管理委託のポイント 5.清掃業務
清掃業務は、賃貸管理の基本中の基本です。
建物の美観を維持して、入居者に快適な暮らしを提供することはもちろんのことですが、長い目でみると、物件の劣化を抑え、入居者の質を保つことで、資産価値の下落を防ぐことができます。
たかが清掃、されど清掃です。
日常清掃業務
掃き掃除や拭き掃除を基本とした、日常的に行う清掃業務は賃貸経営には欠かせません。
清掃業務は委託費用が高いから、という理由だけではなく、物件という大事な「商品」をチェックする意味でも、可能であれば大家さん自身で清掃業務を行ってみることをオススメします。
一般的な賃貸物件は、月に2回、1回あたり30分~1時間程度しか日常清掃が入らないケースが多いです。
数戸程度で共用部も少ないアパートであればまだいいですが、3~4階建て以上のマンションになると、これでは少し心もとないです。
できれば毎週行うべきですし、費用的にむずかしいのであれば、そのうちの1~2回をご自身で行ってみると良いと思います。管理会社から上がってくる報告だけではわからない課題が、たくさん見えてくるはずです。
多くの大家さんが、管理会社に委託する清掃業務は高いと感じておられるようです。
事実、再委託を行うため、管理会社から上がってくる清掃の見積りは高いです。
例えば、大家さん → メーカー系の管理会社 → 建物管理会社 → 清掃元請け会社 → 清掃施工会社、と大家さんと実際に施工する会社の間に3社噛んでいる、などというケースもザラにあります。間の会社はそれぞれ利益を乗せますから、必然的に大家さんの支払う代金は高くなります。
逆の視点からも考えてみます。
最終的に現場で清掃業務を行っている会社は、戸当たり100円、などの低価格で仕事をしていることも少なくないです。30戸のマンションだと1回3,000円です。
移動時間、交通費、販管費も入れたら、とても1時間もいられません。急いで行って急いでやらないと大赤字です。
なぜ、そのような低価格が可能かというと、グロスで仕事を受託しているからです。1棟30戸(1回3,000円)ではなく、作業効率のいい近所の7棟200戸(1日20,000円)で受けているから可能なのです。
このような発注の仕方は、一般の大家さんにはできません。
ある程度の管理戸数を持っている管理会社だからできる方法です。
すべての業者がそのように行っているわけではありませんが、それだけの低価格で発注しているとすれば、品質自体は「それなり」です。大家さんが払っている価格で得られるであろう品質は、現実的には担保されていないケースが多いと言えます。
では、間にいる管理会社は何を行っているのでしょうか。
多くの場合、清掃業者の品質を高めるための清掃マニュアルの整備や、現地調査、業者指導、入居者対応、業者が対応できない日のイレギュラー対応などを行っています。
清掃業務は決められた当日だけ行えばいいものではありません。ゴミ置き場が猫やカラスに荒らされたときの片付け、不法投棄の処理、近隣からのクレーム対応などが随時発生します。
もしこのような対応を行っていないのであれば、管理会社を間に挟む意味がありません。
イレギュラー対応のための別途費用や、品質管理のための手間はかかりますが、大家さんが直接発注することができる清掃業者を探すべきでしょう。
▶ 参考:賃貸住宅の清掃業務
定期清掃業務
賃貸住宅で行われる定期清掃は主に、共用廊下やエントランスの床洗浄と腰壁などの高圧水洗浄です。
専用の清掃機材が必要ですから、多くの場合で外注に出されますが、これらの作業を自社施工する賃貸管理会社は清掃に注力している会社です。
管理会社と施工業者の違い
実際に施工を行う清掃業者の多くは下請け業者です。
元請けの管理会社からまとめて受注するBtoB(企業間)の取引がベースですから、大家さんのような直接の発注元と取引をするBtoC(対顧客)の商売に慣れていません。
高品質できめ細やかなサービスを、というよりも、薄利多売で回転数勝負な側面がどうしてもあります。
大家さんにとっては唯一無二の大事な資産である賃貸物件でも、業者から見れば、たくさんある作業現場の内のひとつでしかありません。
清掃業者に直接仕事を頼む場合でも、カスタマー(お客様)気分で細かくあれこれと指図をすると、はっきり言って嫌われます。
自分と同じ目線で物件を見て、愛着をもって管理監督してほしい、と思うのであれば、それなりの費用と時間をかけなくてはいけません。
費用を安く上げたいのであれば、ここまでやってもらえば充分と割り切って、足りない部分は自分で埋めるくらいの気概が必要です。お金をかけずになんでもかんでもやってもらおう、というのは無理筋になります。
報告業務
最近では、多くの管理会社で写真付の清掃報告書を作成してくれることが増えました。
清掃時に気がついた破損や汚損なども合わせて報告してくれるのは助かります。だからといって、大家さんが現地訪問をしなくていい理由にはなりません。
ごくまれに、過去の写真を使い回していることがあります。要注意です。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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