重要事項説明とは
賃貸住宅の契約ではほとんどの場合、大家さんと入居者の間に不動産屋さんが入ってさまざまな手続きを仲介してくれます。
この不動産屋は「宅地建物取引業法」という法律に則って、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けた「宅建業者」でなければいけません。
不動産屋が宅建業の免許を受けるためには、不動産取引の専門家である「宅地建物取引士」を一定数以上配置しなければならないと規定されています。
賃貸住宅といえども取引価格は高額になりますから、借主(入居者)に契約の内容を十分に理解してもらった上で、安全な取引を行わなくてはなりません。
そのため仲介をする不動産屋には、契約を締結する「前」に、入居者にとって重要な事項をまとめた「重要事項説明書」を交付して、「宅地建物取引士」が取引士証を掲示して説明する義務を負っています。
すなわち重要事項説明とは、「宅建業者」が「入居者」に対して行わなければいけないことですから、大家さんには直接は関係ありません。
しかし、契約内容に関する重要な事項が記載されている書類ですから、知らぬ存ぜぬでは通りません。また、宅建業者の仲介を間に挟まず、大家さんと入居者で直接契約のやり取りをする場合であれば、重要事項説明書の交付や説明義務はないことになりますが、契約前に行う大事な契約確認作業ですから、契約後に発生するトラブルを未然に防ぐためにも行っておくと安心かもしれません。
重要事項説明書
重要事項説明書(重説)の書式自体は、国や業界団体などが配布しているひな形をベースにして、各宅建業者が使いやすくカスタマイズして利用していることが多いです。
しかし、インターネット等で拾ってきた書式を疑問なくそのまま使ってしまっている、昔からの書式をずっと使い続けて法改正などの情報が反映されていない、など、内容に不備があるものが利用されていることも稀にあるようです。
国土交通省のホームページに掲載されているものが、宅建業法に則ったいちばんノーマルな重説のひな形になりますが、規定されたことしか書いてありませんのでとても無味乾燥です。
実際の賃貸借契約時には、法律で規定されていない当事者同士の約束事(特約など)がとても重要になってきます。
公的機関が出している書式だから問題ないだろう、となにも考えずに使ってしまうと、肝心要の約束事が重要事項として記載されていないことにもなりますから、しっかりと確認をしなくてはいけません。
▶ 参考:別添3重要事項説明の様式例
28~34ページが(建物の貸借)の部分になります。
基本的には、宅地建物取引業法の第五章第一節第三十五条に準じた書式であればOKですので、不安が残る重要事項説明書を見つけた場合には照らし合わせてみてください(かなり解読しにくいですが…)。
重要事項説明書の内容
重要事項説明書に記載しなくてはいけない事項は、大きく分けて4つです。
- 説明を行う宅建士の確認
- 物件自体に関する事項
- 取引条件に関する事項
- その他、法令で定められた説明事項
詳細についてはこちらでは割愛しますが、公益財団法人不動産流通推進センターが運営する不動産ジャパンに掲載されている、「重要事項説明の流れ(1)~(2)」と「重要事項説明の流れ(3)~(4)」が、一般の方が見てもわかりやすくまとめてあるように感じます。
特約の記載も忘れずに
重要事項説明書には、宅建業法で定められている事項がもれなく記載されていることは必須条件ですが、賃貸契約に際して特約事項を設定している場合があればその内容も書き加えます。
例えば、クリーニング費用負担の項目。ペット禁止や石油ストーブの使用禁止や造作買取請求の禁止などの禁止事項、フリーレントがついている場合なども特約として記載します。
特約は、メインになる賃貸借契約の内容に、当事者間で決めた特別な約束事を付加したり、変更したり、削除したりするものですから、賃貸借契約を上書きする効果があります。
契約に際して重要な事項であることは疑う余地もないので、重要事項説明書にもキチンと記載してあるか確認した方がいいでしょう。
入居者との間でなにかトラブルが起こってしまったときに、賃貸借契約書と並んで拠り所となる書類が重要事項説明書です。ささいな記載漏れや転記ミスで争点を大きくしてしまっては元も子もないので、慎重にチェックしておくことが大事です。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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