管理委託契約の重要性

長く大家さんをやられていたり、親から大家業を引き継いだ2代目大家さんなどは、今、ご自分の物件がどのように管理・運営されているのかよくわからない、という方が多いです。

報告書は送られてくるし、家賃も振り込まれているみたいだから順調なのだろう、と思っていたら、ある日突然トラブルが噴出。よくよく聞いてみたら、とんでもない管理状態で愕然とする、なんていうことがよくあります。

なぜそんなことになってしまうのでしょうか。

 

賃貸管理の重要性

賃貸住宅は、全住宅の内の4割ほどを占める居住形態です。

賃貸不動産が適正に管理されて、地域社会に提供されることは、大家さんの資産としての価値を保ち、収益になることと同時に、そこに住んでいる人たちの安全・安心な暮らしという利益にもつながることです。

さらにいうと、その他の建物や公共施設、周辺環境などと一体となってひとつの街になりますから、街並みや景観などに少なからぬ影響を与えます。

管理の行き届いていない物件は、近隣住民とのトラブルや家賃の滞納、治安の悪化などの問題が起こりやすくなります。収益性は下がり、入居者の質は落ち、募集もままならず、周辺からの評判も下がり、いいことナシです。

管理状態の適正化は賃貸経営の基本です。

 

管理委託契約の重要性

時の移り変わりとともに賃貸管理業務の幅もどんどん広がってきています。

かつては家賃の集金を代行して、たまに掃き掃除をするくらいが賃貸管理でした。いつの時代の話だ、と思われるかもしれませんが、未だにそれが管理だと思っている不動産屋はたくさんあります。

しかし今は、借地借家法で入居者の権利はがっちり守られ、クレームやトラブルは頻発し、建物や設備自体も専門知識がないと触れないほど高度化して、とても街の不動産屋さんでは面倒見きれなくなっています。

 

その上、何が管理業務の範囲に含まれているのか、どこまで対応してくれるのかを巡って、大家さんと管理会社の間での認識の相違によるトラブルも増えてきました。

言った、言わない、の水掛け論になり、ケンカになって感情的に次々と管理会社を変更する大家さんもいらっしゃいますが、管理会社の変更は、家賃の振込先や連絡先の変更などで入居者にも要らぬ負担をかけますし、引継ぎがうまくされないと旧管理会社が持っている大事な情報が滅失してしまうこともありますから、できるだけスマートに進めたいものです。

▶ 参考:管理会社を変更する

 

管理会社との間で揉め事を起こさないためには、やはり、契約前にしっかりと業務の内容や責任範囲について打ち合わせをして、管理委託契約書にキチンと明示しておくことです。

一般的な管理委託契約書は、管理項目とその内容についてざっくりとしか記されておらず、どこの会社の契約書を見ても同じように思えるかもしれません。しかし、実際に管理が始まってみると、その内容は会社ごとに特色があって幅が広いものです。

なにか紛議があった際に拠り所になるのは、契約書しかありません。

自分が思っていた履行状態と違っていても、契約書にそう明記されていなければ、契約上の債務不履行であると立証できません。

大家さんは事業主ですから、聞いてなかった、知らなかった、騙された、は通用しません。契約の不備は自己責任でもあります。

入居者と結ぶ賃貸借契約書も、特約の項目が大事なのと同じように、管理委託契約書も中身をよく検討しなくてはいけません。

一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会が発行している、「賃貸不動産管理 標準化ガイドライン」の12ページから18ページに、管理の項目と標準的な対応内容についての記載があります。ひととおり目を通しておくのもいいかもしれません。

 

管理委託契約書と重要事項説明書

管理委託契約書のひな形は、国交省のホームページにも公開されています。

▶ 参考:賃貸住宅管理業者登録制度に係る書式について>5条及び6条関係>賃貸住宅管理受託契約書兼重要事項説明書(国土交通省)

しかし、この契約書兼重説には、具体的な管理内容がまったく書いてありません。かろうじて集金はやるようですが、それ以外は何をどこまでやってくれるかさっぱりわかりませんから、もっと詰め込んでいく必要があります。

管理委託契約書は、おそらくどこの会社もオリジナルのものを作成して使用していると思いますから、どういう内容になっているか、よく見せてもらうといいでしょう。

 

もうひとつのチェックポイントは重要事項説明です。

ほんの数年前までは、管理会社との業務委託契約に重要事項説明なんてありませんでした。

しかし、業務ルールを定めて適切な運営を行うことで借主及び貸主の利益保護を図り、賃貸管理業界を健全に発展させるために、平成23年「賃貸住宅管理業の登録制度」が始まり、管理委託契約を締結する前に重要事項説明を行うことが定められました

「賃貸住宅管理業の登録制度」はあくまで任意規定であり、宅建業のような許可制のものではないので、登録していない業者でも管理業を営むことはできます。

しかし、「賃貸不動産経営管理士」の有資格者が、契約前に「重要事項説明書」を交付して重説を行う会社は、少なくともそうでない会社よりは、まじめに管理業に取り組んでいる会社だと言えます。

▶ 参考:賃貸住宅管理業界の基礎知識

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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