家賃滞納督促の実務

家賃滞納の督促業務は、なんといっても初動が大事です。

払わないこと自体は100%入居者が悪いのですが、払わない言い訳をさせる余地を作ったり、ナメた対応をさせる原因を作るのは、大家さん側の対処の仕方だったりもします。

 

例えば、修理依頼をしているのに何日も放置されている、共用部はいつもゴミだらけ、問い合わせやクレームにはのらりくらりと曖昧な対応… このような管理面でのルーズさが、家賃もルーズでいいだろうと思わせる遠因になっていないとも限らないのです。

相手にキチンと取引を実行してもらいたければ、自分もしっかりと履行しなければなりません。

 

督促STEP1 電話をかける

まずは家賃の支払い期日の15時以降、家賃入金口座を確認して未納をチェックします。

未納を確認したらできるだけ早く電話で未納の連絡をしましょう。

 

おそらくほとんどの入居者がうっかり忘れていた、もしくは支払期日が日曜だったことを失念していたなどの、うっかり滞納です。本日の確認では未納だったことを伝えて、早急に振込をしてもらうように丁寧にお願いしましょう。

どうせうっかりだろうからと即電話をせずに数日待って、それでも入金がなければ電話、という対応も現場では多いと思いますが、できれば当日、もしくは翌日までに電話して「キチンと管理しているんだな、忘れないようにしよう」と思ってもらった方がいいです。

 

家賃の滞納でもなければ、大家さん側から入居者に電話をかけることもそんなにないと思いますから、入居者は大家さん(管理会社)の電話番号を知らない(電話帳に登録していない)ことがよくあります。

知らない(登録のない)電話番号からの着信には出ない入居者も最近は多く、何度かけても繋がらないことがあります。

そういう場合は、ショートメール(SMS)が有効です。携帯電話の番号だけで発信できますから管理もしやすいですし、なぜか留守番電話にメッセージを残すよりも折り返しの電話がかかってくる確率が高いです。

 

この初期段階での督促がいい加減だと、「数日くらいならいいんだな、今月ちょっと苦しいから家賃後回しにしよう」とならないとも限りません。

家賃は収入に占める割合が比較的大きな支払いです。

ちょっとくらいいいだろうと先送りにして溜まってくると、あっという間に支払いが困難になります。初期対応をキチンと行って、支払いの優先順位を下げさせないことが大事です。

 

督促STEP2 督促状を送る、訪問する、電話も引き続きかける

電話で約束した期日に支払われない、約束を破る、そもそも電話に出ない、などの場合は、長期化する前に滞納家賃の督促状を送付したり、部屋に訪問するなどの手段を取る必要があります。

督促状には、金額、支払いの期日、口座番号、連絡先などとあわせて、入居者の対応が悪質だった場合の法的手続きの可能性についても記載しておくことが多いです。

しかし、このような書面での督促はどうしても事務的というかきつい印象になりがちで、入居者を逆なでして頑なにさせてしまう可能性もあります。送りっぱなしにせず、対面や電話などで直接話せるチャンスも探り続けます。

入居者に事情があり大家さんが配慮可能なら、期日の延期や分割払いなどの交渉を行うこともありますが、安易に受けることはおススメしません。それよりも、家賃を最優先にするための資金繰りを考えてもらいましょう。

 

下手な人が督促業務を行うと、このステップで一悶着あります。

滞納の督促は家賃を回収することが目的で、入居者をぎゃふんと言わせることが目的ではありませんから、揉めてもいいことはありません。

揉めた挙句に無事に回収できたとしても、入居者は今後もそこに住み続けるわけですから関係は最悪な状態で継続します。気持ちよく速やかに払ってもらえるような対応をする必要があります。

 

督促STEP3 連帯保証人に連絡する、配達証明付き内容証明郵便を送る

STEP2まで行っても交渉がまとまらず家賃の入金がない場合、訴訟などの最悪の事態を想定してキチンと記録と証拠を残していかなくてはなりません。

ここまでの経緯を連帯保証人に説明しておく必要もあります。

連帯保証人に連絡を入れられたくない入居者は多いです。

いきなり電話をするとトラブルになることもありますから、期日までに支払いがなければ連帯保証人に連絡をするということは事前に伝えておくとよいです。

 

それでも無視を決め込む、改善の余地がないようなら「配達証明付き内容証明郵便」を郵送します。

連帯保証人に同時に送るかどうかは、ケースバイケースです。

内容証明郵便とは、郵便局がその手紙を「出したこと、出した日、出した内容」を記録してくれる郵便です。配達証明とは、郵便局がその手紙を「相手が受け取ったこと、受け取った日」を証明してくれます。

こちらの主張を配達証明付き内容証明郵便で送達しておけば、そんな内容の手紙は受け取ってない、知らないとは言えなくなりますので、相手に伝えてあることが証明できます。

配達証明付き内容証明郵便は、受取り拒否することもできますし、法的な拘束力があるわけでもないですから、知識がある人にとってはそれほど絶大な威力があるものではないですが、普通の人はかなりびっくりします。

内容証明は、A4用紙にWordで作成でもいいのですが、内容証明用紙という赤い枠の原稿用紙もあり、この赤枠用紙が結構威圧的でびびります。

 

ここまでの対応は大家さんや管理会社でも自力で行えますし、これでおおよその家賃滞納は解消されると思います。むしろ、ここまでで解消させなくてはなりません。

ここから先の対応は難易度が急激に高まりますし、もし係争に発展すると被害額は想定外に大きくなります。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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