管理委託契約の形式と業務範囲

賃貸住宅の管理業務を大家さんひとりで行うのは、多くの場合で困難です。

必要に応じて外部の事業者に業務委託をしていくことになりますが、「なにを」「どこまで」お任せするかは、経営者としてしっかり把握して判断しなくてはいけません。

 

いくら管理を委託しているからと言って、業務を丸投げにしていいわけではありません。

現場で働く担当者からは、日々さまざまな提案や報告が上がってくると思いますが、それらを吟味し最終的な判断を下し、指示をするのは大家さんの仕事です。

必要な情報が上がってこなければ、あげるように言わなければなりませんし、それでも改善しなければ、管理会社の変更も考えなくてはいけません。

管理の一部だけを任せていたり、複数の業者にバラバラに発注していたりすると、情報の行き違いやコミュニケーションエラーも起きやすくなります。

業者が動きやすい環境を整え、円滑な運営ができるようにしっかりと調整を行っていきましょう。

 

契約の形式

まず大きくは、「管理委託契約」と「サブリース契約」のふたつに分かれます。

それぞれにメリット・デメリットがありますが、賃貸経営者として自分の所有する物件の管理をしっかりと行うという意味では、管理委託の方が状況を把握しやすいです。

サブリースに関しては別記事に譲ることにして、ここでは「管理委託契約」の場合のチェック項目を見ていきます。

▶ 参考:サブリースの基本

 

管理委託の場合は、以下のような運営業務の全部を一括でまとめて任せることもできますし、大家さんが自分でできることは自分で行って、できない部分だけを1社もしくは複数社に分けて委託することも可能です。

 

前者は「一括管理」「総合管理」などと呼ばれ、管理委託契約を締結し、毎月一定(もしくは変動)の管理料を支払って管理業務を委託します。

総合管理を受ける管理会社は、不動産賃貸業の仕組みはもちろん、管理運営と設備や建築の幅広い知識・経験・実務能力が必要になります。

総合管理を任せるに足る管理会社かどうかの目安として、国土交通省の「賃貸住宅管理業登録」を行っているか、宅地建物取引士賃貸不動産経営管理士のような有資格者を配置して適切に運営しているかなどは、最低限確認しておくポイントです。

 

後者は「部分管理」「分離発注」などと呼ばれることが多いです。

総合管理も受託可能な管理会社に業務の一部分を委託することもありますし、その業務の専門業者に個別に任せることもあります。

例えば、賃貸仲介店に賃貸借契約の仲介のみを頼んだり、清掃業者に清掃業務のみを頼むケースなどです。

分離発注をすれば費用を抑えることも可能ですが、包括的なサポートは望めません。ある程度のトラブルは自分で対処できるくらいの大家力が必要です。

 

業務の範囲

管理業務の範囲は広いですが、サービスの範囲や見積書の書き方は管理会社によってさまざまです。

通常よくある管理内容と、そのチェックポイントについて以下にまとめています。

管理会社を変更したけれど、あとからこんなはずではなかった…とならないように、どこまでが見積りの項目の中に含まれているのか、内容をきちんと確認するようにしましょう。

 

1.入居募集業務

入居者の募集から賃貸借契約、入居までの営業活動や事務の代行業務です。

分離発注をする場合は、エイブルやアパマンショップなど、賃貸不動産の仲介をメインで行っている業者に委託します。

▶ 参考:管理委託のポイント 1.入居募集業務

 

2.集金代行業務

家賃や共益費の集金と滞納督促を行い、公共料金などの支払いを代行して大家さんに送金します。

分離発注をする場合は、管理会社に委託しますが、毎月の売上の全てを一旦預けることになりますから、与信やコンプライアンスなどの面で信頼のおける会社であることは必須事項です。

▶ 参考:管理委託のポイント 2.集金代行業務

 

3.入居管理業務

入居者への連絡業務やクレーム対応、大家さんへの報告業務などを行います。

分離発注する場合は、管理会社に委託することになると思いますが、2や5、6と合わせて委託せずにこの項目内の業務だけを委託すると品質は低くなりがちです。もしくは、単独では受けてもらえません。

▶ 参考:管理委託のポイント 3.入居管理業務

 

4.契約更新業務・解約業務

賃貸借契約の更新に係る事務手続きや解約に伴う退去精算業務を行います。

分離発注をする場合は、賃貸仲介店もしくは管理会社に委託します。

▶ 参考:管理委託のポイント 4.契約更新業務・解約業務

 

5.清掃業務

日常清掃、定期清掃を委託します。

分離発注をする場合は、清掃業者やシルバー人材センターなどに発注しますが、品質管理は大家さん自身で行う必要があります。

▶ 参考:管理委託のポイント 5.清掃業務

 

6.建物・設備管理業務

建物の法定点検、定期点検、日常点検と、メンテナンスを行います。

分離発注先は管理会社が多いですが、基礎知識があるならさらに細かく専門業者に分離発注することも可能です。

▶ 参考:管理委託のポイント 6.建物・設備管理業務

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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