管理委託のポイント 4.契約更新業務・解約業務
入居後2年おきにくる契約更新の手続きと、退去の手続きも管理業務のひとつです。
これらの業務は、賃貸借契約の仲介業務と混同して考えがちですが、契約を仲介した業者が当たり前に行う業務ではありません。
更新や退去の清算は入居者の金銭負担を伴うことが多いため、トラブルが発生しやすい業務でもあります。
トラブルを回避しようとして入居者の意向を聞きすぎると、本来、入居者が負担すべき費用まで大家さんが被ることになります。管理会社の折衝能力が求められます。
賃貸借契約の更新業務
契約更新の事務手続きは、更新料のある地域・ない地域で取扱いがかなり異なります。
手数料のとれないエリアでは、更新事務はタダ働きになることが多いため、管理会社の積極的な関与は期待薄です。大家さんが費用負担をするか、自ら更新事務を行うことになります。
更新時には家賃の増額、または減額の交渉を行うこともあります。
しかし昨今の状況では、増額交渉ができる物件は稀で、むしろ減額交渉が入る可能性の方が圧倒的に高いと思われますから、管理会社の折衝能力は重要です。
また、定期借家契約を締結している場合は注意が必要です。
主な契約を定期借家契約にしている管理会社以外では、定借の更新業務を数えるほどしかやったことがないため手続きが不慣れです。
契約満了の告知や再契約・解約の手続きを失念してしまうなどのミスが発生することがあります。大家さん側でも時期の管理を行っておく方が安心です。
▶ 参考:賃貸借契約の種類とメリット・デメリット
▶ 参考:賃貸借契約の更新とは
賃貸借契約の解約業務
賃貸借契約が更新されなかったり入居者の退去予告があったときには、解約の事務手続きをします。
賃貸借契約上では退去予告は1ヶ月前と定められていることが多いので、入居者から退去の受付を行った日(電話で受け付けた日、もしくは解約通知書の日付)から1ヶ月後を解約日とすることが多いです。
解約日が家賃の発生する最終日になりますから、前受けしている家賃はこの日を基準にして日割り清算します。
解約日の確定と合わせて、退去日、退去立会日と時間の調整を行います。
退去日とは実際に荷物を運び出して引越し作業が完了する日、退去立会日は空になった部屋で双方立会いの元、室内点検、修繕箇所の特定、責任範囲の確定を行う日です。
退去日は解約日と同日か、それより前になります。
多くの場合、荷物運び出しが終了する時間に合わせて立会いも行われます。
▶ 参考:賃貸借契約の解約
退去立会い業務
退去立会い日時には、入居者・大家さん(代理の管理会社)の双方が部屋に集まって、室内の最終点検をします。
残置物がないか、欠損物がないか、修繕が必要な部分の特定、入居者の過失割合などをチェックして、費用負担を確定させていきます。合意がとれたら退去清算書を作成し、入居者の記名・押印をもらうことになります。
退去立会い業務は、気が弱い人には向いていません。
「この部分の過失はあなたにあります!」と、ある程度ビシッと言い切れる人がやらないといけません。
「あ~…どうでしょう…大家さんに聞いてみますぅ~…」などと対応すると揉めます。
エアコン未設置の部屋だと、真夏は灼熱ですし、真冬は極寒ですし、退去者は1円でも多く返してもらおうとピリピリしていますから、ストレスの大きい仕事のひとつです。
正直に言って、退去立会い自体は全く儲かりませんし、イヤな仕事です。
その後のリフォーム工事の受注を見込むからこそ、管理会社はがんばって大家さんに有利になるような交渉を行います。
当然ですが、立会いだけやらされて工事を他に発注されるといい気分はしませんから、適当にやるようになります。そうなると退去立会いは、工事を発注する業者に任せた方がいい、もしくはご自身で行うべきでしょう。
▶ 参考:退去立会いと清算
敷金の清算
立会いで費用負担が確定したら、敷金を清算します。
日割り家賃や未納分の水光熱費、滞納家賃、修繕負担分などと預かっている敷金をプラスマイナスして、余れば入居者に返金、足りなければ支払いをしてもらいます。
その場で現金清算することはあまりないと思います。後日、振込で対応します。
リフォーム工事の手配
管理会社は、次の入居募集を鑑みながらリフォーム工事の提案を行います。
適正家賃での募集活動のために必要な、最小限の工事提案を行えるかが管理会社のウデの見せ所です。
工事監理能力もチェックポイントです。
特に繁忙期は、ほんの数日の遅れが入居募集の致命的なロスになることもありますので、可及的速やかに内見可能な状態にもっていかなくてはいけません。
一般的な原状回復工事程度であれば1週間以内で仕上げられなくてはいけませんが、品質に問題がありすぎて、その後のクレームが頻発するようでもいけません。
▶ 参考:賃貸住宅のリフォーム
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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