大家さんのための火災保険
ここ数年頻発する大型の地震、妙な動きを見せる大型台風、局地的に激しい被害をもたらす竜巻、雨だけでなくゴルフボール大の雹まで降りそそぐゲリラ豪雨、火災事故が頻発する雷、短期間で集中的に降る大雪…。
ここのところ、観測史上初、数十年ぶり、などといった規模の自然災害が頻発しているように感じます。
どんなに備えをしていても、突如襲ってくる災害を回避することは困難です。
また、自然災害だけでなく、火災・漏水・破損・盗難など、事故や事件のような人為的な災害も起こりえます。
めったに起きることではないかもしれませんが、もし起きてしまったら、大切な資産が毀損してしまうだけでなく、被害者への賠償責任が生じてしまうこともあります。想定できない被害に対して最も有効なのは、やはり保険です。
大家さんのための保険
いざという時のために、建物の保険に入っている大家さんは多いと思います。
しかしその実は、金融機関でローンを組んだときに薦められた保険にそのまま入っただけだったり、どんな補償内容なのかよく知らない、なんてことも良くあります。
事故が起きたときに慌てて保険証券を見るという大家さんも多いです。
よく見ると、今回の被害部分は特約事項で未加入だった…、時価補償しかされなくて古い建物が再建できなかった…、なんてことになったら笑えません。
どんな保険契約になっているかは、よく確認しておきましょう。大家さんに必要な基本的な保険についてまとめます。
1.火災保険
火災保険は、全ての基本になる保険です。
「建物」を対象にしているものと、「家財」を対象にしているものがありますが、賃貸住宅の場合の大家さんの財産は建物ですから、建物の補償をベースにした保険を選択することが多いです。
一戸建てやアパート、マンションなど、居住のみを目的としている建物で加入できる火災保険は、ベーシックな「住宅火災保険」と補償範囲が広い「住宅総合保険」の2種類があります。
保険会社ごとにサービス内容を拡充したオリジナル商品を販売していることもあります。
「火災」保険といいますが、契約内容次第で、落雷、破裂、爆発、風、ひょう、雪災、飛来物の落下、衝突、水濡れ、騒じょう、労働争議、盗難、水災…など、地震以外の幅広い災害をカバーすることができます。
近年、ニーズが高まっている地震保険は火災保険に附帯する別枠の保険です。火災保険に加入していることが前提の保険ですから、火災保険に入らないと地震保険に入ることもできません。
2.地震保険
地震保険は、火災保険では補償されない、地震や噴火などが原因の火災・倒壊・損壊・埋没・津波被害などをカバーしてくれる地震専用の保険です。
保険料は、建物の構造や建っている地域など、地震発生の危険度によって変わり、近年、地震被害が増えていることもあって値上げが続いています。
3.施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、大家さんの建物や設備の欠陥や不備が原因で、人にケガを負わせたり物を壊したりしたときに生じる損害賠償責任を担保するための保険です。
配水管が破裂して部屋が水浸しになってしまったときの入居者への賠償、建物の一部が欠損して人にケガをさせたり、モノを壊したりしたときの損害賠償、などをカバーしてくれます。
賃貸経営を行っていれば、思わぬ事故で賠償責任を負う可能性はゼロではありません。
火災保険に特約でついている場合もありますが、未加入のことも多いです。安価な保険料でかなりの安心を得られますから、物件を所有している大家さんは加入しておいた方がいいと思います。
4.家賃補償保険
火事や水災、死亡事故など予期せぬ事故によって部屋が貸せなくなってしまうと、家賃収入が途絶えます。
そのようなときに、なにもなかったら得られたはずの家賃を補償するのが、家賃補償保険です。ローンの返済比率が高いなど、家賃収入の減少が経営に与えるダメージが大きい時には検討しなくてはいけないかもしれません。
5.家主費用保険(特約)
最近にわかに取りざたされることが増えたのが、家主費用保険です。
いわゆる「孤独死保険」と呼ばれるもので、貸室内で起こった死亡事故によって発生する、空室期間や家賃値引き期間の収入減少の補てん、清掃や消臭、原状回復工事などの費用、遺品整理代などが補償されます。
火災保険の保険料は請求しても上がらない
保険請求をしたら、来年からの保険料が値上がりするのではないかと思われる大家さんもいらっしゃいますが、自然災害など大家さんに過失のない被害で補償を受ける火災保険は、自動車保険のように保険料が上がることはありません。
もちろん、被害にあうたびに何度でも請求することが可能です。
ただし、明らかな経年劣化を無理に災害にこじつけて請求したりすると審査で否認されることは当然あります。このあたりは、代理店や大家さんの請求テクニックが効いてくる部分ではありますが、やりすぎはよくありません。
また、短期間で何度も何度も利用していると、更新時に契約の継続を断られることがあります。
契約はその他にも、火災などで大規模な被害が発生して「全損」と認定された時も終了します。支払われた保険金で物件の再建が済んだ暁には、再度新しい建物として新しい保険に入り直すということになるわけです。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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