管理会社変更時の注意ポイント

管理会社を変更すると決めたら、あとは粛々と段取りを進めていくことになりますが、いくつか注意しておいた方がいいポイントがあります。

大きく3点です。知っておかないとあとで困ることもあります。

 

1.管理の引継ぎ

新しく任せる管理会社がおおよそ固まったら、現管理会社に解約の連絡を入れます。

1ヶ月~3ヶ月前予告の会社が多いようですが、年間契約で1年縛りの会社もあると聞きます。

解約が決まっている物件に力を入れる管理会社はありませんから、解約の申し出をしてから実際に移管するまでの期間が長いと、その期間の管理品質は期待できません。

場合によっては、違約金を支払ってでも早急に新管理会社に権限を移した方がよいでしょう。特に募集活動は、できるだけ早く新管理会社に移せるように交渉した方がよいです。

引継ぎの事務的な段取りは、旧管理会社から出てくるのを待つのではなく、新管理会社の主導で必要な書類やデータを出してもらうようにした方がスムーズです。

 

2.入居者への変更通知

家賃の集金やクレームの窓口対応を管理会社に委託している場合は、管理変更日の1ヶ月くらい前から入居者へ、管理会社の変更と、家賃振込口座の変更などの案内をしていく必要があります。

振込先口座の変更を依頼するための書類は、できれば新旧の管理会社と大家さんの3者連名が望ましく、大家さんと新管理会社の担当者とで個別に訪問、もしくは最低でも電話で説明をした上で、書面を交付した方がいいです。

 

10年くらい前に、詐欺師が新管理会社を装って、家賃振込口座変更のお知らせチラシを賃貸住宅の郵便受けにばら撒く「家賃版振り込め詐欺」が流行りました。

入居者が毎月払う家賃を狙った振り込め詐欺で、被害を被った方も結構いらっしゃいました。

具体的には、チラシを見て騙された入居者が、詐欺師の指定する口座に家賃を振込みます。大家さんは、入金がないので滞納だと思って入居者に連絡をしたら「もう振り込みました」と言われます。経緯を聞くと、ポストに入っていたチラシの口座に振り込んだ、振込の明細もある…。大家さんは、詐欺にあった入居者に対して「騙されたお前が悪いんだから、もう一度払え」とも言えずに、結局自分で被った、という事件でした。

また、別の物件では、管理会社を窓口にして連絡先を明示していたことが奏功しました。同様にチラシは投函されていましたが、少し怪しいと思った入居者が、振り込む前に管理会社へ確認電話を入れてきてくれたのです。おかげで、すぐさま詐欺が発覚し、他の入居者にも振り込まないように連絡をして事なきを得た、ということもありました。

 

入居者は部屋を借りているにもかかわらず、大家さんにも管理会社の社員にも会ったことがないということが多いです。大家さん側から積極的にコミュニケーションを取ることも稀ですから、関係性は希薄です。

「家賃の振込口座が変更になった」という案内は、少なからず入居者を不安にさせますから、きちんとした対応と説明を行うべきでしょう。

 

3.保証会社の契約が切れる

家賃保証会社をつけて入居してもらっている入居者の割合が増えてきています。

入居者は保証をされる、大家さんは保証を受ける、という当事者の立場ではあるものの、大家さんも入居者も保証会社を自分で直接選んで契約をすることはあまりありません。

基本的には、管理会社が選んだ(管理会社に紐づいた)保証会社と契約していることが多いはずです。

入居者の属性に合わせて、全保連を選んだり、CASAにしたり、リクルートにしたりと、選別して保証会社を使っていることもありますが、ある程度の規模の管理会社になると、保証会社と組んで自社オリジナルの保証商品を販売しているケースがあります。

そういう保証商品は、その会社独自の保証料や更新料が設定されていたり、保証会社から管理会社に払うバックマージンの比率が高く設定されていたりするため、管理会社が変わるとサービスが提供できなくなることがあります。

管理会社の変更と同時に切れることはなくても、契約期間満了後の更新をしてもらえなくなることがあるため、満了と共に保証契約が切れてしまいます。最近では、オリジナル商品でも継続してくれる保証会社もチラホラあるそうですが、信販系の保証会社の商品は、まず継続不可だと思われます。

信販系というのは、オリコとかジャックスとかアプラスのようなクレジットカード会社がやっている家賃保証です。

余談ですが、リクルートフォレントインシュアはオリコに買収されましたね。オリコフォレントインシュアという名前になったようですが、これは信販系になるのか独立系になるのか、どっちなのでしょう(まあ、どっちでもいいですね)。

 

家賃保証が切れてしまったら、どうすればいいのでしょうか。

選択肢は3つです。

  1. 入居者に連帯保証人をつけるように要求する
  2. 別の保証会社をつける
  3. 保証なしでいく

連帯保証人なしで保証会社のみの利用だった入居者には、連帯保証人をつけてもらうようにお願いをすることもできます。しかし、連帯保証人がいなかったから保証会社を利用していたのであれば、そもそも無理です。

もし連帯保証人をつけてもらったとしても、滞納督促の手間や確実な入金が担保されるわけではないので、手間の割にはリスクヘッジできません。

次に、別の保証会社をつけるケースですが、地味にハードルが高いです。

まず、契約途中の保証を受けてくれる保証会社がありません。

ですから既存の入居者なのに、新規入居時と同様に年収を聞き、勤務先を聞き、再度入居審査をして、新しく賃貸借契約をまき直して、家賃の半月分~1ヶ月分の保証料を支払う必要があります。この協力を入居者にしてもらうのがとても難しいのです。

現実的には、選択肢3「保証なしでいく」ということが多くなります。

これまで一度も滞納をしたことがないような入居者であればいいですが、ちょくちょく遅れがちになる入居者がいる場合は、その入居者の家賃保証が、管理会社の変更と共に切れる契約でないかどうかを確認しておくべきでしょう。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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