市場調査・商品化は誰の仕事か

お客様に買っていただける商品を作るために行う、市場調査商品化

一般的な事業経営では当たり前のようなことですが、賃貸住宅経営ではあまり行われていないように感じます。

▶ 参考:入居募集のための市場調査とリサーチ

▶ 参考:入居者に選ばれるための商品化

 

「近隣エリアの賃貸需給の調査書や家賃査定、物件のパースや仕様をまとめたパンフレットなんかはアパートメーカーにもらったよ。それじゃいけないの?」と言われるかもしれません。

しかし、メーカーさんや建築会社さんが作ってくれる収支計算書は、大家さんの賃貸経営ための市場調査でも商品化でもありません。

メーカーさんがアパートを売るための営業ツールです。

少し言い方にトゲがあるかもしれませんが、メーカーは建物の施工と引き渡しが終わればそこで履行完了です。

一括借上げをしている場合でも、経営状況・市場環境など如何様にも理由をつけて解約することができます。最終的にその賃貸物件の経営責任を負うのは大家さんしかいません

経営に責任がない他人が作成する収支計算書に、自己の利益のためのバイアスが全くかかっていないとは言い切れないでしょう。そして何より、その時々の市場に変化に応じて更新されなければ意味がありません。

 

管理会社や仲介店はどうか

賃貸経営をしていれば、入居募集のお願いをしている管理会社や仲介店があるはずです。

最近のお客様の動向やニーズの変化、家賃相場など、最前線で働いていますから景況も熟知しています。それらの担当者が市場調査や商品化までやってくれたら手間ナシのような気がします。

 

管理会社の場合

管理会社に管理委託をしていれば、自分の物件の担当者(フロントマン)がいるはずです。

物件担当者なので空室をなくすのが仕事ですし、実際、一生懸命空室率の改善について考えているはずです。

しかし、担当している物件は大家さんの物件だけではありません。大体ひとりで300~500戸の担当物件を持っています。ベテランフロントマンともなれば1000戸以上抱えていることもあるようです。

それだけ担当物件を持っていれば、95%の入居率を保っていたとしても、常に15~25戸の空室を抱えています

しかも、募集活動だけやっているわけではありません。

業務内容は会社によって違いはあるでしょうが、多くの場合、家賃等の入金管理や滞納督促、入退去管理やクレーム対応、工事の手配や告知、立会い、大家さんとの打ち合わせなどなど…。多岐にわたる業務を担当しています。

通常管理委託契約の範囲内で、1戸1戸の綿密な調査は、物理的に少し難しいかもしれません。やって当たり前と思わずに、協力していく姿勢が必要です。

 

仲介店の場合

仲介店は入居者の募集をして賃貸借契約を仲介するのが仕事ですから、部屋を決めるための調査や商品化には積極的に関与してくれそうな気がします。

しかし、仲介店の収入源は仲介手数料(+AD)、すなわち決めてナンボの成果報酬です。

毎月のノルマを抱えて1件でも多くの契約を取らなくてはならない仕事で、時間のかかる調査や工事に注力する暇はありません。

その時に決めやすい物件(もうすでに商品化できている物件)、もしくは、その時に決めたら儲かる物件(ADが多い物件)に傾倒しやすいのは至極当然のことです。

管理委託を積極的に取りに行こうとしている仲介店は、親身に話を聞いてくれるかもしれません。しかし、実際に管理を移管して管理部門の担当者がついたら…前者と同様の対応になりがちです。

 

結局自分でやるしかない

結局、自分の事業のために、市場の環境を調べることも、商品を作ることも、経営者として自分で行うしかない、ということです。

どういうやり方で行うかは、経営方針に依ることになるかと思います。自分で時間を使って勉強して手足を動かして行うこともあるでしょうし、信頼できるプロにお金を払って委託することもあるでしょう。

コンサルティングも含めた企画提案を行ってくれる管理会社はまだまだ少ないですが、BM、PMの視点だけでなく、AMの観点をもった管理会社を見つけることができれば、自分自身の手足を動かす必要はなくなります。

既存の管理会社でも、そのような目線でできることを増やしている会社もあります。管理会社の仕事には、管理委託契約書で約定されている以外の無形のサービスが多く含まれています。集金家賃の3%、5%など、管理料の高い・安いだけでなく、どういう姿勢で大家さんの賃貸経営に関与している会社なのか、という部分もみておくといいのではないでしょうか。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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