入居募集のやり方
通常、賃貸物件の入居契約は、大家さんから不動産屋(宅建業者)に頼んで募集活動(広告など)をしてもらい、入居者との契約の手続きも代行してもらうことが多いです。それらの行為の代償として、大家さんは宅建業者に仲介手数料やADを支払います。
しかし、自分の所有する物件の賃貸借契約を大家さんが入居者と直接行うことは、法律違反ではありません(宅建業法に抵触しません)。
大家さんが自分で契約まで行えば、手数料はゼロです。
空室率の高いエリアなどでは不動産屋に支払う手数料が高騰し、なんとか節約できないかと自分で入居募集を始める大家さんも増えてきました。入居募集の基本と注意点を考えてみます。
1.大家さんが自分で募集も契約も行う
大家さんが自分で入居者を見つけて、自分で契約締結まで行うことは可能です。
これはもう宅建業者ではないだけで実質不動産屋さんだと思いますが、本気でやろうと思えばやってやれないこともないと思います。
最近は大家さんと入居希望者を直接マッチングするポータルサイトなどもありますから、そこから反響を取って、条件交渉を行って、契約書を作成して、判子をいただければOKです。
しかし、物品やサービスの売買ならまだしも、賃貸住宅は生活に密着(というか生活そのもの)していますし、単価も高い契約ですから、なにかとトラブルになりやすいサービスでもあります。
契約内容に不備がないように注意を払っておく必要がありますし、家財保険や家賃保証会社との契約も自分で手配しておかなくてはいけません。なにかあっても仲立ちしてくれる人はいませんから、少々のトラブルには自力で対処できる大家さん向けの取引です。
2.1社の不動産屋に専任で任せる
実務の中で「専任」と呼ばれることが多い入居募集方法です。
賃貸ではあまり使われる表現ではないですが、いわゆる「両手取引」と言われるもので、大家さんが任せた1社だけが入居者の募集も契約も行うという取引です。
1社専任で任せるので、力を入れて募集活動をしてもらえるというメリットと、1社しか窓口がない(入居希望者との接点がない)ので間口が狭いというデメリットがあります。
仲介を専業でやっている会社は、他社に契約を取られる心配のない専任で仲介をやりたがります。大家さんからも入居者からも手数料を取れるので、仲介会社が一番儲かるやり方です。
3.元付けは1社に任せて客付けを複数の会社に頼む
多くの場合、家賃管理業務などを任せている管理会社を元付け(問い合わせ窓口)にして、入居者の募集と契約は複数の客付け会社に一般でお願いするという取引です。
複数の会社で募集活動を行いますので、露出が高まり反響数を取りやすいというメリットがありつつも、入居者を決められなければ客付け会社はタダ働きになってしまうので、本腰を入れにくいというデメリットもあります。
この取引の場合に大家さんがチェックしておいた方がいいことは、大家さんが支払う広告費(AD)をどこが取る契約になっているかです。
元付けが取ることも多いようですが、できれば全部客付けに渡した方が「両手取引」分の手数料収入になりますので募集活動のモチベーションは上がります。
ここでのポイントは、元付け会社(管理会社)を仲介手数料が主な収入源の仲介会社にしないことです。管理が本業の会社が元付けであれば、同意は得られやすいでしょう。
4.複数の不動産屋に一般で任せる
自主管理の大家さんはこの方法で募集活動を行っていることが多いのではないでしょうか。
「一般」「一般募集」などと呼ばれることが多い入居募集方法です。
窓口になってくれる管理会社(元付け)がおらず、空室確認や内見の予約、カギ場所の確認、申込みの受付、部屋止めなどの連絡は大家さんが自分で複数の仲介店とやり取りすることになります。
前記の3も一般募集の内ですが、元付け会社が客付け会社とのやりとりをすべて引き受けてくれる点が違います。
すべての情報がリアルタイムで自分の元に入ってくるので迅速な対応が可能ですが、繁忙期などは電話が鳴りっぱなしで遊びにも行けない!なんてこともありえます。
電話に出られなくて空室確認ができなかったり、条件交渉が整わなかったりすると、他の物件に流れてしまい大きな機会ロスとなってしまうこともありますので、専業大家さんでなければ難しいかもしれません。
結局どの募集方法が優れているのか?
入居募集のやり方にも、大家さんの経営スタンスによって様々な意見があります。
- 専任で1社に任せた方がしっかりと仕事をしてくれるので、そのほうがいい。
- 空室が増えてきて、1社じゃ情報の拡散力が低い。一般で広く募集したほうがいい。
- 大家専業ではないから随時の電話対応が難しい、管理会社に一次対応を任せたい。
- 即断即決で入居者を逃したくない、伝言ゲームになるのは嫌だから仲介店と直接やりとりしたい。
どれも間違いではありませんので、やり方自体に優劣があるわけではありません。自分に合ったやり方を選択するだけです。
しかし例えば、いくら専任で頑張って募集活動をしてくれたとしても、部屋に商品としての競争力がなければ決まりにくいことには変わりありません。または、たくさんの業者に任せたからと言って、その後のプロモーションに難があれば反響に繋がりません。
入居募集は募集の方法だけではなく、マーケティングや商品化、その後のプロモーション(広告宣伝)や内見案内まで含めてトータルで考える必要があります。
▶ 参考:入居募集のための市場調査とリサーチ
▶ 参考:入居者に選ばれるための商品化
▶ 参考:インターネットを活用したプロモーション
賃貸の入居募集・契約に関わる文言の定義
賃貸の場合、売買の実務で使われる「専任」「一般」「両手」「片手」などの文言の意味合いが、宅建業法上で定められている言葉の定義などと一致していないことがままあります。
同じ単語を使っていても、売買メインの会社・賃貸メインの会社・管理メインの会社で意味合いが違っているケースがとても多いので注意が必要です。
また、地域によっても言い回しや慣習が大きく異なります。できるだけリアルな意味で伝わるように記述したいと思っているのですが、おかしい点があればお知らせいただければ幸いです。
▶ お知らせはこちらまで:CONTACT
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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