消防法(総務省)に準拠する法定点検 ~ 消防用設備等点検/防火管理制度
多くの人が暮らしたり活動するマンションやビルなどの建物では、万が一火災が起きたときの避難経路や消火活動に支障があると、大きな被害を出すことになります。
そのため、一定の用途や建物規模、収容人数などの基準によって、定期的に点検や報告をすることが義務付けられています。
ほとんどの賃貸住宅(共同住宅)に該当するのが、「消防用設備等点検(消防法第17条の3の3)」です。
そして規模や用途によって必要になることがあるのが「防火管理者の選任(消防法第8条)」です。管轄の消防署に尋ねると詳しく教えてくれます。
消防用設備等点検
共同住宅には小規模の建物であっても、必ずなにかしらかの消防設備が設置されています。
消防用設備とは、
- 消火器やスプリンクラーなどの消火設備
- 煙やガスを感知して発報する自動火災報知器や非常ベルなどの警報設備
- ベランダなどにある避難はしごや誘導灯などの避難設備
など、火災が発生した時に居住者が速やかに避難したり、迅速な消火活動を助けるための設備です。
これらの消防用設備は、水道や電気などと違って日常的には使用しませんので、もし設備が古くなって故障していたとしても気付きません。
いざという時に動作しなければ意味がありませんので、定期的に点検、動作確認を行っておく必要があります。
消防設備点検の内容は、半年に一度の機器点検と1年に一度の総合点検があります。
- 消防設備の電源やポンプなどがちゃんと作動する状態になっているか(作動点検)
- 外観や簡易操作などにより設備の機能がきちんと発揮できる状態になっているか(機能点検)
- 置いてあるべき場所に設置されているかやキズや損傷などがないか(外観点検)
などをチェックするのが機器点検、それに加えて、実際に作動や起動をさせて稼働確認をするのが総合点検です。消火器の噴射試験や詰め替え作業などもこのタイミングで行います。
不良個所があれば速やかに是正し、それらの点検結果をまとめたものを、賃貸住宅なら3年に一度消防署に報告します。
消防法は基本的に、その建物自体の大きさ、使う人数の多さ、決まった人だけではなく不特定多数の人が使う場合、高齢者などの自力避難困難者がいる場合、など被害が大きくなる可能性が高いほど厳しくなります。
ですから、賃貸住宅+テナントの複合ビルや高齢者住宅、障がい者施設などは、設備の設置基準も報告の頻度も高くなります。
点検は、小規模の建物であれば資格者でなくてもできますが、防災のための重要な設備ですから消防設備士や消防設備点検資格者などのプロに任せた方がいいでしょう。
メンテナンス部門がある管理会社なら問題なく対応できると思います。
点検が済んでいる設備には必ず点検済証のラベルが貼ってあります。日付を確認してみましょう。
防火管理制度
収容人員が50人以上の規模の共同住宅を所有するオーナー(管理権限者)には、その建物の「防火管理者」を定めて、防火管理業務を行わせる義務があります。
防火管理者は火災の発生防止と被害の最小化を目的にして、消防計画を作成したり、設備の維持管理を行ったり、消火訓練や避難訓練を行う責任者です。
防火管理者は、独占業務(その資格者でないとできない業務がある)ですから国家資格です。
建物の用途や規模によって甲種と乙種がありますが、賃貸住宅の防火管理者の場合は、甲種になることが多いと思います。
国家資格とは言いますが、1~2日間の防火管理講習を受けることで取得できます。
防火管理者は消防署に届け出ることで選任されますが、名義貸しのような名ばかり防火管理者を置いているだけの賃貸住宅も結構あります。
もしそのような状態で火災事故が起きてしまったら、管理不十分で過失を問われてしまったら、所有者であり管理権限者である大家さんは、どうあがいても責任追及を逃れることはできません。
であるならば自ら資格を取得して防火管理者となり、管理会社や消防設備会社などのサポートを受けながら、しっかりとチェック機能を働かせた方が有益なように思います。
物件が遠方であったり、高齢であったり、兼業であるなどの事情があって自ら防火管理者になることができない場合でも、信頼できる業務委託先を選ぶことが大事です。
その他
最近では一般賃貸ではなく、サービス付き高齢者向け住宅や障がい者施設など、自力避難が困難なことがある方を対象とした住宅や施設の建て貸しを行う地主さんや不動産投資家さんも増えてきました。
このような建物は、場合によっては特定防火対象物に該当するケースもあり、消防法による規制がかなり厳しくなることがあります。
運営面でも特別なノウハウが必要になりますから、一般賃貸やるよりはいいか、などという安易な考え方で参入すると痛い目を見ることがあります。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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