管理を委託することでかかる費用
賃貸経営を行っていく上で必要になる入居者や建物の管理業務は、費用を支払うことで管理会社に委託することができます。
サブリース契約のように運営事業者に全部お任せして、建物や入居者に関する具体的な業務を全く把握せずに事業を回すことができるのも賃貸経営の大きな特徴です。オーナーであり、不動産投資家の経営スタイルです。
しかし管理委託契約では、全部丸投げというわけにはいきません。
その物件に必要となる業務をチョイスして、委託する業務・しない業務を仕訳して、任せた業務についても管理会社をしっかりと管理監督しなければなりません。
これは大家さんの仕事であり、賃貸経営者の経営スタイルです。
「オーナー様」と呼ばれると、スタイリッシュでスマートな響きがありますが、大家さんの仕事はもっと泥臭くて大変なことも多いです。管理委託にかかる費用の考え方についてまとめます。
管理委託にかかる費用とは
管理委託にかかる費用は、どの業務をどう任せるかによって変わります。
大きく分けると、「入居者に関連する管理業務」と「建物に関連する管理業務」のふたつです。
▶ 参考:賃貸管理業務とは
入居管理にかかる費用
入居者に関連する管理業務は、募集活動やクレーム対応、集金・滞納督促など、日常的に随時発生する業務が多いので、1回いくら、何分いくら、などと積算することが難しいです。
そのため、「家賃総額の○%」が入居者管理費用です、としている管理会社が多いです。
しかし、よく見るとその中身は管理会社ごとにまちまちで、「集金できた家賃総額の○%」という会社もあれば、「滞納分も含む」ことや「共益費も含む」ところもありますし、「満室想定家賃総額の○%」ということもあります。
また業務内容も、「日常清掃月2回分を含む」ところもあれば、「滞納は督促状の送付のみ」だったり、「クレーム電話がつながらない」ようなこともあります。
相場的には、3%~8%の範囲内が多いように感じますが、実際に任せるときはその数字の大小だけではなく、含まれる業務の中身やその品質についてもできるだけ確認しておきましょう。
建物管理にかかる費用
建物に関連する管理業務は、清掃業務、消防点検や貯水槽清掃などの法定点検、設備の管理やメンテナンス、巡回点検など、定期的に決められた頻度で行う業務が多いです。
そのため、それぞれの業務ごとに費用を積算して見積もる管理会社が多いです。
建物管理は業務ごとに専門性が高いため、管理会社の自社社員ですべてを担っていることは稀で、消防なら消防機器の専門業者、水道、電気、エレベーターなど、それぞれの専門業者に再委託をしています。
ですから、専門業者が出してきた見積りに管理会社の管理費用を上乗せしたものが、大家さんに出される見積り金額です。
管理会社は、建物や設備の状態を適切に保つため、これらの専門業者をとりまとめて監督をする必要があるため、知識量や監督能力に不足があると、管理品質に影響が出てきます。
管理会社によって差が出やすいコンサルティング業務
業務の内容があいまいで分かりにくく、業者によって差が大きく出るのが、提案やアドバイスなどのコンサルティング業務です。
例えば、
- 入居募集の際の入居者ニーズ調査やマーケティング
- 安価で効果的なリフォームの提案
- 共用電気代の削減提案
- リースをうまく使った設備増強の提案
- 長期修繕計画
- 節税の提案
…など、賃貸経営を安定化させるための助言です。
これらの仕事は、本来はコンサルティングの費用を支払って委託するような専門性の高い業務です。
しかし、賃貸管理の現場では、品質的にも意識的にもまだまだ対価をいただけるほどの仕事とは認識されていないため、管理費用に含んで提案されることが多いです。
どこの管理会社の見積り書にもアドバイスや提案業務は含まれているため、書面では判断しにくいですが、実は最も、管理会社の実力差が出る業務でもあります。
管理委託費用の考え方
管理委託費を「出ていくだけのお金」と考えると、儲けを増やすためにはできるだけ少なくした方が得だと思うかもしれません。
たしかに、今まで10万円かかっていた電気代がLEDに変えたら5万円になる、というのであれば、すぐやった方がいい施策だと思います。しかし、管理委託費が10万円から5万円になる、と聞いても、すぐやった方がいいとは言えないこともあります。
管理費用は安くても、都度都度発生する工事の単価が割高だったり、入居者対応がいい加減だったり、適正な家賃設定ができなかったり、仲介店に嫌われていたり、清掃や点検がテキトウだったり、緊急時にすぐ対応できないのであれば、なんのために任せているのかわからなくなります。
管理会社に業務委託をするということは、賃貸経営のビジネスパートナーを選ぶということです。
少なくとも年単位、10年単位、場合によっては次世代までの長い付き合いになっていきますから、金額の多少だけで安易に決めてしまうのは早計です。管理提案に来る、スーツの営業マンの話だけではわかりません。現場スタッフのリアルな話も聞いてみましょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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