入居者に選ばれるための商品化

商品化というのは、【物・サービスなどを商品として取引され得るものにすること】です。

賃貸住宅でいえば、リフォームをして清掃をして、家賃を決めて、入居可能状態にすることです。

入居募集活動ができる状態になっていれば、広義の意味での商品化はできていると言えます。

 

しかし、原状回復工事をして、即入居可の状態にしさえすればすぐに入居が決まるかというと、なかなかそううまくはいかないことが増えてきました。それはなぜでしょうか?

広告宣伝などのプロモーション不足も原因のひとつだと思いますが、もうひとつ、大きな原因としては需要と供給のバランスを読み間違えた商品化が行われていることが多いからです。例えば、

  • ワンルームマンションの供給過多エリアで3点ユニットバスの物件とバストイレセパレートの物件が同じ家賃で募集されていたらどちらが選ばれやすいでしょうか?
  • 閑静な住宅街のファミリー物件で、駐車場がない物件と2台確保可能な物件があったら、どっちを選ぶ人が多いでしょうか?

おそらく、どちらも後者の方が先に決まっていくような気がします。

募集活動は一生懸命やっているし、内見の予約や連絡はそこそこ来ているのだけど、決まらない。という時は、競り負けている可能性が高いです。【選ばれるための商品化】を行わなくてはいけません。

 

商品化のための投資

選ばれる物件にするには、なにかしらの点で競合に勝てる優位性をつけたり差別化をすることが大事です。

  • 例えば家賃?
  • 例えば入居特典のプレゼント?
  • 設備の取り替えや内装のリノベーション?

家賃相場が5万円のエリアで3万円で募集すればすぐ決まるかもしれませんし、500万円くらいかけて大改装を行ってもいいですね。

でも、賃貸経営は慈善事業ではなく営利事業なので、あまりにも費用対効果に見合わない投資はできません。逆にいうと、単体の事業として【できるだけ少ない投資で、最大の効果を得たい】ものです。

  • 2000円の値下げでよかったのに、5000円値下げしてしまった。
  • 20万円の投資でよかったのに、100万円の投資をしてしまった。

そのようなことで後から後悔するくらいなら、そうする前にそのラインを見極めておくべきです。

そのために必要なのはやはり、市場調査です。刻々と変わる市況と自分の物件の立ち位置を確かめて、その時々に必要な施策を打っていくことになります。

▶ 参考:入居募集のための市場調査とリサーチ

 

具体的にどのような施策を行うか

もっとも手っ取り早いのは、家賃の値下げやフリーレントの付与などの賃貸条件の変更ですね。敷金や礼金の変更などを行って初期費用の軽減を図ることも多いです。

金銭面の条件変更以外にも、ペット可にしたり、外国人や生活保護受給者の入居など、受け入れる範囲の変更を行うこともあります。

住宅設備の増強や内装のリフォームもよく行われます。

原状回復で入居が決まっていた時代は、内装のリフォームで悩むこともなかったのですが、最近は間取りや素材などを細かくチョイスしてインテリア性を高めたデザインリフォームが流行っています。リノベーションと呼ばれることも多いですが、このようなデザイン性の高いリフォームは思うよりも難しいです。

アクセントクロスを貼るだけ、と思われる大家さんも多いのですが、これがなかなか、部屋全体の調和を崩してしまって逆にダサイ…ということも結構多いです。クロスのカタログなどを見て選んでいるときはいい部屋になりそうだと思うのですが、出来上がってみるとダサいのです。賃貸のリフォームを請け負っている業者は、基本的に原状回復の会社が多いですから、デザインの勉強はしていません。業者選びは重要です。

投資をするという意味では、仲介店などに支払う広告費(AD)の増額を考えることもあります。【商品化】とはいえませんが、仲介店に部屋の客付を依存している限り、カンフル剤として効果が高いことも事実です。

モノとしての価値を高めるリフォームは「投資」で、家賃を下げることは収益性を下げるだけ、ADに至ってはただの「消費」だ、という考え方もありますが、賃貸経営は長く続く事業ですから、その時々で必要となる施策は変わるものです。経営者として、その時に「必要だ」と思うものを選択するだけです。

 

最後の最後まで手を抜かずに

手塩にかけて商品化を行って、そこで満足してはいけません。

地味に入居に響くのが内見時の清掃不備です。リフォーム後に必ず清掃はしているはずですが、人が住んでいない部屋というのは想像以上に汚れます。

部屋の隅に虫の死骸などは論外ですが、床がホコリだらけで足が真っ黒、とか水回りの封水が切れて下水臭い、などは空室あるあるの最たる例です。もし可能であれば、換気も兼ねてこまめに清掃に行くようにするといいでしょう。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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