大規模修繕工事の注意点

大規模修繕工事には大きなお金と時間がかかります。

できるだけ安価で、高い品質で仕上げてもらいたいですが、どこをどう見て判断すればいいのかわかりにくくもあります。

 

安かろう悪かろうでは困りますが、きっちり費用をかけているにもかかわらず、下請け・孫請け・ひ孫請けまで仕事が丸投げで品質が伴わないのも困ります。

大規模修繕工事を行う際には、どのような点に注意しておけばいいのか考えてみます。

 

大規模修繕工事はどこに頼むか

信頼できる工事店を知っている大家さんは別ですが、ほとんどの大家さんは大がかりな工事をどこの業者に任せたらいいものか、悩むと思います。

賃貸住宅で大規模修繕を行うときに検討することが多い業者は、

  1. 日頃から管理やメンテナンスを任せている管理会社
  2. その建物を建てた建設会社やハウスメーカー
  3. 地元の工務店や大規模修繕をメインで行う施工会社 などです。

それぞれにメリットとデメリットがありますので、どの部分を優先するかよく考えて選択する必要があります。

 

管理会社に頼むメリットとデメリット

日頃から建物のメンテナンスや入居者管理も行っている管理会社であれば、どの修繕を優先すべきか、もう数年先でもいいか、どういう工事をしたら入居付けに有利になるか、などの判断を容易にすることができます。

また、入居者対応もよく心得ていますし、その物件の収支状況も把握しているはずですので、費用対効果の高い的確な提案をもらえる可能性が高まりますし、なにしろ話が早く手間なしです。

 

しかし、メンテナンスや修繕工事に詳しくない管理会社も多いです。

仕事を請けたはいいが下請けの工事会社に丸投げで、入居者や大家さんが工事についての問い合わせをしても的確な返答ができないようでは、中間マージンを抜かれるだけでメリットがあるとは言えません。

自社で施工まで行える管理会社は少ないですが、せめて施工管理技士のいる工事管理部門があるなど、施工監理ができる会社でないと、大規模修繕工事を任せるに足る業者であるとは言いにくいでしょう。

 

建設会社・メーカーに頼むメリットとデメリット

その建物を建てた建設会社やハウスメーカーに大規模修繕を頼むこともあります。

そもそも建てた会社ですから、建物の仕様はもちろん、修繕のタイミングやポイントなども誰よりも熟知していると言えます。

従来であればメーカーは新築することに傾倒しがちで、大規模修繕を行って長く使うというよりは、スクラップ&ビルドで建て替えをすすめることが多かったと思います。

しかし、住宅ストックの有効活用が推進されるようになるにつれ、専門部署を作って大規模修繕の需要に応える体制を整える会社も増えてきました。

 

デメリットとしては、やはり工事代金が高くなりがちな面です。

営業部門やアフター部門のような間接部門の社員を多く抱えている会社ほど、販管費が多くかかります。

 

工務店に頼むメリットとデメリット

管理会社に頼んでも、メーカーに頼んでも、現場で工事を行うのは、実際に職人を抱えて営業している地元の工務店や施工会社です。

大規模修繕工事の実績が豊富な工務店を探し当てることができて、直接発注できたら、圧倒的に低コストで大規模修繕工事を行うことができます。

 

しかし、賃貸経営に精通している工務店はほぼありません。

どの工事をどのように優先して行うかのアドバイスや入居促進のための提案をもらうことはできないでしょうし、工事の品質について責任を持つ管理会社やメーカーのような第三者の目がないため、悪質な業者に当たってしまうと手抜き工事が発生しないとも言い切れません。

入居者対応を行ったことがない工務店も多いため、入居者とトラブルが発生した時に適切な対応が取られるかどうかの確認も必要です。

大家さんが自分で監理監督を行うくらいの意気込みが必要かもしれません。

 

大規模修繕工事の予算の考え方

大規模修繕工事は、業者によって数百万円単位で見積り金額が変わってくることがあります。

メーカー≧管理会社>工務店のようなケースが多いのではないでしょうか。

同じ工事内容でなぜそうなるかというと、前述したように、大家さんから実際に工事を行う職人さんまでの間に、たくさんの会社や関わる人間が出てくるからです。

建築や修繕の知識があって、現場管理も工事監理も入居者対応も自分でできる大家さんは、それこそ各工事会社にバラバラに分離発注をすれば一番安く上げることはできます。

しかし、多くの大家さんは専門知識がないですし、時間もない、入居者対応もできないことが多いですから、その部分をサポートしてくれる会社を間に挟んで、それに必要な費用を支払うことで代用します。

 

値引きについての要注意ポイント

大規模修繕工事の費用は数百万円~数千万円にも及ぶ高額なものです。

数パーセントの値引きでも、数十万円単位の節約になりますから、本当に必要な工事なのか、もう少し工期を圧縮できないのか、材料は適切なのかなど、さまざまな角度から工事内容と金額を精査することは大事なことです。

工事を請ける側からしても、大きな売り上げになりますし、相見積りを取っていれば競合がありますから、値引き交渉に応じてもらえる可能性は決して低くはないです。

800万円の見積りが600万円になった、なんていう話は結構あります。

 

しかし、工事の内容は見直さず値引きの交渉だけをゴリゴリと強硬に行うことはもろ刃の剣でもあります。

工事を請ける会社が自社の利益だけを圧縮して耐え抜いてくれればいいですが、それでは経営が成り立ちません。ある程度利益率は下げたとしても、しわ寄せは下請けの工務店や工事業者、設備会社にも当然及びます。

みんなが我慢して低価格で仕様どおりの品質で仕上げてくれればいいですが、ゴリゴリの値引き交渉を受けて、いい気分でいい仕事ができる人はなかなかいません。

ケレン処理を適当にやったり、下地補修を適当にやったり、塗装回数を少なくしたり、塗料を必要以上に薄めて塗ったり、職人さんの作業をキチンと監督しなかったり、検査をやらなかったり、見た目では全く分からない手抜きは簡単にできます。

仕上げをしてしまえば下地の不良はわからなくなります

塗料の希釈が過剰かなんて見た目ではわかりません。シーリングも上塗りしてしまえば古い材料を取ったかどうかなんてわかりません。

手抜き工事がトラブルに発展して明るみに出るのは数年後です。

きれいにできた、安くできた、してやったり、と思っていたら手痛いしっぺ返しを食ってしまった、などということはできるだけ避けた方がいいでしょう。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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