家賃の滞納が長期化したらどうするか
電話や郵便、訪問などあらゆる手を尽くしても滞納が解消されず、時間だけが過ぎていってしまった場合、大家さんが取り得る手段は4つです。
パターン1 滞納家賃を回収しつつ、住み続けてもらう
入居者との話し合いの末に滞納分の支払い計画がまとまったり、連帯保証人が入居者の代わりに一括で弁済してくれたなど、回収への道筋が見えた場合は、賃貸借契約を解除せずにそのまま入居し続けてもらうこともあります。
しかしその際も、滞納でこじれた実績があるわけですから、次回同様のことがあった際にどうするかなどの特約や覚え書を定めておいて、同意できるなら賃貸借契約の継続をするなどの対策が必要かもしれません。
パターン2 滞納家賃を回収しつつ、退去してもらう
滞納解消の目途もつかず、これ以上住んでもらえるほどの信頼関係もない場合、退去の交渉をしていくことになります。
戻れる実家があると比較的スムーズに退去してもらえることが多いですが、行くところがないと新居に引越すための費用も捻出できませんから拗れます。
退去したからと言って、滞納分の家賃を踏み倒していいことにはなりませんので、分割払いなどの支払い計画をしっかりと立てる必要があります。
今よりも家賃や初期費用の負担が少ない部屋を探してあげるなどの配慮が必要になる場合もありますし、引越し先が遠方だと回収が難しくなるリスクが高まります。
パターン3 滞納家賃はあきらめて、退去してもらう
大家さんも滞納がかさんで心労が溜まってくると、もう回収なんかどうでもいいからとりあえず出てってもらって一回リセットしたい、と思うようになります。
たしかに、ダラダラと長期化して滞納額が膨らんでいくよりは、一日でも早く退去してもらって新しい入居者を探した方が損害が小さく済む可能性が高いです。
管理会社に滞納督促の業務を委託している場合は、退去後の元入居者の滞納分回収までは業務に含まれていないことが多いので、このパターンで手打ちにするケースが多いです。
どうしても家賃の回収をしたい場合は、自分で動くか債権回収を任せられる業者を探すことになります。
パターン4 滞納家賃の回収もできず、退去もしてもらえない
いちばんツラいパターンがこれです。
お金もない、行くところもない、連帯保証人もいない、どうしようもないというパターンです。
ここまで来ると入居者はもう開き直っていることも多いですから、ちょっとやそっとの勧告では動きません。現実的に取れる方法は、大家さんが引越し代を負担してでも新居を探させるか、裁判所に明け渡しの訴えを起こして強制的に退去させるかです。
自力救済はできない
自力救済とは、なんらかの権利を侵害された者が、司法手続きによらずに実力をもって権利の回復を図る行為です。
法治国家である日本では、自分が保有する権利を行使する際には法的手続きをもって行うことが原則で、個人が勝手に強制的な権利実現をすることはできません。
時代劇でいう「仇討ち」みたいな、やられたらやり返すみたいな実力行使は認められてないということです。
例えば、家賃滞納などの債務不履行を続ける入居者に対して、室内の荷物を勝手に売り払って滞納分に充てたり、カギを付け替えて入れないようにしたり、大声で恫喝したり、夜討ち朝駆け長時間の居座りなどをしたりすることは、自力救済とみなされる場合があります。
安易な自力救済は違法行為として、逆に入居者側から訴えられることにもなりかねません。
できれば裁判にはせず任意交渉で決着させる
入居者との滞納家賃支払い交渉もまとまらず、連帯保証人からの求償も得られないことになれば、最悪の場合、滞納家賃の支払いと部屋の明け渡しを裁判で争うことになります。
しかし、訴訟を提起してから判決を得て、明け渡しの強制執行までいくと、退去までに少なくとも半年~1年の月日がかかりますし、弁護士を雇うなどの訴訟費用も高額になります。
できればそうなる前に任意退去を促したり、分割払いでも滞納分を支払ってもらえるように交渉を行っていかなくてはなりません。
法律知識がある大家さんや数多くの修羅場をくぐり抜けてきたベテラン大家さんであれば、なんなくこなす交渉かもしれませんが、多くの大家さんや管理会社の社員ではできる範疇を超えはじめています。
当事者である大家さんは、主観が入りますので冷静な判断ができないこともあります。客観的に冷静な判断ができる第三者の専門家などの助言を得ることも考えた方がよいでしょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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