賃貸住宅の設備管理業務
建物に付随している設備は、入居者の暮らしを快適に保つため、24時間365日稼働しています。
飲料水や防災に関する設備など、安全性に重大な影響があるものについては、法律で定められた法定点検が義務付けられていますが、その頻度は年に1~2回程度。絶対にやらなくてはいけない最低限度のチェックでしかありません。
▶ 参考:賃貸住宅の法定点検
24時間365日稼働している設備を、年に数回程度の点検で最適に保つことが可能でしょうか。
真夏の太陽とアスファルトに照り返されれば、劣化もしますし剥離もします。
真冬の氷点下にさらされれば、ひび割れもしますし破裂もします。
巡回点検や清掃業務などで物件に出向く際には、設備機器にも不具合がないかチェックをして、もし異常があればすぐに専門業者を手配できるような体制を整えておく必要があります。
消防設備
消火器や感知器、自動火災報知機、避難用はしごなどの消防用の設備は、規模や構造、地域によって定められた設置基準があります。
建物の所有者である大家さんには、有事の際に命を守るための消防用設備の設置義務があるということです。
そしてその点検と点検結果の報告も、大家さんの法的義務です。
▶ 参考:消防法(総務省)に準拠する法定点検 ~ 消防用設備等点検/防火管理制度
法律で縛られている頻度は半年に一度ですが、いざという時に確実に動かなければ意味がありません。
例えば、消火器には使用期限があることをご存知ですか?もし点検を怠っていて、火災時に使うことができなかったら大惨事に至る可能性があります。ベランダの避難はしごも、メンテナンスが不十分だとさびついて開かないことがあります。
常日頃からの保守管理が重要です。
給水設備
なにか起きたとき、被害が大きくなりがちなのが水に関する設備のトラブルです。
給水の設備に異常があれば、断水が起きたり、赤水が出たり異臭がしたり、最悪の場合、集団食中毒などという事態に発展しかねません。
貯水清掃、水質検査などの法定点検はもちろんのこと、ポンプに異常はないか、貯水槽に劣化はないか、異物混入などの危険性はないかなど、日常的な点検も大事です。
▶ 参考:水回りに関連する法定点検 ~ 貯水槽/ブースターポンプ点検/浄化槽
排水設備
排水管でトラブルが起きると悪臭や汚水の逆流などのクレームになります。
排水管は日々油やほこり、髪の毛などが流れますので詰まりやすく、汚れがこびりつくことで劣化が早まりますから、排水管清掃などを定期的に行って維持管理に努める必要があります。
排水管清掃は高圧水を噴出するホースをキッチンや洗面などの排水口から排水管内に通し、水圧をかけて汚れをかき落としますから、入居者立会の元、室内で作業をすることになります。
ですから、入居者不在では施工できず、特に単身物件では協力が得られないことも多いです。
排水管清掃は、3年に1度くらいの頻度で計画することが多いので、1度逃すと結構な期間清掃できないことになります。
また、築古物件で長期間放置していた排水管は、腐食が進行していることが多く、少しの刺激で亀裂が入ってしまうことがあります。
劣化した排水管に施工することで、逆に漏水事故を引き起こすことがありますから注意が必要です。
築25年~30年を超えてくると、共同排水竪管が詰まります。
こうなるといくら住戸内から洗浄を行っても間に合わない可能性が高いですから、専門業者による排水管の更生や更新が必要になる場合もあります。
数百万単位で費用がかかります。
電気設備
分電盤や引込開閉器、照明器具など電気関係の設備状況を点検します。
漏電や不点灯が起きていないか、カギはちゃんとかかっているか、自動点滅器はちゃんと動作しているか、替えの管球ストックのチェックなども行います。
電気設備は素人が簡単に触れるものではありませんので、おかしいなと思ったらすぐに専門家に見てもらいましょう。
エレベーター
エレベーターは年に1度の法定検査と合わせて、毎月のメンテナンス契約をすることが多いです。
▶ 参考:建築基準法(国土交通省)に準拠する法定点検 ~ 特定建築物等定期報告
メンテナンス契約には、「POG(Parts・Oil・Grease)契約」と「FM(フルメンテナンス)契約」の2種類があります。
POG契約は、パーツ・オイル・グリースですから、文字のごとく、定期的な点検・清掃・注油などの調整と消耗品の交換を行う契約です。
毎月のランニングコストを抑えることができますが、機械部品や電気部品などの修理や突発的な故障が起こった場合は、別途費用が発生します。故障部位によっては高くつくことがあります。
FM契約は、POGの内容に加えて、修理や工事の費用、交換部品代なども毎月のメンテナンス費用に含まれている契約です。手厚いサポートが受けられます。
エレベーターの保守管理は一般の管理会社ではできません。
管理会社に業務委託していたとしても、その先で必ずエレベーターの専門業者に再委託しています。
再委託先は、そのエレベーターのメーカーか、独立系と言われるメンテナンス専門業者のどちらかです。
独立系の業者の方が価格は安く抑えられますが、技術的な側面からみるとやはりメーカーにはかないません。一度独立系に変更すると、メーカーには戻せないことが多いですから、リプレイスの際はよく検討しましょう。
その他
機械式立体駐車場や空気環境設備、太陽光発電設備など、物件によって必要になる管理項目は変わります。
タワーパーキングの維持管理費用は泣けるほど高いです。
建物に付随する機器・設備は、躯体よりも早く消耗します。
価格も決して安いものではないですからキチンと保守管理をおこなって、できるだけ長く使えるようにしましょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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