テナントリテンションとは

かつてならたとえ退去が出たとしても、原状回復の工事を行って仲介店に募集依頼をかけていれば、多少の交渉はあっても入居は決まっていました。

しかし今は、築浅の物件でも募集に苦労することがあります。

 

なかなか決まらないので仕方なく、家賃を下げたり、敷金礼金を下げたり、フリーレントをつけたり、設備を増強したり、リノベーションをしたりして再募集をすることになります。

やっとのことで入居してもらっても、また退去がでたら…。

家賃収入は下がるし、工事代はかさむし、募集のための広告宣伝費がまたかかる…という負のスパイラルから抜け出せません。そこで注目してほしいのがテナントリテンションです。

 

テナントリテンションとは

テナント=Tenant=借主(入居者)

リテンション=retention=保持

要するに、一度入居してもらった入居者に長く住んでもらうための施策、ということになります。

お店などのサービス業ではポイントサービスが行われています。また、携帯電話などでも2年契約割引など長く使ってもらえるお客様に有利なサービスがあります。

要するにこれらは、一度つかんだ顧客にまた買ってもらう、長く使ってもらう、大事な顧客を他社に取られないための「囲い込み」を行っているわけです。

賃貸経営にはこれまでそのような意識はあまりありませんでしたが、ここ数年で少しずつ変化してきました。入居者が長く住んでくれれば、空室の損失も入居募集にかかる手間や費用も必要なくなるのです。

 

現状と課題

多くの大家さんは、入居募集にかなりの時間とお金と労力をかけておられます。

しかし、無事に入居が決まった後は、毎月の入金確認と更新事務を行うくらいではないでしょうか。

家賃の滞納でもない限り、入居者に連絡することはありませんので、なにごともなければ次に入居者と接点があるのは退去の連絡をもらう時くらいです。

退去連絡をしてくる頃には、もうすでに引越し先の目途が立っていることが多いですから、引き留めようもありません。

時すでに遅し、です。

就職したので勤務先の近くに行きます、結婚をして広い家に引越します、新築しました、など、引越し理由の多くはライフサイクルの変化による前向きな引越しで、いくらテナントリテンションを行ってもどうしようもない退去もたくさんあります。

しかし、管理状態がよくない、クレームをいれても対応してくれない、更新料を払いたくない、などのネガティブな退去はできる限り減らして長く住んでもらった方が、賃貸経営は安定します。

この点をつぶしていかなくてはいけません。

 

テナントリテンションの効果

例えば、月に2回だった清掃回数を3回にする、クレームの対応がしっかりできる管理会社に変える、更新のタイミングでプレゼントや設備の増強をする、などなんらかのテナントリテンションを行っても、1回の費用負担は高くても数万円程度です。

では、その施策が功を奏して入居期間が延びた場合はどのような効果が見込めるのでしょう。

 

① 空室期間がないので家賃のロスがない

当たり前のことですが、退去が出なければ空室期間もありませんし、家賃収入が途絶えることもありません。

家賃6万円の部屋が3ヶ月空室になれば、18万円のロスです。

時期が悪かったりして半年空いてしまったら、36万円のロスです。この大きなロスがなくなります。

 

② 家賃の減額がない

少し前の高い家賃の時期から入居してくれていた人が退去をしたら、原状回復を行ってもかつてと同じ家賃で貸し出すことは難しくなります。

3,000円減額すれば年間3万6,000円の収入減です。

 

③ リフォーム費用がかからない

退去のたびにかかるリフォーム費用がかかりません。

とてもきれいに使ってもらえていたらクリーニング代の数万円で済みますが、クロスを変えればすぐに10万円近くかかりますし、ちょっとリノベーションすれば数10万~100万円単位のお金がかかります。

これがないのは大きいです。

 

④ 募集費用がいらない

自力で入居者をみつけて契約できる方は別ですが、入居募集にはお金がかかります。

仲介手数料や広告宣伝費(AD)、営業マンへの袖の下、手土産のお菓子代…。

少なくとも家賃の1ヶ月分、多いと5ヶ月分くらいの募集費用が必要なくなります。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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