入居トラブルのリスク
賃貸住宅は、戸建てタイプのものもありますが、その多くはアパートやマンションなどの共同住宅です。
小さいお子さんのいる家庭もありますし、夜勤で昼間に寝ている方もいます。学生もいれば、社会人もいれば、ご年配の方もいるわけです。さまざまな家族構成・生活様式・背景をもった人たちが同じ建物で暮らしますので、ときにはトラブルも発生します。
建物の築年数や天災被害の状況も様々、建物に瑕疵がある可能性も否定できませんから、設備や建物に不具合が起きることだってあります。
賃貸経営は人々に「生活の場」を提供するサービスですから、営業時間9時~18時、時間外のトラブルには一切対応しません、というわけにはいきません。
緊急事態ともなれば、24時間365日対応が必要になる事業です。
顧客である入居者が「入居」したその日から、生活にかかわるトラブルは発生します。
▶ 参考:賃貸クレームの種類
クレーム対応は難易度の高い業務
自主管理でクレーム対応まで自分で行っている大家さんは、大なり小なり様々な入居者トラブルに遭遇したことがあるかと思います。
それはもう、大変な武勇伝をお持ちの大家さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、賃貸管理を委託していると、日々自分の所有する物件でどんなクレームやトラブルが発生しているか、よく知らないという大家さんも実は結構いらっしゃいます。
設備の故障など、お金のかかるトラブルは必ず管理会社から連絡があります。故障箇所とかかる費用も明確に提示されるため、大家さんが知らないということはまずありませんし、工事が終わって不良が解消されれば、トラブルが長続きすることはありません。
しかし、解決に時間がかかりやすい入居者のマナーに関するクレームや、入居に関する交渉事などの記録は、事細かに報告されないことがあります。
毎月送られてくる、管理明細書に「○○というクレームがあったので、全戸に注意文を配布しました」などと一文で報告されていることも多く、その後、無事解決したのだろうと思っていたら、実はトラブルが大きくなっていて退去につながっていたり、更なる入居マナーの悪化が起こっていることもあるのです。
賃貸管理会社には、毎日数えきれないほどのクレームや問い合わせの電話がかかってきます。
1から10まですべて大家さんの判断を仰ぐために回答を保留していては仕事になりませんから、ある程度のクレームは担当者の裁量で対処をすることになります。
しかし、その対応レベルはどうしても属人的になりがちで、担当者が悪意なく行った対応であっても、入居者の怒りの火に油を注ぐこともあるのです。しかし管理会社は、自分たちの対応が原因で炎上してトラブルが拡大した、とは言えませんから、さらっと一文で報告するわけです。
クレーム対応は、どうしてもお互いに感情が入りやすくなるため、難易度は高めの業務です。
みんな自分ではやりたくないので、大家さんは管理会社に委託しますし、管理会社はコールセンターに再委託し、最終的に入居者からの電話を受けるのは、物件のことも入居者のことも全く知らない余所の人、ということはよくあります。
余所の人の方が、客観的に冷静に対応できるので良い、という意見もありますが、その後実際に現場で対応するのは、入居者から直接話を聞いていない管理会社や設備業者になりますから、どうしてもタイムラグや伝言ゲームによる情報の交錯が起こり、それがまたクレームに繋がることがあります。
トラブルを大きくしない・未然に防ぐために大家さんができること
じゃあ自分で対応できるか、と問われるとそれも難しいことですから、やはり管理会社に委託せざるを得ません。
いろんな人がいますから、すべての人に100%満足して住み続けてもらうことはできないかもしれませんが、大家さんとしてトラブルを可能な限り少なく、小さくするために、できることはしておきたいものです。
▶ 参考:クレーム対応の鉄則
関係性作り | 管理会社との関係性を構築しておくことは大事です。信頼関係があいまいだと、報連相がうまくできなかったり、まずいことを隠すようになります。 |
早期対応 | 返事を保留したり、放置したり、のらりくらりとかわさず、速やかに対応します。解決に時間がかかる場合も、そのことをキチンと説明します。 |
対応窓口の明示 | 一次受付先をしっかり決めて、入居者をたらい回しにしないようにします。 |
受付者、訪問者の対応 | 電話対応がきちんとできるか、入居者宅に訪問する者は、サービスマンとして適切な言葉遣いやマナーができているかを押さえます。 |
入居時の確認 | 入居チェックリストなどを使って既存の不備を共通認識にしておくことや、入居のしおりを配布して共同住宅のルールを周知します。 |
わかりやすい掲示・案内文 | 必要な情報をしっかり周知するために、掲示物や案内文はできるだけわかりやすくします。 |
事故対応マニュアル・連絡網 | 緊急事態が起こった場合の報連相、初期対応についてあらかじめ決めておきます。 |
緊急時費用の事後承認 | 給湯器の故障など、速やかな対応が必要な修繕は、事後報告でもいいようにあらかじめ決めておきます。 |
管理の徹底 | 清掃や共用部の使い方に目を光らせておきます。管理の行き届かない物件は、風紀が乱れクレームも増えます。 |
柔軟性をもつ | 同質クレームでも特にマナートラブルの場合は、対応方法はケースバイケースです。状況をよく確認して適切な対応を取る必要があります。 |
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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