管理委託のポイント 6.建物・設備管理業務
付属している設備は消火器くらい、という小規模なアパートから、特定建築物の指定を受ける程の大型物件まで、居住用賃貸物件のバリエーションはかなり幅広くなってきています。
建物管理業務は、管理会社のレベル差が特に出やすい管理項目です。
物件に合わせた業者選びが大事になります。
法定点検業務
法定点検は、特定の設備を備えた物件や一定規模以上の物件の所有者に課せられる、点検・報告義務です。
やらなければならないことが法律で定められており、怠ると是正勧告、放置したうえで万が一事故などが起こった際には、大家さんが刑事罰に処されることもあります。
法定点検の項目は、重大事故が発生するごとに見直され改正されていくため、年々厳しくなっていく傾向があります。
専門用語や似て非なる項目が多く、点検項目や周期が行政区によって異なることもあるため、なかなか理解しにくい項目です。
改正があったのにうっかり見過ごしていた、ということがあってはいけませんし、緊急時の対応もありますので、ある程度の規模の物件は、建物のメンテナンスに強い管理会社に委託することが望ましいでしょう。
▶ 参考:賃貸住宅の法定点検
定期点検業務
法律で定められている点検項目以外にも、建物の資産価値を保つための維持管理業務が必要です。
日頃から目配りをしておくことで、突発的な事故を未然に防ぐことにも繋がります。
管理会社が行う定期点検報告を元に、修繕やメンテナンスの提案を受けることになると思いますが、合わせて、各設備の交換履歴や耐用年数の一覧表などを作成しておくと、大体いつくらいのタイミングで修繕が必要になるか、資金計画が容易になります。
未来の向けての修繕計画書は、管理会社にとっても現状把握のための重要な指標になりますので、作成を手伝ってもらえたら助かりますが、まだまだ「壊れたら提案する」くらいの受け身の管理会社も多いです。
極端な言い方をすると、予防保全をして寿命を延ばすよりも、壊れて取り替えてくれた方が売上に繋がると考えている管理会社もなくはありません。
修繕計画書の作成は、管理会社に任せっきりにせず、大家さん主導で行った方がスムーズです。
▶ 参考:賃貸住宅の巡回点検業務
緊急対応業務
建物や設備の管理業務の中で最も管理会社の力量差が出るのが、この緊急対応業務です。
法定点検や定期点検は、あらかじめ決められたスケジュールに沿って行う管理業務ですが、緊急対応はその名の通り、突発的に発生するトラブルに対応する業務です。
- 自動火災報知機が鳴動している
- エレベーターに閉じ込められた
- 漏水事故が発生している
- 水が出ない
- ガスがつかない
- 停電している
- 異音がする
- 異臭がする
- 火災が発生した
…などなど。
緊急時に急行して初期対応ができるメンテナンススタッフがいることで、被害の拡大を最小限に留めることができます。
緊急対応には、建物の構造、設備の仕組み、導線などを知った上での初期対応、各緊急連絡先(警察・消防・救急・大家さん・設備会社等)への手配、入居者への説明や場合によっては避難誘導などが必要になります。
自社で緊急時対応ができない管理会社は、有事の際の駆けつけ業務を外注していることが多いですが、普段からの管理状態や入居者の情報を把握していない外部事業者が駆けつけだけ行っても、ほとんど何もできません。
どこの管理会社でも、24時間の緊急対応は当たり前のように管理項目に入っていることが多いですが、その中身についてはよく聞いておくことが大事です。
▶ 参考:24時間緊急対応サービスの種類と選び方
管理会社と専門業者の違い
建物や設備の点検・メンテナンスには、専門の知識と技術、場合によっては資格を持っていないとできないことが多いです。
エレベーターなどは専門業者でないと触ることができませんので、管理会社は必ずエレベーター会社と協力してメンテナンスを行います。水質検査も国に登録された水質検査機関が行いますし、消防点検も消防設備点検資格者が行います。
管理会社は、社員に資格取得を奨励したり、専門業者と協力して、維持管理業務を推進していくことになります。
大家さんにある程度の知識があるようなら、管理会社を経由せず、エレベーターや消防設備、水質検査などの専門業者に直接発注することも可能ですが、分離発注のいちばんの弊害はやはり、窓口業務と監督業務です。
なにか起こった際には、入居者対応や業者手配等、大家さんが窓口となって率先して初期対応をする必要がありますし、業者に適切な指示を行って対応してもらわなければなりません。
それがむずかしいようであれば、少し割高になってもメンテナンスをしっかり行ってくれる管理会社に業務委託をするべきでしょう。
報告業務
簡単なチェックシートにレ点を打っただけの点検報告書もあれば、写真付き報告書、修繕の提案書をつけて報告をする会社までさまざまです。
見てるだけ、という点検ではあまり意味がないかもしれません。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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