テナントリテンションの具体的な方法
バスタブの栓を抜いたままお湯を入れ続けていても、水道代がかさむばかりでなかなかいっぱいにはなりません。
しかも最近お湯の出が悪くなってきたようです。
満タンにしたければ、底に空いている穴をなんとか埋めなくてはいけません。穴を埋めるにはどんな方法があるのでしょうか。
▶ 参考:テナントリテンションとは
1.住み心地の向上
賃貸住宅は多くの時間を過ごす暮らしの場ですから、住み心地の良し悪しは満足度に直結します。
それは最新の住宅設備を備えたラグジュアリーな暮らしでないとダメ、という意味ではなく、共同住宅における日常のささやかな不満などを溜めこまないようにする工夫です。
例えば、
- シャワーの出が悪い
- 隣や上階の物音がうるさい
- ゴミ置き場がいつも荒らされている
- 集合ポストがチラシゴミで満タン
- 共用部の清掃が行き届いていない
- クレームをいれても対応が遅い …などの不満です。
このような日常的な不便さや不快さは確実に入居者の満足度を下げて、引越しを考える動機になります。
このような状態を改善するためには、
- なにか気づいたことや困ったことがあったらすぐ電話などができる対応窓口を用意しておく
- 適正回数の清掃と物件のチェックを行って物件が荒れないようにする
- 入居者アンケートなどを実施して現状を把握できるようにする
などの管理体制を強化することが必要になります。
管理会社に委託しているからちゃんとやっているだろう、と甘く考えていると危険です。
大家さん自身も定期的に物件を見に行って担当者とこまめに連絡を取り合うなど、積極的な関与が大事になります。
2.緊急トラブルやクレームへの対応
真夏の暑い日にクーラーが壊れた!
いきなり給湯器が壊れて風呂に入れない!
などの緊急を要するトラブルやクレームは、対応を間違えると一発で退去につながってしまうことがあります。
のんびり相見積をとっている暇などありませんし、海外旅行中で連絡がつかなかったから対応できなかった、は言い訳になりません。
いつなんどき入居者の生活に支障が出るトラブルが起きるかはわかりませんから、いつそうなっても大丈夫なような準備をしておかなくてはなりません。
どうしても即時対応できない場合でも、5W2Hでこまめに進捗報告を行っておけばそこまで問題が大きくなることはありません。
3.更新時の対応
関東や京滋エリアなどの更新料が必要な地域では、2年毎の更新時にいちばん退去リスクが高まります。
更新時には、家賃1~3ヶ月分の更新料、0.5ヶ月分の更新事務手数料、そしていつもの家賃がいりますので、更新月は家賃の2.5~4.5ヶ月分のお金が必要になります。
家賃6万円の部屋でも15~27万円になりますから、かなりの負担感があります。
インターネットの不動産ポータルサイトを検索すれば、敷金礼金ナシ!フリーレント付!などという売り文句の物件がたくさん出てきますから、一気に引越し機運が高まってしまいます。
更新料がないエリアでも、更新は引越しを検討するタイミングであることに違いはありません。
情報の検索と比較検討が容易な今の時代、うかうかしていたらいつの間にか退去につながってしまうことになります。
入居者が次の引越し先を決めてしまってからではなにもできませんから、そうなる前に更新したらこういう特典がありますよ、などの告知をしなくてはいけないでしょう。
例えば、更新料の割引、住宅設備の追加や交換、ハウスクリーニング・エアコンクリーニング、その他ギフトなどを行うことが多いようです。
更新料を1ヶ月請求して3ヶ月空室になるくらいなら、更新料はあきらめて長く住んでもらった方がいいですよね。
インターフォンをカラーモニター付きに変更すれば、物件価値自体が上がることになりますし、エアコンクリーニングをプレゼントすれば、故障が防げて寿命が延びるかもしれません。
これまでなかった費用を負担することになると、損した気分がするかもしれませんが決してそんなことはありません。
4.コミュニティの形成
最近では、入居者が自由に使えるガーデンスペースやフリースペースなどを設けて、イベントを行ったりパーティーを行うコミュニティ型賃貸住宅が出てきました。
または、入居者は格安で利用できるカフェや食堂を併設したり、DIYができるワークスペース、マンガ喫茶のようなラウンジがあるものもあります。
ここまでの対策はなかなか難しいですが、顔の見えにくい賃貸住宅の大家さんと入居者同士が、顔の見える関係になっていくことで退去を防ぐという方法もあります。
究極のテナントリテンションだと思います。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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