データで見る賃貸市場 ~ 競合の動向/日本の住宅ストックと空家数、新築供給の動向

マクロデータはいろんな省庁や業界団体などからいろんなタイミングで発表されています。

業界紙などに目を通していればそれほどのタイムラグもなく、情報に触れることは可能です。

大家さんは情報収集が本業ではないですから、そこまで過敏に目を光らせておく必要はないと思いますが、時流を知って賃貸経営に役立つ何かしらかのヒントを探すことは大事です。

 

このページでは、日本の住宅ストックや空き家数、新築供給の動向、賃料推移などのマクロデータを要約します。

現時点(H29.7)での最新の情報は「平成28年度住宅経済関連データ」を参照ください。ここでは、社会資本整備審議会住宅宅地分科会の資料(第42回第45回)などを引用しながら考えてみます。

 

住宅ストック数の推移

まずは基本的なデータから。

住宅ストック数と世帯数の推移

*参考:住宅関連データ(国土交通省)

 

よく見る住宅ストックの数と世帯数の推移のグラフです。

昭和43年以降、日本では世帯数よりも住宅の数が上回っているということですね。

家が足りないから、知り合いのお宅に間借りやホームレス、みたいな世帯は数値上ではいない計算です。

実際は、住める状態ではない住宅もあるでしょうし、選択の自由もありますから、住宅ストック数と世帯数がぴったり同じ数字になることはないです。基本的に住宅ストックの方が多いのが普通です。

 

空室数の推移

住宅ストック数が多いのが普通とはいえ、需給バランスが崩れ、空き家の数が増えすぎるのも問題です。

空き家数の推移を示したグラフがあります。

*参考:住宅関連データ(国土交通省)

 

順調に空き家数が増え、空き家率が高まってるのがわかります。

しかしその内訳をよく見ると、急激な伸びを見せてるのはピンク色の「その他住宅」です。

その他住宅の主な中身は、賃貸用でも売却用でも別荘でもない、いわゆる普通の自宅です。

郊外の一軒家や田舎の実家など、帰る人がいなくなって空き家になってしまっている家が増えてきており、「空き家問題」としてこの頃よくメディアなどでも取り上げられるようになっています。高経年分譲マンションのスラム化などの問題もよく耳にします。

 

空き家が問題なのは、古い自宅か、賃貸住宅には関係ないな。と思ったら、そうは問屋が卸してくれません。

*参考:住宅関連データ(国土交通省)

 

空き家全体ボリュームの過半数以上は賃貸住宅です。

平成25年住宅・土地統計調査(総務省)によると、日本の持ち家世帯率は61.6%。

賃貸住宅の総数は比率的に4割弱しかないのに、空き家となると半分以上は賃貸住宅ですから、賃貸住宅の空き家率(空室率)の方が断然高いことがわかります。

*参考:空き家の現状と論点(国土交通省)

 

そしてさらに、空き家である既存住宅(要するに自宅)の活用を促進するための様々な施策も始まりつつあり、そのような住宅ストックの賃貸市場への流入も予見されます。

ストックの活用で市場に投入される商品が多様化すれば、競争は激化します。人気物件であり続けるための施策を考えていかなくてはいけません。

 

新築賃貸供給戸数の推移

住宅のストック数、空室率は伸びていく傾向にあることがなんとなくわかりました。

では賃貸住宅の新築着工戸数の推移はどのようになっているのでしょうか。

*参考:平成28年度住宅経済関連データ(国土交通省)より作成

 

新築賃貸住宅の着工数の推移は、姉歯事件リーマンショックの2大危機を経て、じわじわと回復傾向にあります。

その背景で大きく影響を及ぼしていると思われるのは、相続税に係る法改正金融緩和からの低金利です。

都心部では地価も上昇傾向、東京オリンピックに向けて建築費が高騰する中で、「持家」は前年対比3.1%増、「建売住宅」は8.2%増、「分譲マンション」0.9%減と微増微減の中、「貸家」は10.5%増と2ケタ以上の大幅な伸びで、着工戸数を押し上げています。

*参考:2016年建築着工統計調査報告(国土交通省)

 

そして、大手ハウスメーカーは軒並み増収増益の決算発表が続いており、高単価商品の販売が利益を押し上げています。

ハウスメーカーで賃貸住宅を建てる大家さんの多くは地主さんでサブリースを利用します。高品質で空室リスクの少ない商品が売れ筋です。

一方、土地を持たない投資家層向けの土地付きアパート販売業者の業績も好調です。

土地付きアパートの利点は立地を選べる点ですが、住宅性能と収益性は低めになりがちです。

各メーカーさんがしっかり儲けているのと同様に、大家さんの稼ぎが増えることも切に望みます。

 

賃料レベルの推移

賃料相場①~共同住宅賃料指数の推移~

*参考:賃貸住宅市場の実態について(国土交通省)

 

局所的な上下動や好不調は当然のことながら、俯瞰でみると若干の右肩下がり感は拭えません。

庶民が認識できるほどのデフレ脱却感が出てくるまでは、この傾向は続くと思われます。

高経年で競争力の低い物件は、このグラフレベル以上の落差を感じると思います。

 

Follow me!

この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

CONTACT

大家マニュアルでは、より良いサイト作りのために皆様からのご意見や、記事のリクエストなどのご要望を承っています。また、記事中の誤りや疑義に対するご指摘もこちらからいただけますと幸いです。

送信専用の匿名コンタクトフォームです。お気軽にどうぞ