)方式」と「直結増圧式給水方式」になります。

 

貯水槽の清掃と水質検査

貯水槽の容量が10㎥を超えるものが設置されている場合は、簡易専用水道施設となり、水道法(厚生労働省)で定められた専門の水道検査機関による「簡易専用水道検査」を受けなければいけません。

貯水槽の清掃を1年に1回以上行い、水道水に有害物や汚水等が混入するおそれがないか点検し、臭い・味・色・色度・濁度・残留塩素などに関する水質検査を行い、報告書を提出します。

水質検査の項目などは自治体によってかなり異なります

県や市をまたいで複数の物件を所有している大家さんは、その地域の点検項目にあわせてもれなく法定点検を行う必要があります。

 

10㎥以下の小型の貯水槽は、小規模受水槽水道施設となり、水道法の規制は受けませんが、各自治体の条例によって清掃・点検・水質検査の条項が定められています。

簡易専用水道の項目とは異なることもあるようですが、いくら小規模とはいえ、飲み水になる上水道を供給するための設備ですから、同等の検査をしておくことがベストだと思われます。

 

直結増圧給水ポンプ点検

直結増圧給水ポンプ(ブースターポンプ)は、各自治体の条例によって年1回の点検が義務付けられています。

逆流防止機能、運転制御機能、その他正常な運転に必要な機能について点検します。

ブースターポンプは平成4年に初めて認可・採用された比較的新しい給水方式で、コンパクトで貯水槽のように広い設置場所が必要なく、配水管から直接供給するため新鮮で、貯水槽設備よりも省エネということもあり、賃貸住宅でも多く採用されるようになってきました。

 

浄化槽の保守点検・清掃・定期水質検査(法定検査)

水回りに関連する法定点検の最後は、排水に関する法定点検です。

 

公共下水道が整備されている地域で新設することはまずないとは思いますが、下水道の整備されていない地域、もしくは下水道に切り替えを行っていない建物には、浄化槽が設置されていると思います。

浄化槽は、槽内に生育している微生物(バクテリア)の働きを利用して、汚水を分解しきれいな水にして川などに放流する施設です。

その働きを十分に発揮させるためには、適正な施工と維持管理が必要となります。

正しい使い方と適切な維持管理を行えば、下水道と同等の機能を発揮できますが、使い方を誤ったり、維持管理を適切に行わないと浄化槽からの放流水により河川などの水が汚染されてしまいますし、悪臭を放ったり、汚染水が地下に浸水して地下水を汚染してしまうこともあります

浄化槽が設置されている地域では、井戸水を活用していることも多く、汚染された地下水が飲料用の井戸水に混ざると予期せぬ被害が出る可能性があります。

 

浄化槽法(環境省)で定められている法定検査は、新しく設置してから3ヶ月を経過した後、キチンと性能を発揮できているかを検査する「7条検査」と、年に一回、指定検査機関が行う外観検査や水質検査などの「11条検査」があります。

しかしその2つの法定検査だけでは、浄化槽を最適な状態に維持することはできませんので、機器点検や運転状況の確認、消耗品の交換などの「保守点検作業」や、浄化槽内に沈殿する汚泥を引き抜く「浄化槽清掃」を定期的に行います。

浄化槽の保守点検や清掃、定期水質検査(法定検査)を行える業者は、各エリアごとに寡占化しており、複数の事業者と比較検討しにくいことがままあります。

しかし、このような専門性が高く、独占化しやすい業種は、価格や作業品質に競争力が働きにくくもなりますので、任せっぱなしで放置しすぎず、定期的なヒアリングや報告確認、場合によっては現地のチェックも行うとよいと思います。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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