大規模修繕工事の項目
大規模修繕工事、とまとめてひとつの工事だと思ってしまいがちですが、実際に行う項目を小分けにしてみると、思ったよりも多くの工事項目があることに気づきます。
それぞれの工事項目には取り掛かりの順番があったり、それぞれ専門の職人さんが入れ替わり立ち代わり作業をすることになりますから、工事全体を俯瞰してマネジメントする工事監督者の役割は重要です。
大家さんは現場監督者や職人さんほどのスキルは必要ないですが、どんな工事項目があるのかくらいの基礎知識は持っておいて損はないと思います。
同時期に修繕が必要になることが多い項目は、まとめて発注するとボリュームディスカウントが可能です。
建築系の工事項目
建物本体(躯体)と金物や建具などの付属品に関連する工事項目です。
屋上
屋上やルーフバルコニーの防水工事や、庇・笠木などの修繕を行います。
防水が切れると、躯体自体に雨水が浸透して劣化を早めますし、漏水などの事故が発生するリスクが高まります。
防水切れからの漏水は原因箇所の特定が難しく、事故が起きてからの対応だと負担が大きくなりがちです。
標準的な修繕検討周期は12~15年程度です。
床
ベランダや共用廊下、階段などの雨ざらし部分の防水工事や長尺シートの張替えを行います。
標準的な修繕検討周期は12~15年程度です。
外壁
コンクリートやタイルのひび割れ・浮き補修、外壁塗装・軒天塗装、シーリングの打替えなどを行います。
中高層のマンションなどでは足場をかけて工事を行うことが多いですから、大規模修繕やってるな、ということが見ただけで分かります。ですから、大規模修繕とは外壁の工事と認識されている大家さんも多いです。
最近では足場なしで工事を行う業者も増えてきました。足場代は工事総額の2割に及ぶこともありますから、足場を組まない分、安価にできることが売りになっています。
しかし、足元が不安定でちゃんとした仕事ができるのか、作業員の安全性は確保されているのか、いや、安いに越したことはない、などと業界内でも賛否が出やすいです。
鉄部等
サビが発生しやすい鉄製の手すりやフェンス、玄関ドア、PS扉などの塗装や交換を行います。
標準的な修繕検討周期は4~7年程度です。
建具・金物・共用部内装等
玄関ドアや自動ドア、サッシ・網戸、バルコニーの手すり、防風スクリーン、集合郵便受、掲示板、宅配ロッカーなどを、交換・調整・補修します。
これらは定期的に修繕しなければいけない項目というよりは、必要に応じて行う項目になります。
壊れたときやバリューアップの必要があるときに検討します。
機械設備系の工事項目
建物付属設備に関連する工事項目です。
給水設備
給水管の更生もしくは更新、貯水槽の塗装や交換、ポンプや水道メーターの交換などを行います。
給水管の修繕には、元々の管の内側にコーティングして甦らせる更生(ライニング)工事と、新品の管に取り替えてしまう更新工事があります。
更生工事の方が安価にできますが、あまりに古くて劣化している配管には施工できません。
水道メーターの交換はそのメーターを大家が管理しているか、水道局が管理しているかで修繕義務者が変わります。ざっくりいうと検針している方が交換することになります。
標準的な修繕検討周期は給水管20~30年程度、貯水槽25~30年程度、ポンプ15~20年程度、水道メーター8年程度です。
排水設備
給水管の更生もしくは更新、排水ポンプの交換などを行います。
上水道しか通らない給水管と比べて、排水管は油や洗剤、髪の毛、ホコリ、汚物などが流れます。
詰まって逆流したり、断裂して漏水したりすると、被害は大きくなりがちですから、大規模修繕時にクリアにすればいいというよりも、日々のこまめなメンテナンスが大切です。
標準的な修繕検討周期は排水管20~30年程度。
▶ 参考:賃貸住宅の設備管理業務
ガス設備
埋設ガス管の更新を行います。
管の素材によって耐用年数は異なります。標準的な修繕検討周期は20~30年程度。
電気設備
共用部にある照明器具や外灯、配電盤、幹線、避雷針などの設備を必要に応じて交換します。
情報・通信設備
電話・テレビ・インターネット・オートロック・インターホンなどの設備やケーブルを必要に応じて交換します。
消防用設備
自動火災報知設備、感知器、発信器、表示灯の交換などを行います。
屋内消火栓設備や連結送水管があれば合わせて行います。標準的な修繕検討周期は20~25年程度。
昇降機設備
エレベーターのリニューアルは数百万~1千万を超えるような大きな費用がかかります。
エレベーター更新には全撤去リニューアル・準撤去リニューアル・制御リニューアルの3パターンがあり、保守契約がFMかPOGかによっても値段が変わります。
本体のリニューアルは築30年を目安に検討することになると思いますが、かご内の照明や操作盤を変えたり、化粧シートを貼って見栄えを良くする表装リフォームは、入居募集にも効果大です。
外構系の工事項目
外回りに関連する工事項目です。
外構・附属施設
駐車場や自転車置場、ゴミ置き場、ドッグラン、物件銘板(看板)、アプローチ、通路、排水溝、植栽などの工事を必要に応じて行います。
その他
場合によっては、耐震工事・バリアフリー工事・セキュリティ工事・省エネ工事・共用施設工事などを検討することもあります。
自治体ごとに補助金が出るものもあります。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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