管理会社の種類、管理会社との付き合い方

管理会社と一口に言っても、その出自によって特徴があります。

得意分野・不得意分野がありますので、大家さんの経営方針によって選択肢は変わります。

 

物件自体のマネジメントは自分でできるから、必要最低限の仕事だけやってもらえればいいということもあるでしょうし、逆に、その物件のことだけではなく、複数ある物件をまとめてマネジメントしてほしい、ということもあると思います。

Aさんにとってすばらしい管理会社であっても、Bさんにとってはそうでもない、ということも十分あり得ます。

 

管理会社の種類

賃貸管理業は、40数年くらいのまだまだ歴史の浅い業種です。

かつては、街の不動産屋が入居仲介のついでにサービスで窓口業務を受けていた程度の業務で、昔からの古い付き合いで未だにタダで管理業務を行っている会社もあります。

しかし、建物の高度化、サービスの複雑化、入居者とのトラブル発生頻度などが高まるにつれ、とてもタダで行える業務ではなくなっています。

管理会社にはその出自によっていくつかのパターンがあります。それぞれに特色がありますので、いくつかご紹介します。

 

1.仲介業者から派生した管理会社

不動産仲介業者が、仲介業との相乗効果を期待して賃貸管理業を始めるパターンです。

仲介業は成果報酬のフロービジネスですから、毎月毎月、新しいお客様と新しい取引をして売上を作ります。景気の変動に業績が左右されやすく、大きく稼げる局面もあれば、厳しい時期をしのがなくてはいけないこともあります。

それとは逆に、管理業は管理料という固定収入があるストックビジネスです。一度契約をしたら基本的には長いお付き合いが始まり、毎月コツコツではありますが、確実に売上を見込むことができます。

そして新しい顧客との取引が始まれば積算式にベースの売上が高まることになります。

 

かつて仲介業者は、細かいクレーム対応が頻発して手間ががかる管理の仕事はやりたがりませんでしたが、仲介の件数自体が減少傾向の中、顧客の囲い込みと管理料収入を見込んで、管理業を兼業するケースが増えてきています。

会社の中に管理部門を作って対応するケースや管理専門の別会社を持っているケースもありますが、あくまでも仲介が主業で管理はオマケ、というスタンスだと、管理業務のクオリティはそれほど高くはないことが多いです。

大家さん側でも、管理状態(金銭管理・入居者対応・建物管理)には常に目を光らせておく必要があります。丸投げは厳禁です。

 

仲介系の管理会社は、賃貸仲介がメインの会社と売買仲介がメインの会社に分かれます。

空室の入居募集をきっかけに知り合うのが、賃貸仲介系の管理会社、不動産の売買をきっかけに知り合うのが、売買仲介系の管理会社、ということが多いです。

管理状態は自分でもチェックできるから、それよりも入居付けに不安がある、という大家さんは賃貸仲介系の管理会社を選ぶといいと思います。または、これからもどんどん物件を売買したい、優先的に最新情報を持ってきてほしい、という大家さんは売買仲介系の管理会社がいいのではないでしょうか。

 

2.メーカーから派生した管理会社

アパートやマンションなどの建物の企画や建築を行う、メーカーに紐づく管理会社もあります。

多くのメーカー系管理会社は、サブリース会社の子会社です。流れで言うと、メーカー(建築)→ サブリース会社 → 管理会社 の順で仕事が流れていきます。

自社で建設した賃貸住宅を子会社のサブリース会社が一括借上げし、そのサブリース会社から孫会社が管理業務を請け負います。自社物件の管理を行う会社ですから、よそが建てた既存の中古物件の管理を行うことは基本ありません。

 

メーカー系の関連会社はパワーバランスが明確です。いちばん偉いのは建築です。

建物の建築を請け負うための営業ツールとして、サブリースがあり、管理会社があります。賃貸経営に不安がある大家さんに、「建てっぱなしで知らんふりしませんよ、責任を持って借上げますし、管理しますから、どうかウチで建築しましょう」というスキームです。

大家さんに専門知識や選択肢がないことが多いですから、管理は言い値です。概して高い管理料を支払っています。しかし、任せる会社によっては完全に賃貸経営を丸投げすることも可能です。

入居付けに不安がない立地だったり、他の本業が多忙で賃貸経営が副業の大家さんにはメリットがあります。

 

メーカー系の中にも、さらに4つくらいのカテゴリーがあります。

ひとつめは、実需建築からの流れをくむ「ハウスメーカー系」の会社です。

建築費が比較的高いので建物自体の品質は高め(分譲と比べてはいけません)ですし、管理品質も悪くないです。ブランドがありますから、地元密着の地主さんには人気が高いですし、入居者向けサービスなども積極的に展開しており、入居者人気も高いと言えます。ただし、管理料はしっかり高めです。

ふたつめは、「アパート専業メーカー系」の管理会社です。

一昔前に比べると、かなり建物の品質は良くなっていると思いますが「それなり感」は拭えません。建築営業部隊が花形でいちばん力を持っていますから、管理部門のスタッフはどこか閉塞感のようなものがあって、管理の品質も「それなり」です。

3つめは、地場の建設会社が賃貸マンションやアパートの建築推進を行って、竣工後の管理も合わせて請け負う「建設会社系」の管理会社です。

本当は建築だけやりたいのだけれど、それだと受注できないのでサブリースと管理もやっている、ということが多いです。先の2つの会社に比べると、パッケージ商品が少ないので建築プランの柔軟性は勝りますが、賃貸業に精通していないため最新ニーズやトレンドに疎く、どこかもっさりした印象になりがちです。管理はおまけなので、品質もそれほど高いとは言えないでしょう。

 

ここまでは、基本的に土地を所有している地主さん向けに賃貸経営を薦めている会社でしたが、最後に、ここ数年の不動産投資ブームと異次元金融緩和で大躍進を遂げている「土地付きアパートメーカー系」の管理会社もあります。

言葉通り、土地を所有していない投資家向けに土地と建物をセットで販売する業者です。アパートローンの過熱ぶりを懸念して金融の引き締めが始まっていますから、ローンが組みにくくなります。手持ち資金などの資本が少ない投資家をメインのターゲットに据えている会社は、営業方針の軌道修正を迫られることになります。

イケイケ建設会社は、まだ管理にまで手が回りません。管理はほとんど外注です。

 

3.コンサルティングから派生した管理会社

変わり種としては、不動産屋でもない、メーカーでもない、コンサルティング業から賃貸管理業に参入してくるケースもあります。

○○アセットマネジメント、とか、○○コンサルティング、などのようなカタカナの社名で、経営者の出自としては、銀行・保険・税理士・弁護士などの金融系や士業系の流れをくむことが多いです。

不動産の有効活用を行う企画系の不動産コンサル、事業主や金融資産家の資産管理を行うアセット系コンサル、富裕層向けの相続コンサル、税理士法人が取り組む資産コンサルもあります。

コンサルティング業務の中の一部分に不動産の活用が入ってくるケースが多いため、アフターフォローのための管理部門を持っているという成り立ちです。

あくまでコンサルティングが主業ですから、管理はオマケです。多くの会社で、ほぼすべて外注です。

 

4.ビルメンテナンスから派生した管理会社

最後が、ビルメンテナンス系の管理会社です。

どこの仲介店舗にも、メーカーにも、コンサルにも、紐づいていない、管理専業の会社です。本業が管理なので、仲介や建築など管理以外の業務に影響を受けることはありませんから、一応、中立・公平であると言えます。

毎月固定で入ってくる管理料売上と、退去や修繕が出るたびに発生する工事売上の2本柱で形成された、完全なるストックビジネスです。

波風が立たなければ、何もしなくてもある一定額の収入が見込めてしまうため、守りに入りがちな傾向があります。むしろ、チャレンジをして失敗することで損失が出るのを恐れます。そのため、新しい取り組みや、斬新な提案などはあまり期待できないかもしれません。

入居募集や賃貸トレンドなどの最新情報は疎いことが多いです。

 

清掃会社や設備屋、内装工事屋さんから始まり、徐々に業態を拡張して建物管理全体をフォローしていくパターンもあれば、初めからビルメン主体で徐々に賃貸物件を受けていく会社もあります。

建物や設備のメンテナンスや緊急時の対応に強みがあり、本当の意味で24時間対応できるのはこの系統の管理会社だけです。

賃貸経営を行う上で、大家さんの経営努力や創意工夫でコントロールしきれない部分がビルメンです。

入居募集や入金管理、クレーム対応などはなんとか自力で対応できても、エレベーターで事故が起こったり、排水管が破裂して汚物まみれになったり、コンクリートの躯体に爆裂が起きてしまったら、自分ではどうにもできません。築20年を超えるようなRC物件は、特に注意が必要でしょう。

 

前段の3つの管理会社が総合管理で受けている管理業務の一部を、ビルメン系の管理会社に再委託していることは少なくありません。

 

管理会社との付き合い方

前述したとおり、賃貸管理業は歴史の浅い業態です。

法整備もなく、業界統一のルール整備もようやく始まったばかり(賃貸住宅管理業者登録制度)ですし、業界のプロを育成すべく「賃貸不動産経営管理士」の国家資格化に向けて進んでいる最中です。

対して、いっしょくたにされることが多い宅建業は、昭和27年の宅地建物取引業法施行から、もう65年。今の宅地建物取引士の元になる宅地建物取引員制度が導入されてからも60年になりますから、歴史が違います。

 

そういう部分から見ても、まだまだ未成熟な業界であることは事実で、賃貸経営のすべてを体系立てて理解している管理会社はほとんどないと言えます。

それぞれが各自の得意分野に偏った管理をしがちで「帯に短したすきに長し」なことは否めません。

大家さんは、その実態を把握したうえで、自分の賃貸経営に適した事業者を選ぶ必要があります。

そして、任せた会社がその能力を十分に発揮できるようにマネジメントをしなくてはいけません。同じ仕事をやるにしても「面倒だな」と思いながら嫌々やる仕事と、「どうしたらもっとよくなるだろう」と前向きに考えてやる仕事では、品質に大きな差が生まれます。

選んだ、頼んだ、あとはよろしく、ではなかなかそううまくはいきません。管理会社が前向きに、積極的に仕事をするためには、大家さんのリーダーシップが必要です。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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