DIY型賃貸借とは
平成25年住宅・土地統計調査によると、日本全国にある空き家の数は820万戸、5年前に比べて8.3%の増加、そして空き家率は13.5%で過去最高であると発表されました。
それ以前からも、既存の住宅が空き家となって放置されていることは、防犯・防災・衛生・景観などの環境面で大きな問題があると指摘されており、既存の住宅ストックを活用するための施策について議論が重ねられてきました。
問題として取り上げられているのは、どちらかというと、きちんと管理されて賃貸住宅市場で流通している賃貸用のマンションやアパートではなく、誰も住まなくなってしまって放置されている実家などの個人所有の不動産です。
- 愛着のある実家だから売るのは忍びない
- もう都会で所帯を持っていて戻る予定もない
- 賃貸したくてもやり方がわからない
- 取り壊したら固定資産税は上がる
- リフォーム代も取り壊し費用も捻出できない
などなど…もろもろの理由で放置されている住宅ストックがたくさんあります。
それらを賃貸住宅として有効に流通させるために、平成25年9月「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」が発足され、さまざまな施策が検討されました。その中のひとつに「DIY型賃貸借」の活用のためのガイドラインや契約書式例の策定があります。
DIYとは
DIYとは、「Do It Yourself」の略で、「自分でやろう」ということです。
要するに日曜大工のことなのですが、お父さんが子供の本棚を自作していた時代とはだいぶ様変わりしてきています。
ホームセンターのDIYコーナーには、初心者でも扱いやすい小型の工具から、アンティーク調の装飾小物、板材の種類も豊富ですし、用途も多様な塗装材料、自宅ではできない作業を行える工作コーナーがあったり、溶接加工までできるところもあります。
休日のホームセンターではDIY教室も開かれており、多くのDIY女子が集まって思い思いのインテリア小物作りに勤しんでいます。
日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会によると、DIY用品を中心に住関連商品を総合的に取扱う小売店舗、ホームセンターは全国で4,500店舗を超え、市場規模約4兆円と言われるまで、着実に成長しているそうです。
DIY型賃貸借とは
若い人にとっての自宅が「帰って寝るだけの場所」から「自分らしい暮らし方や快適な空間」に変化しつつあり、一定規模のDIYニーズがあることは間違いがありません。
しかし賃貸住宅には「原状回復義務」という高いハードルがあり、なかなかそのニーズを許容する環境にありませんでした。
しかし、平成28年4月に国土交通省からガイドライン「DIY型賃貸借のすすめ」が公表され、原状回復費用の負担増にあえぐ賃貸住宅にも有効に活用できるのではないかと話題になりました。
大家さんにとっては、
- 多額のリフォームを行わず現状のまま貸すことができる
- DIYすることで部屋に対する愛着が増し長期入居に繋がるかもしれない
- 退去の時にはグレードアップしているかもしれない
などのメリットが考えられ、一方入居者側は、
- 自分好みのリフォームができる
- 工事代金は自分持ちな代わりに家賃が安め
- 原状回復義務を問われない
などがメリットになります。
実際は、きちんとDIY可能部分の取り決めや費用負担を明確に決めたうえで賃貸借契約を行わないと、逆にトラブルが発生してしまいかねません。
それほど簡単な契約ではないかもしれませんが、しっかりとルールさえ決めてしまえば大家さんにとってメリットの大きい契約にすることは十分可能です。
DIY型賃貸借の課題
DIY型賃貸借はまだ生まれたばかりの考え方で、事例があまりありません。
実際にやってみたらこんなところでつまずいた、トラブルになった、気をつけなければいけない、などの情報が共有されていないため、二の足を踏んでしまいがちです。
仲介手数料だけが収入の仲介店は、DIY型賃貸借契約は通常の賃貸借契約に比べ手間がかかりすぎるため、あえて自ら積極的にはやってくれないでしょう。
管理会社は、もし契約に不備があってトラブルに発展したりした場合の管理責任を問われることを嫌がって、自らすすめてきてはくれないかもしれません。
やはりやるのであれば、大家さん自身が積極的に動いて仲介店や管理会社を巻き込んでサポートしてもらうしかありません。
細かな工事内容などについては、入居者と直接コミュニケーションをとって十分な事前協議と合意をしておかなければトラブルになりますが、うまく活用することができれば、大家さんも入居者もメリットがある契約になる可能性は高いです。
しかし、人任せでは難しいと思います。
手間ひまを惜しまず取り組めるかどうかが、最大の課題であると言えるかもしれません。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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