賃貸借契約書とは
賃貸住宅の契約は、契約内容を明確にし双方異論がないことを確かめて紛争を防止するために「賃貸借契約書」が2通作成され、大家さんと入居者、連帯保証人、場合によっては媒介(仲介)業者が記名押印し、契約当事者(大家さんと入居者)が1通ずつ保管して成立します。管理会社など管理を委託している会社がある場合は、コピーを1部渡すこともあります。
賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類がありますが、このように契約を書面で締結することが義務付けられているのは「定期借家契約」だけです。
「普通借家契約」は、書面がなくても口頭だけで契約自体は成立することになっています。
しかし、あとから「言った、言わない」のトラブルが起こり得ることは容易に想像できますから、普通借家契約でも書面を用いて契約締結されることがほとんどです。
▶ 参考:賃貸借契約の種類とメリット・デメリット
普通借家契約標準契約書
賃貸借契約書は重要度も利用頻度も高いですから、国土交通省から標準契約書が公開されています。
国土交通省が公に出しているものなので、宅建業者はみんなこれを使っているのかというと、実はそんなこともありません(地味に不人気だったりします)。
決まった書式を利用しなくてはいけないわけではないため、宅建協会などの業界団体、弁護士などの専門家、無料テンプレート配布サイトなど、さまざまな団体や個人からひな形が提供されています。
中にはどう見ても、宅地建物取引業法を知らない方が作成したと思われる怪しげなものもありますので、選ぶ際には注意が必要です。
宅建業者はこれらのひな形をベースにして、自分たちが使いやすいようにカスタマイズを行います。
なぜかというと、賃貸借契約は全国一律ルールではないため、敷金・保証金などの文言の相違や、敷引きや償却、更新料など、地域ごとに慣習が違うことが多く、標準契約書のままでは実態にそぐわず使いにくいことが多いからです。
イチから自分たちで作成している場合や、既定の書式を大幅に修正した場合は、法律的に問題がないか顧問弁護士等の専門家のチェックを受けて使用した方が間違いは起こりにくいです。
それなりの規模の業者であれば、賃貸借契約書の不備でイタイ目にあっていることが一度や二度ではないので、かなりしっかりとチェックされています。仲介を任せる業者を選ぶときのひとつの目安にしてもいいかもしれません。
定期借家契約標準契約書
定期借家契約の標準契約書も、同じように国土交通省から公開されています。
▶ 参考:定期借家制度について(国土交通省)
定期借家契約自体が、新しい仕組み(と言ってももう15年以上経っていますが…)であったり、めんどくさい上に入居者に敬遠されがちな契約形態であるという認識もあり、あまり普及していません。
やむを得ないケースのときにだけ利用する契約形態という位置づけになっているため、締結したことがないという仲介営業マンもいると思います。
定期借家契約で契約を行う場合、大家さんは入居者に対して「契約の更新がなく、期間の満了とともに契約が終了する」ということを、契約書とは別の書式で作成して、契約前に説明と交付を行わなければならないことになっています。
ここでのポイントは、その義務は大家さんにある、ということです。
重要事項説明は宅建業者の義務でしたので、もし行っていなくても宅建業者が困るだけですが、定期借家契約の契約終了説明は大家さんが行わなくてはいけない義務です。
すなわち、大家さんは必ず宅建業者に行わせなければいけないということです。
「ボクやったことないので知りませんでした…(ごめんなさい)」では済まないということになります。
この契約終了説明は、宅建業者が作成する重要事項説明書の中に追記する形で行ってもいいかというと、ちょっと微妙というか判断が分かれる部分があります。
もしトラブルになってしまったら疑義が生じる部分でもありますので、国土交通省HPからダウンロードできる「定期賃貸住宅契約についての説明(借地借家法第38条第2項関係)」を、大家さんの方で用意してあげると親切かもしれません。
▶ 参考:「定期賃貸住宅標準契約書」関係様式のダウンロード(国土交通省)
特約
重要事項説明書の項目でも取り上げましたが、賃貸借契約の中で最も重要なのが特約の項目です。
賃貸借契約は大家さんと入居者が、お互いに同意してこれでいいと決めたらそれでいい契約ではありますが、貸す側・借りる側というパワーバランスの関係上、紛争が起こった際にはどうしても消費者(借りる側)が保護されることが多くなります。
あまり無理のある特約は、入居者に「不当に不利益を与える」として否認されることが多いです。条項はトラブル事例や判例を参考にして、よく検討してから作成しましょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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