賃貸借契約の解約

卒業・就職・結婚・転勤・自宅の購入…理由はさまざまですが、賃貸住宅である以上、入居者さんはいつかは退去していきます。

その昔、まだ需要が供給を大幅に上回っていて、礼金もキッチリ頂戴し敷金も修繕費として回収できていた頃、できるだけ早く入居者が入れ替わって部屋が回転した方が儲かる、というような時代もありました。

 

しかし今は、退去が出れば修繕費がかかるし、広告費もかさむ、家賃も下がるという、できれば回避したいイベント…。

前述のように、ライフステージの節目節目で致し方ない退去であれば仕方ないですが、ちょっとネガティブな事情での退去もあります。

更新料がかかるのがイヤだ!というのが理由であるのなら、更新料をまけてあげても住み続けてもらった方が得策かもしれません。物件に対する不満が原因なら、同じ理由の退去が続かないように改善をしていかなければいけません。

できる限り退去の理由は確認しましょう。

 

入居者からの解約

賃貸借契約の解約は入居者側からの申し出がほとんどです。

入居者の管理を管理会社に委託していれば管理会社が受け付けますし、そうでなければ大家さんが対応します。

入居者からの解約は、多くの場合、1ヶ月前予告になっていると思いますので、退去の受付をした日から最低1ヶ月分は家賃が発生します。

4/15に退去の受付をしたならば、10日後に引っ越そうが20日後に引っ越そうが、5/14までの分は家賃を受け取れます(賃貸住宅の家賃は日割りにすることが多いです)。

退去の受付日は、解約日(家賃発生の最終日)を決めるものですので、あとで言った言わないのトラブルを避けるためにも、解約通知書や退去届などの書面でいただく方が確実です。

あらかじめ入居のしおりなどの書類と一緒に渡しておくとよいでしょう。

 

期間満了での解約

賃貸住宅の契約は更新があるものという認識を持っている入居者、もしくは、契約更新に際して事務手続きの慣習がある地域では、賃貸借契約期間の満了に伴う解約があります。

更新料がある物件となると、さらに解約リスクは高まります。

例えば家賃6万円の物件では、更新料1ヶ月分(6万円)+更新事務手数料0.5ヶ月分(3万円)+火災保険料2年分(1.5万円)=10.5万円と、家賃の2ヶ月分近い更新費用がかかることがあります。

火災保険料はどちらにしてもかかりますが、それでも更新料のない物件と比較すると入居者の負担は大きくなります。

今はインターネットで簡単に部屋探しができます。

初期費用が少なく、今よりも家賃が安い物件を見つけやすくなっていますので、引越し動機が高まりやすい環境であると言えます。

逆に、契約更新に対してあまり意識がない地域では、いつの間にか更新(自動更新もしくは法定更新)していることが多いので、「更新だから」という理由での引越し動機は低くなります。

 

大家さんからの解約

家賃の滞納や近隣トラブルなど入居者側の問題、または取り壊しや建て替えなどの大家さん側の都合によって、大家さんの方から賃貸借契約の解除を申し出ることもあります。

賃貸借契約を解除されると入居者は、引越し先探しなどの転居準備が必要になりますので、大家さんは最低でも1年~6ヶ月前までには解約の通知をしなければなりません。

通知にすんなりと応じてもらえたらいいのですが、長年住んでいる自宅への愛着、引越し手続きの煩雑さ、環境変化への忌避感、お金がない、行き先がない、無視、などさまざまな理由で了承していただけないケースも多く、そうなるとかなりの労力がかかる作業になります。

借地借家法で入居者の住む権利はかなり厚く保護されているため、たとえ入居者側に非がある解約通知だとしても退去を強制することはできません。

多くの場合、明け渡してもらうための立退き料を準備して交渉を行っていくことになります。

立退き料はいくらくらいが相場なのかとよく聞かれますが、これは本当にケースバイケースです。

たまたま引越す予定を察知して交渉すらしないケース(0円)もありますし、家賃の数ヶ月分(定額何十万)ですんなりまとまることもありますし、引越しにかかる費用を細かく見積りしてもらって実費精算ということもあります。

下手な不動産屋が交渉を間違えると実費以上にかかることもありますし、最悪の場合、滞納者に引越し代を払って出ていってもらうような、泥棒に追い銭状態もあり得ます。

それらの解約トラブルをできるだけ回避するには、現時点では定期借家契約で契約を結ぶしかありません。

大家さん側から解約を申し出る可能性が高いことがあらかじめ分かっているのであれば、検討すべき契約形態です。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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