原状回復費用負担の具体的な項目

原状回復に関する基本原則的なルールは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」にまとめられています。

▶ 参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

 

それに符合するように、国土交通省が公開している「賃貸住宅標準契約書」には、【別表第5(第14条関係)】として「原状回復の条件」が添付されています。

▶ 参考:「賃貸住宅標準契約書」(改訂版)のダウンロード

 

ここには、特約などの例外がない場合の、修繕費用分担についての条件が一般原則として記載されています。以下に、抜粋して転記します(H29.7)。

改定で情報が古くなったり、改編されて内容が変わることもありますので、最新の情報は国土交通省ホームページをご参照ください。

原則

賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等については、賃借人が負担すべき費用となる。

建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、賃貸人が負担すべき費用となる。

*引用:賃貸住宅標準契約書(改訂版)

 

賃貸人・賃借人の修繕分担表

ガイドラインには、内装・住宅設備について、争点になりやすい箇所の負担区分が示されています。

あくまで一般的な原則でありますので拘束力のあるものではありませんが、これと異なる契約内容にする場合は、あらかじめその旨の説明をして了解の上で契約締結することが、退去時の紛争予防になります。

 

床(たたみ・フローリング・カーペットなど)の費用負担

大家さんの負担になるもの

  • 畳の裏返し、表替え(特に入居者過失があるわけでなく、次入居者確保のために行うもの)
  • フローリングのワックスがけ
  • 家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
  • 畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)

 

入居者の負担になるもの

  • 飲み物などをこぼした後の手入れ不足によるシミ、カビ
  • 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)
  • 引越作業等で生じた引っかきキズ
  • フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
  • ペットによるキズ、臭い

 

壁・天井(クロスなど)の費用負担

大家さんの負担になるもの

  • テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
  • 壁に貼ったポスターや絵画の跡
  • 画びょう、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
  • エアコン(入居者所有)設置による壁のビス穴、跡
  • クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)

 

入居者の負担になるもの

  • 日常の清掃を怠った(不十分)ためにひどくなった台所の油汚れ
  • 結露が発生しているのに、報告も手入れもせず放置したことで拡大したカビ、シミ、腐食
  • クーラーから水漏れしているのに、報告も手入れもせず放置したため発生したカビ、シミ、腐食
  • タバコのヤニ、臭いによるクロスの損傷
  • くぎ穴、ネジ穴(ボードの張替えが必要な程の加工)
  • ペットによるキズ、臭い
  • 落書き等の故意による毀損

 

建具・ふすま・柱などの費用負担

大家さんの負担になるもの

  • 網戸の張替え(特に入居者過失があるわけでなく、次入居者確保のために行うもの)
  • 地震、台風など自然災害で破損したガラス
  • 網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)

 

入居者の負担になるもの

  • ペットによるキズ、臭い
  • 落書き等の故意による毀損

 

設備・その他の費用負担

大家さんの負担になるもの

  • ハウスクリーニング(入居者が通常の清掃を実施している場合)
  • エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)
  • 消毒(台所・トイレ)
  • 浴槽、風呂釜等の取替え(特に入居者過失があるわけでなく、次入居者確保のために行うもの)
  • 鍵の取替え(破損、紛失のない場合)
  • 設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)

 

入居者の負担になるもの

  • 日常の清掃を怠った(不十分)ためにひどくなった、ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす
  • 日常の清掃を怠った(不十分)ためにひどくなった、風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビなど
  • 日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
  • 鍵の紛失または破損による取替え
  • 庭に生い茂った雑草

 

入居者が負担するときの負担単位

入居者に過失あって原状回復費用の負担を求めることになったとします。実際に破損しているのは壁の一部分なのですが、その部分だけつぎはぎのように補修することはできませんので、修繕は壁一面すべて行います。

このようなとき、どこまでの範囲の負担を求めることができるかもガイドラインは示しています。

 

床(たたみ・フローリング・カーペットなど)の負担単位

畳表

原則1枚単位 / 毀損部分が複数枚の場合はその枚数分

*経過年数に関わらず負担

カーペット

クッションフロア

畳床

毀損等が複数箇所の場合は、居室全体

*経過年数を考慮(6年で残存価値1円となるように負担割合を算定)

フローリング

フロアタイル

原則㎡単位 / 毀損等が複数箇所の場合は、居室全体

*部分的な補修は原則、経過年数に関わらず負担

 

壁・天井(クロスなど)の負担単位

壁(クロス)

原則㎡単位 / ただし入居者が毀損した箇所を含む一面分まではやむをえない

*経過年数を考慮(6年で残存価値1円となるように負担割合を算定)

タバコ等のヤニ、臭い

居室全体 / クリーニングまたは張替費用

*経過年数を考慮(6年で残存価値1円となるように負担割合を算定)

 

建具・ふすま・柱などの負担単位

ふすま紙

障子紙

原則1枚単位 / 毀損部分が複数枚の場合はその枚数分

*経過年数に関わらず負担

建具

原則1枚単位 / 毀損部分が複数枚の場合はその枚数分

*経過年数に関わらず負担

 

設備・その他の負担単位

設備機器

補修部分、交換相当分

*経過年数を考慮(耐用年数で負担割合を算定)

カギ

紛失の場合、シリンダー交換分も含む

*経過年数に関わらず負担

クリーニング

部位または住戸全体 / 特約がない場合は、通常使用の範囲以上の汚損があった場合のみ負担

*経過年数に関わらず負担

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
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福祉住環境コーディネーター 他

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