家賃の滞納と督促業務の注意点
賃貸借契約は多くの場合、次月分の家賃を当月末までに支払う前払い形式です。
月末の最終営業日15時以降に記帳をして入金がなければ、滞納です。振込するつもりだったけどうっかり15時を過ぎてしまったとか、月末が日曜だったとかは、通じません。
ルールはルールです。
ルールは一度破ってしまうと、ズルズル緩くなってしまいます。
10日だけ待って、が、半月待って、になり、1ヶ月になり2ヶ月になり… いつの間にか滞納額が増えてしまったケースは枚挙にいとまがありません。
入居者の事情もわかりますが、債務の不履行には間違いがありませんから、ちょっとくらいいいだろうと甘い対応をせず、キチンと対処しなければなりません。
自主管理をしている大家さんは、滞納督促業務の1度や2度やられたことがあるでしょうが、そんなに楽しい仕事ではないはずです。
できればやりたくない業務のひとつなので、管理会社などに委託することも多いです。委託する場合、自分でやる場合の注意点を確認しましょう。
① 家賃保証会社を利用している場合
保証会社には「収納代行」型と「代位弁済」型の2種類の保証タイプがあります。
▶ 参考:
収納代行型は、家賃の集金からやってくれるタイプで、滞納があっても保証会社が立替えて家賃を送金&即時に督促業務をしてくれます。
大家さんは手間なしでとても便利ですが、万が一保証会社が倒産した場合、入居者が保証会社に支払ったはずの家賃が一円も届かない可能性があります。
代位弁済型は、家賃の集金はしません。入金確認は大家さん側で行い、滞納が発生したら代位弁済請求書を保証会社にFAXし、あとから滞納分が送金されます。
代位弁済には免責期間があり、うっかり忘れて期間内に請求しないと弁済を受けられません。
どちらのタイプでも、滞納家賃の督促は保証会社がすべて行ってくれますので、大家さんがやることはありません。
逆に、大家さんが自分で入居者と交渉して分割払いなどを認めてしまったりすると、保証会社の仕事を邪魔することになります。
保証会社を利用すれば、滞納のリスクはおおむね回避できますが、まだまだ歴史の浅い業界でもあります。
保証会社自体の与信の不安(倒産リスク)、無理な督促などの非弁行為を伴う自力救済リスクもゼロとは言い切れません。
実感値としても、若干危うい業界です。これから法整備が整って大なり小なり業界の再編が行われていくことで信頼度は高まっていくと思われます。
② 管理会社に家賃管理業務(督促含む)を任せている場合
家賃入金の確認から督促業務まで、基本的に管理会社に任せておけばいいはずです。
集金は管理会社が行っていますので、大家さんはリアルタイムで滞納を知ることができません。
滞納で大事なのは初期対応ですから、発覚したら即座に対処することが大事ですが、管理会社のレベルで対応に差が出ることがあります。
入金の確認をする事務方と物件の担当者間のタイムラグがある、担当物件数が過多で督促業務にすぐ取り掛かれない、督促に不慣れな担当者でもたつく… そんなこんなで対応が遅れがちになることがままあります。
稀に滞納督促の専門部署がある管理会社もありますが、一般的な管理会社の社員は督促業務はあまり得意ではないので基本やりたがりません(絶対にそうとは言い切れませんが)。
あれよあれよという間に滞納額が膨らんで、法的手段を取らざるを得ないということもありますので、どのように督促業務を行っているのか、物件担当者に任せっぱなしじゃないか、上司は把握しているか、サポートしているかなど、進捗確認はこまめに行っておく必要があります。
③ 大家さんが自分で家賃管理している場合
自主管理をしている大家さんは、滞納家賃の督促も回収も自分でやる必要があります。
昔から懇意にしている不動産屋さんや入居者をつけてくれた仲介店さんが手伝ってくれることもありますが、これは当たり前のことではありません。
保証会社を利用している場合、保証会社は滞納分の家賃を立替えますから入居者に対して求償権がありますし、管理会社に督促業務を委託しているのであれば業務として行ってくれますが、仲介しかやっていない業者が督促をやってくれるのは善意(タダ働き)です。
稀に、仲介店が督促しないのは怠慢だとおっしゃる大家さんがおられますが、少々横暴です。
督促に関して、仲介店はなんの権限もない第三者ですから、その第三者に、自分の個人情報(滞納したこと)をバラされた!名誉を傷つけられた!損害賠償請求だ!と、入居者から訴えられたら若干不利です。極端ですが、そういう揚げ足取りをされないとも限りません。
自分でやるのは不安だという大家さんは、やはり管理会社にキチンと委託するか、保証会社を必ず利用するなどのリスクヘッジを行う必要があるでしょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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