天災・事故や事件などの災害発生リスク
入居率の低下や入居者トラブル、建物の老朽化に伴う修繕の増加などは賃貸経営のリスクとしてよく話題に上がりますが、これらのリスクは、ある程度想定がつくものですし、経営努力で解消することができるリスクです。
しかし、ある日突然やってくる災害は、避けようもなく甚大な被害をもたらします。どのような災害に備えて、どのような備えをしておけばいいのか考えてみます。
地震や台風などの自然災害による被害
来ることがわかっていても避けられない災害が、地震・台風・洪水・雷・竜巻・ひょう・雪などの天災です。
シャッターを閉めたり、ヒモでくくってみたり、土嚢を積んだりといった予防対策はできますが、不動産は逃げられませんから受けきるしかありません。
待ち構えていた割には大したことなかった、ということも多いかもしれませんが、もしもの場合に備えて予防保全をキチンと行ったり、保険に加入してリスクヘッジをしておくことは大事なことです。
火災や漏水など突発的に発生する事故
火災の原因はさまざまです。
たばこやコンロからの出火など入居者に過失のあるものもあれば、放火のような事件性のあるもの、または電気系統の配線不良など建物の瑕疵によるケースもあり得ます。
漏水も同様です。
入居者が排水溝を詰まらせたり、水を出しっぱなしにするような過失事故もあれば、大雨で浸水被害が出ることもありますし、給排水管の老朽化が事故につながることもあります。
その他にも、ガス爆発が起きたり、上空から物が落ちてきたり、クルマが突っ込んできたり、泥棒が窓を破って侵入してきたりと、思いもよらない事故に遭遇することがあります。
あまりの事態にびっくりしてしまいますが、そのような損害も保険に入っていればカバーできることがあります。
孤独死や自殺、殺人など人が亡くなる事件
賃貸住宅は住まいですから、入居者の生活にいちばん密接している場所です。
人が亡くなる場面に遭遇する可能性はゼロではありません。
人が亡くなった部屋や建物のことを「事故物件」と呼んで、おもしろおかしく茶化したり、忌み嫌うような風潮がありますが、人はいつか死ぬものですから人が亡くなった部屋自体、特別なものではありません。そこら中にあります。
救急車で運ばれて病院で死亡診断書が出されれば、亡くなった場所は病院となりますが、明らかに亡くなっていて救急車に乗れなかったらその部屋が亡くなった場所になるだけです。
ちょっと困るのは、自殺や他殺、自然死なのだけど発見が遅れて腐敗が進んでしまった、など、「心理的瑕疵」が発生する場合です。
心理的瑕疵物件とは、物件そのものに瑕疵・欠陥があるわけではないけれど、過去に人が亡くなっているとか、隣が墓地や宗教団体や暴力団の事務所だったりするなど、借りる人が心理的に抵抗を感じやすい条件がある物件のことです。
一般的にそういう物件は入居者がつきにくくなるので、家賃を下げて募集することになりますが、相場よりも安く借りられるなら心理的瑕疵があっても良い、という方もいらっしゃるものです。
もしそれで入居は決まったとしても、その前段階では原状回復費用負担や空室期間の長大、下落分の家賃損失があります。その部分の金銭リスクをカバーしようと思うなら、火災保険に「家主費用特約」を付帯するなどの対策が必要です。
自分の身を自分で守るための損害保険
天災など、誰のせいにもできない被害もあれば、入居者などの過失によって損害を被ることもあります。
加害者がいる場合は、大家さんが被った損害は加害者に請求をすることができます。しかし、加害者に支払い能力がなければ、たとえ裁判で勝ったとしてもどうしようもありません。
そのためにも、自分の身は自分で守るための対策を取っておく必要があります。
基本となるのは、建物自体の損害をカバーする「火災保険」です。
この主契約をベースに、
- 地震に起因する被害までカバーする「地震保険」
- 災害で部屋が貸せなくなってしまったときの家賃収入の損失を担保する「家賃補償保険」
- 物件で起こる死亡事故に伴う損失をカバーする「家主費用特約」
などを、必要に応じて組み合わせて利用します。
事故が起きてしまったとき火災保険は何度でも使えますが、瑕疵があるとわかっていながら必要な修繕を行わずに放置した結果起きてしまった事故まで、何度も補償してくれるほど甘くはありません。
あくまで保険は、いざという時に自分を守ってくれるものであると認識しておきましょう。
▶ 参考:大家さんのための火災保険
他人に与えた損害をカバーするための損害保険
災害では、自分の物件が被害に合うリスクが注目されがちですが、同時に自分の物件が他人に被害を与えてしまうリスクもあります。
例えば、敷地内の樹木が倒れて脇に止めてあった車にキズをつけた、とか、タイルや看板が剥落して通行人にケガをさせた、などです。
大家さんに完全に過失がなく被災事故だった場合など、法的には賠償責任が問われないこともありますが、そうでない場合は、被害者に対して損害賠償責任が発生します。
「施設賠償責任保険」に加入しておくことは、そのようなリスクを解消するための有効手段です。
▶ 参考:大家さんのための火災保険
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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