退去立会いと清算
解約の申し出を受け付けたら、退去の手続きをはじめます。
まずは、解約通知書を書面でもらいましょう。
解約通知書では、解約を受け付けた日、新しい引越し先の住所、電話番号やメールアドレスなどの連絡先、敷金を返還するための銀行口座番号、退去日、退去立会の希望時間などを記入してもらいます。
解約通知をやりとりする段階では、退去日や立会時間が確定しないことがあります。引越しのスケジュールなどが決まったらすぐに連絡するように頼んでおきましょう。
春や秋の引越しシーズンでは早め早めに決めておかないと、引越しの荷物が搬出されるタイミングと退去立会の時間がずれることがあります。そうなると入居者は立ち会いのためにまた戻ってこなければならなかったりと、面倒が多いので注意が必要です。
解約受付時には、退去日までにしておいてほしいことや注意事項などがあれば伝えておきます(書面で渡します)。
退去立会い
退去日当日、もしくは後日、部屋の荷物がすべて運び出されたあとに、入居者・大家さん(の代理の管理会社など)の双方が立ち会って、部屋の現況を確認します。
元々の部屋にはなかった造作がされていたり、過失による破損などがあれば、原状回復のための費用を入居者に負担してもらわなければなりません。
しかし消費者センターに寄せられる賃貸トラブルで一番多く、対応が難しいのが、この退去時の敷金清算トラブルです。
立会者は入居者と一緒に部屋の各所をチェックしながら、ガイドラインに則って、経年劣化と入居者の過失の線引きをしていくことになります。
▶ 参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)
最近の入居者は、ガイドラインの存在をよく知っていますから、あいまいな指摘をすると「それは自然損耗だ!」と、反論されます。
しかし、断片的に聞きかじったような理解度であることも多く、自分に都合のいい部分だけを主張してくることもよくあります。
そういったときに、大家さん側にガイドラインの正確な知識がないと押し切られてしまうことがありますので、立会者は入居者の言い分と矛盾を理解して適切な対応ができるように準備しておかなければいけません。
入居者は、敷金をできるだけ返して欲しい、もしくは、大家さんにぼったくられるんじゃないか、といった臨戦態勢で身構えていることがありますので、立会者の対応ひとつでトラブルに発展してしまうことがあります。
高いスキルが必要な業務のひとつです。
そして、できることならその場で清算金額を確定して入居者にサインをもらった方がいいでしょう。
あらかじめ、清算が必要な過不足分の費用(不足家賃や返還家賃、日割り水道代、共益費など)は計算しておいて、当日現場で、原状回復の入居者負担部分を確認、単価表を用いてその場で計算し、清算額を確定します。
その清算額が預かっている敷金よりも少ないようであれば返金、多いようであれば請求をします。
この立会業務と敷金の清算を対面で行わないケースもありますが、あまりおすすめしません。
入居者がいない状態で管理会社社員だけでチェックしたり、敷金の清算金額は後日郵送で通知します、などのオペレーションだと、納得感が得られにくくなります。
退去立会いは入居者と対面で金銭交渉を行いますので、かなりストレスのかかる業務です。
自分でやれる大家さんもいらっしゃるとは思いますが、立会い費用を支払ってでも清算のプロに対応してもらった方が、後々のことを考えるといいかもしれません。
その後のリフォーム工事の受注を条件に、無料で立会いを行ってくれる管理会社やリフォーム屋さんもありますので相談してみるといいでしょう。
最終確認と部屋の明け渡し
清算金額が決着して、カギの返却を受けたら退去の手続きは終了です。
最終チェックとして、照明・エアコン・温水洗浄便座など、残置物もしくは既設の取り外しがないかをチェックしましょう。
細かいエアコンキャップや洗濯パンのエルボ、キッチンの排水溝のフタなどはなくなりやすいです。
新築直後はすぐ気づきますが、何度か入居者が入れ替わってリフォームをしていると、どれが残置物でどれが既設かわからなくなることがあります。
賃貸借契約書や工事履歴をあらかじめ確認しておきましょう。
カギは、入居時に交わした受領書のナンバーと突きあわせて、入居者が作成したスペアキーも含めてすべて回収します。
隠し持っていたスペアキーで退去後も出入りしていた、などという事件も稀になくはないので、カギ交換が終わるまではドアジョイナーなどを使って仮施錠をした方がいいかもしれません。
明け渡しが終わったら次の入居者を迎える準備をします。
敷金清算で揉めると、場合によっては工事に取り掛かれず、次の募集ができないことで損害が広がってしまいます。できるだけ速やかに解決に導きましょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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