賃貸借契約時にやり取りされる書類と費用
賃貸借契約は仲介店の店舗や事務所で行われることが多いですが、立ち会ったことがある大家さんは少ないと思います。
契約当事者なのでもちろん立ち会ったっていいのですが、敬遠される方が多いです。
最近では積極的に入居者と交流を持って、地域や物件内コミュニティを形成したり、テナントリテンションに努める大家さんもいらっしゃいますが、かなりの少数派です。
本来であれば、宅建士が重要事項説明を行って納得の上で重要事項説明書に記名押印、ある程度のインターバルを置いて疑問や質問があれば解消してから、賃貸借契約書の説明と記名押印、というのが流れではあるのですが、実務的にはほぼ同時(同日に重説→賃貸借契約)に進行することが多いです。
それでなくても難解な条項で埋め尽くされている重要事項説明書と賃貸借契約書ですから、短時間でバーーーッと説明を行っても100%理解できている入居者は少数派だとは思いますが、何度も来店する手間が省けるという利点もあります。
両方の説明を同日に行ったことが原因でトラブルになった、という事例はあまり聞きませんが、重説や賃貸借契約書をさらっと読み流してキチンと説明をしない、宅建士ではない担当者が説明をする、など不動産屋に過失があるとトラブルになることがあります。
契約時に入居者(連帯保証人)が準備する書類
賃貸借契約を締結するに当たって、入居者と連帯保証人に準備してもらう書類はそれなりにあります。
事前に確認しておきたい事柄などのために、入居審査の段階であらかじめ提出してもらっている書類もあるでしょう。
大家さんの意向や仲介店のやり方によって、必要となる書類は若干異なることもありますが、おおむね以下のようなものを求めることになります。
<入居者>
- 住民票 … 入居する全員分のもの。その部屋に誰が住むことになるのか確認する必要があります。
- 本人確認書類 … 契約者自身の免許証やパスポート、保険証など公的な身分証明証のコピー。最近は写真がついているものを求めることもあるようです。学生さんなど身分証明書がない場合は学生証でも可にするケースもあります。
- 収入を証明するもの … 源泉徴収票や給与明細書、確定申告書の控えや納税証明書などのコピー。駐車場の契約も行う場合は、車検証のコピーを預かります。場合によっては、勤務先の在籍確認書を求めることもあります。
<連帯保証人>
- 印鑑証明書 … 契約書や承諾書には連帯保証人の実印を押印してもらいますので、その証明のために必要な書類です。連帯保証人の所在確認にもなります。
- 連帯保証人承諾書 … 連帯保証人になることを承諾したことを証明する書類です。
- 収入を証明するもの … 必要に応じて提出を求めます。連帯保証人になっても支払い能力がなければ意味がありません。
面識と信用のない他人に部屋を貸すわけですから、誰が住んでいるのかわからなかったり、家賃を回収できなかったり、問題を起こされては困ります。
求めた書類を提出期限までに準備できない、あとから提出するので部屋の引渡しだけ先にしてほしい、などの申し出に応じることはトラブルの元です。
ちょっとルーズなだけ、と安易に考えないようにしましょう。
契約時に入居者が払う費用
入居者は契約時にある程度まとまった初期費用が必要になります。
分割払いはできないですし、クレジットカード決済も普及しているとはいえません。この費用負担が、競合物件と比較検討をする際の大きなウエイトを占めていることは否定できません。
- 敷金 … 地域によっては「保証金」という名目の場合もあります。基本的には、入居者の過失によって生じた損害を担保するための費用で、何もなければ返す預り金です。当然、不動産所得の収入金額には含めません。敷引や償却などの特約をつけることもありますが、退去時にいちばんトラブルになりやすい金銭です。
- 礼金 … 大家さん、貸してくれてありがとう。という意味合いで受け渡しされる日本独特の金銭授受ですが、供給過多で借り手優位な市場だと、競争力の低下に直結します。大家さんが受け取るはずのお金ではありますが、多くの場合、広告費(AD)として仲介店の懐に入ります。
- 前家賃 … 家賃は一般的に前払いですから、日割り分の当月家賃と来月分の家賃を受領します。
- 仲介手数料 … 宅建業者は仲介の手数料として、最大で家賃の1ヶ月分+消費税の仲介手数料を受領します。
- 損害保険料 … 部屋の火災(家財)保険料です。家財の保証額によって保険料は変わります。保険会社から仲介店に10~50%のキックバック(紹介料)があることが多いです。
- 家賃保証料 … 保証会社を利用するときに支払います。保証料の相場は、家賃の50~100%の初期費用と1~2年ごとの更新料です。損保同様、仲介店へキックバックがあります。
- その他 … 仲介店によっては、リフレッシュ(清掃)費用や鍵交換代、害虫駆除代などの別途サービスを付加していることがあります。
入居促進のために、これらの初期費用をできるだけ少なくして募集活動を行うことはよくあります。
礼金はまず真っ先に削りやすい費用です。
リフレッシュ(清掃)や鍵交換、害虫駆除などは、基本的には大家さんの方で入居前に行っているはずです。不要なものはつけないようにすれば入居者の負担は減ります(代わりに仲介店の収入は減ります)。さらには、仲介店を介さずに大家さんが直接入居者と契約ができれば、仲介手数料は不要になります。
敷金や保険料・保証料などの費用は、滞納や火災事故などのリスクを担保するために必要不可欠な費用です。不測の事態が起こった際に「こんなはずではなかった」と思うようであれば、安易な値下げはできるだけ控えたほうがいいでしょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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