賃貸住宅管理業界の基礎知識

一般的に私たちが接する機会のある不動産の管理業には、大きく分けると3つのカテゴリーがあります。

 

まずは、分譲マンションの管理組合の運営をサポートする「マンション管理業」です。

分譲マンションの管理業者は、マン管法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)に定められたルールに従って、業務を行わなければなりません。マンション管理業を営むには、国家資格である管理業務主任者の設置も必要です。

次に、ビルや商業施設、公共施設などの維持管理を行う「ビル管理業」です。

ビルメンテナンス業と呼ばれることも多いです。大型で不特定多数の人が出入りする公共性の高い建物の管理をすることが多いため、ひとつひとつの業務に高い専門性が求められ、有資格者でないとできない業務が多くあります。

そして、私たちにいちばん身近な賃貸住宅の管理運営を行う「賃貸住宅管理業」です。

 

賃貸住宅管理業とは

先のふたつの管理業と比べると、賃貸管理業はまだまだ認知度の低い業界です。

賃貸管理に関わる当事者は、基本的には、所有者である大家さんと部屋を借りている入居者です。大家さんと入居者の間に立って、入居関連の事務業務や建物の保守業務を行うのが賃貸住宅管理業者の仕事です。

▶ 参考:賃貸管理業務とは

 

マンション管理のようにたくさんの権利者(区分所有者)の意見や利害の調整を行ったり、ビル管理のように不特定多数の利用者が入り乱れる環境の整備を行ったりといった煩雑さはありません。

そのためかどうかはわかりませんが、数年前までは業界としての統一ルールや法整備もなく、事業者によってやり方もまちまちで、大家さんとトラブルになることもありました。

しかし、賃貸経営の難易度が上がり管理会社のニーズが高まるにつれ、業界統一の基準やルールの整備が求められるようになり、2011年、国土交通省の管轄で「賃貸住宅管理業の登録制度」が創設されました。

 

賃貸住宅管理業の登録制度とは

賃貸住宅管理業の登録制度は、「登録事業者の業務についてルールを定めることで、その業務の適切な運営を確保し、賃貸住宅管理業の健全な発達を図り、もって借主及び貸主の利益の保護を図る」ことを目的としています。

どのようなルールがあるかというと、例えば、

  • 管理委託契約を結ぶ際には、賃貸不動産経営管理士のような一定の有資格者から大家さんに対して、管理委託に関する重要事項説明を行うこと
  • 入居者から預かる家賃や敷金などは、管理会社のお金とは明確に分別して管理すること

などです。

これらは、管理会社としては当たり前のルールですが、きちんと明文化して共通のルールとすることで、一定基準以上の会社であるかどうかを可視化することができるようになります。

現時点ではまだ、登録するかしないかは事業者の判断に任されていますが、賃貸管理業を本業としている会社であれば、この制度のことはよく知っているはずですし、登録をしない理由がありません。

登録している事業者は、国土交通省の企業情報検索システムから検索することができます。

賃貸住宅管理業者」をクリックすると、登録している事業者が探せます。

このような視点から、管理会社をチェックしてみるのもアリではないでしょうか。もし管理会社の変更を考えているなら、任せようとしている会社が登録しているかどうかは、大きな判断材料になります。

 

賃貸不動産経営管理士とは

賃貸不動産経営管理士」は、2007年に創設された比較的新しい資格です。

主に賃貸アパートやマンションなど賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観を持った専門家としての役割を期待されており、毎年11月に全国11都市で統一試験が行われています。

誰でも受験可能なため、不動産業界を目指す学生や、自主管理の大家さんも多く受験しています。賃貸管理について網羅的に勉強できるので、大家さんは取っておいても損はない資格です。

 

賃貸住宅管理業の登録制度における人的要件に該当する資格となっていたり、管理業務委託契約時の独占業務が付与されていたりもするので、重要度は高いです。

今年(2017年)1月には、国家資格化に向けた検討会も発足されたため、注目度が大幅にアップしています。

将来的には、宅建業者の宅地建物取引士や、マンション管理業者の管理業務主任者のように、賃貸管理会社はこの資格の有資格者を設置しないと、業を営めなくなる可能性もあります。

宅建よりもこちらの方が、大家さんの実務に近い資格です。そこまで難しい資格ではないですが、年々難易度は高まっています。

 

賃貸住宅管理に関連する業界団体

賃貸管理にまつわる最新情報の提供や各事業者への業務支援を行い、業界の発展と豊かな国民生活に寄与するため、賃貸管理業界には「一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)」と「公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)」というふたつの団体があります。

前者は宅建協会から派生して生まれた組織で、会員数も6024件と多く、不動産業全般のさまざまな会社が加盟しています。後者は有志の集いから生まれた組織で、会員数は1321社、管理を主な業態にしている会社が多いです。

例えるなら、どっしりした行政機関とイケイケのベンチャー企業、といった印象でしょうか(個人の感想です)。任せている管理会社がどんな団体に加盟しているかを知ると、会社の経営スタンスを少し垣間見ることができます。

 

Follow me!

この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

CONTACT

大家マニュアルでは、より良いサイト作りのために皆様からのご意見や、記事のリクエストなどのご要望を承っています。また、記事中の誤りや疑義に対するご指摘もこちらからいただけますと幸いです。

送信専用の匿名コンタクトフォームです。お気軽にどうぞ