インターネットを活用したプロモーション
どういうやり方で募集活動を行うか決めたら、プロモーション(広告宣伝)の方法についても確認しておきましょう。
インターネットの募集サイトを利用するのか、不動産情報誌を使うのか、フリーペーパーを使うこともありますし、物件資料を店頭に貼りだすケースもあります。
商品化を行って、募集活動の仕方を決めても、その情報がターゲットとなる入居検討者に届かなければ意味がありません。
入居者はどんな方法で物件探しをしているか
引越し先までの距離は、転勤や進学などであれば遠距離の場合もありますが、多くの割合で、職場や学校などこれまでの生活圏の範囲内で行われます。
そのため10数年前までは、フリーペーパーや不動産情報誌など地域密着型の紙媒体が入居募集には最有効アイテムでした。
しかし今では賃貸の不動産情報誌はあまり見かけなくなってしまい、代わりにインターネットからの検索流入が大きな集客方法となっています。
入居募集を行うための情報サイトには様々な種類があり、それぞれ特色が違います。
入居者がインターネットで検索するためのデバイスは、かつてはほぼパソコンからの検索でしたが、ここ数年でスマートフォンへ急速にシフトし一気に逆転しています。
スマホの画面はパソコンと比べるとかなり小さいので、スマホ用に見やすく調整したサイトでなければ使い勝手がとても悪いです。この流れを見逃さず、いち早く自社サイトをスマホ対応に変更した会社とそうでない会社とでは、反響に大きな差が出ています。
スマホ対応は今や必須の機能であると言えるでしょう。
どのような特色の募集サイトがあるのか
実際に部屋探しをする人は、どのようなサイトを見て問い合わせをしているのでしょうか。
- たくさんの物件を比較検討して、いちばんいいものを選びたいと思っている人
- この店ならたくさん物件がありそうだ、信頼できそうだ、有名だ、などと仲介店ベースに探す人
- リノベーション済み物件やシェアハウスなど、特色が強い物件を探している人
- 大家さんから直接借りたい、仲介手数料を節約したいと考えている人
探す人の動機に合わせて、各サイトは集客方法にさまざまな工夫を凝らしています。いくつかのカテゴリーにわけてその特色を考えてみます。
大手ポータルサイト
「SUUMO」や「HOME’S」、「at home」など、日本全国の不動産物件情報を集約したポータルサイトです。
仲介店や管理会社は大家さんから預かった空室情報を、これらのサイトに掲載料を支払って掲載します。賃貸仲介をメインで行っている宅建業者で、これらのサイトを使っていない業者は皆無といえるほど広く活用されています。
なんといっても、掲載物件数が圧倒的で(物件数No.1のHOME’Sは780万件以上。H29.6現在)数多くの物件を比較検討して一番いい物件を探したい入居者ニーズに合致しており、多くのユーザーが利用しています。
TVCMなどでもよく見るので認知度も圧倒的に高く、「地名+賃貸」などのワードでインターネット検索をしたら、必ずと言っていいほどこれらのサイトが上位に表示されます。集客力は強いです。
一般の大家さんが、直接空室の掲載を行うことはできません。
不動産の広告は消費者(入居検討者)への誤認を防ぐために、宅建業法や不動産の表示に関する公正競争規約などのルールを守って行う必要があります。
大手ポータルサイトは、それらのルールに則って運営されているため、審査をクリアした不動産屋(宅建業者)経由で掲載をすることになります。
仲介店や管理会社などの自社サイト
ある程度の規模の不動産屋であれば、物件情報を掲載することができる自社サイトを持っています。
自社で管理している物件や、一般で客付け可能な他社物件を掲載していることが多いです。
自社サイトでの集客は、対応エリアや物件数で大手ポータルサイトの情報量にはとてもかなわないため、ネット検索で上位表示させるためにはかなりの工夫が必要で、安定的な反響を取る難易度は高めです。
どうしても反響を取りやすい大手ポータルサイトに注力してしまうため、自社サイトは疎かになりがちで、管理物件やサブリースなど必然性の高い物件を優先的に掲載することになります。
しかし、たくさんの競合物件や競合他社の混在する大手ポータルサイトでは、多くの広告掲載費を投入できる仲介店がどうしても優位になりますから、広告掲載費増額合戦の様相を呈しがちになりますし、疲弊します。
そこで、競合のない自社サイトからの集客に力を入れ始める会社が増えてきました。
専任担当者などを置いて、適切なSEO対策(検索で上位させるための対策)やスマホ対応を行い、情報量豊富にきちんと更新している会社は自社サイトから大きな反響を得ることができています。
特化系ポータルサイト
リノベーション物件専用やシェアハウス専門など、ターゲットを絞った戦略で集客しているサイトもあります。
「リノベーション 賃貸」や「シェアハウス 賃貸」などのワードで検索すると、それらの募集サイトがヒットしてきます。
ニッチな需要に特化しているため、幅広くたくさんの集客はできませんが、ピンポイントに成約率の高い入居検討者にヒットする可能性は高まります。
せっかくこだわったリノベーションを行ったのに、大手サイトでは物件数が多すぎて埋もれてしまう。などのデメリットがありません。
大家さんが自分で広告できるサイト
「ウチコミ!」や「直談.com」など、大家さんが自分の物件を直接掲載できるポータルサイトも出てきました。
長く業界にいるのに大家さんが直接入居募集をすることに対するニーズを感じることができていなかったので、このようなサイトの存在を知ったときは少なからず衝撃を受けました。
今後急速に推進されるとみられる、不動産テックやIoTでも同じような変化を感じるのだろうな、と思います。
しかし、不動産の契約は賃貸であってもそれなりの金額が動くサービスで、トラブルも多いことが世間的にも認知されていますから、直接契約(もしくは交渉)に対する警戒感はまだまだ残っていると思います。
通常のサービス契約のほとんどはBtoCですが、賃貸の大家さんと入居者の関係はどちらかというとCtoCの関係性に近く、フリマのような少額取引ならまだしも、直接交渉が賃貸借契約で標準的な取引形態になるかどうかは未知数です。
賃貸管理業界が、この30~40年で市民権を得るほど発展してきた主因は、直接交渉ができない大家さん側の事情が大きかったためだとも感じます。
大家さんが自分で作成した物件ホームページ
大家さんが自分で自分の物件ホームページを作成して公開し、入居募集を行うこともできます。
今では昔のような専門知識なく、簡単に自分のホームページを持つことができる環境が整っています。
WordPressなどのCMSを使って自作したり、facebookやツイッターなどのSNSをプロモーションツールとして使うこともできます。多少の勉強は必要ですが、それでも全くの素人が数時間で自らの情報を発信出るツールを作成できることは画期的です。
しかし、1~数物件しか掲載していない物件サイトから直接入居募集を行うことは正直かなり難しいです。
まず、数ページしかないような小さなサイトは検索で上位に表示されにくいです。上位には大手サイトが莫大な費用をかけて運営しているサイトがひしめいていますので、ここに食い込むための工夫をしなくてはなりません。
さらには、絶対にこの物件がいい!という動機を促す特色があれば別ですが、多くの入居者は、もっと他にいい物件がないかと回遊するものです。たまたまドンピシャにハマる方に見つけていただくことを祈ることはできますが、物件ホームページ一本で入居募集をすることは無謀です。
でも、大家さんが自己所有物件のホームページを持つことは無駄ではありません。
直接入居者を募集するためのツールというよりは、入居者をつけてくれる仲介店や管理会社への営業のためのツール、業者や大家仲間への名刺代わりに活用して、情報提供や紹介をいただくための間口を広げるツールとした方が利用価値が高まります。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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