賃貸経営のスタンスを確認する

いまさら何を言っているんだ、とお叱りを受ける程当たり前のことかもしれませんし、お前ごときになにを、と思われるかもしれませんが、あえてお伝えしておきたいことがあります。

賃貸経営は『不動産』が商品です。

当たり前ですよね。でも、その当たり前を意識されていない大家さんも多いように思います。

 

賃貸住宅は「不」動産なので、動産ではありませんから、土地に密着していて動きません。

賃貸「住宅」経営という視点からいえば、土地だけで貸すことはありませんから、必ず居住用の建物があります。建物自体はメーカーの既製品で全く同じ形で建てたとしても、立っている場所によって収益性が変わります。

なんだかとても廻りくどい言い方ですが、賃貸住宅が土地という場所に密着している不動産である以上、ひとつとして同じ商品はありません。

 

賃貸経営はオンリーワン

例えば、アパートを2棟隣接して建てたとしても、片方が南向きで日当たりも良く、駐車場に入るための接道も優れていたら、普通、そちらから先に入居は決まっていきます。

また、アパート2棟を同じ駅から徒歩5分の位置に建てたとしても、片方は急な坂道の丘の上、もう一方は駅から平坦な平地だとしたら、普通、平地の物件から決まっていきます。

立地の悪い物件でいい物件に勝つには、賃貸条件を変更するしかありません。家賃に差をつけたり、初期費用を落としたり、追加の設備を投入したりすることが多いです。

全く同じ建物を所有して同じ金額のローンを支払っていても、建っている場所が違うだけで収益性が変わります。賃貸住宅は、立地が占めるアドバンテージの割合がとても大きい商品なのです。

しかも、一度建設したり、購入したら、建物だけ引っぺがして移転なんてできませんから、手放さない限りは数十年単位で運用を行っていくことになります。

 

確かに都心は有利です。

それだけで大変なアドバンテージがあります。

都心や生活に便利な場所は、土地が稼ぎを出してくれます。建物はどちらかといえば従属的な付加価値です。

しかし、郊外は土地が都心ほど稼いでくれません。土地が稼がないなら、なにで稼ぎますか?

建物で稼ぎを出すしかないですから、そのための取り組みが大変重要になってきます。

世の中に同じ不動産はひとつもありません。

同様に、同じ人間や家族もいません。

賃貸経営は、オンリーワンの商品をオンリーワンのお客様にマッチングさせる事業であると言えます。究極の顧客志向商品だと思いませんか?

 

大家さんだってオンリーワン

それぞれの大家さんの賃貸経営のスタイルにもさまざまな違いがあります。

  • 都心でやる、郊外でやる
  • 自宅の近隣でやる、遠方でやる
  • 日本でやる、海外でやる
  • 単身物件でやる、ファミリー物件でやる
  • 汎用を攻める、ニッチを攻める
  • 新築でやる、中古でやる
  • 1棟モノでやる、区分所有でやる
  • 本業でやる、副業でやる
  • お金を投資する、時間を投資する
  • 土地がある、土地がない
  • 自分で始める、親から引き継ぐ
  • インカムゲインを得る、キャピタルゲインを得る、等々…

オンリーワンの商品をオンリーワンのお客様に提供する大家さんも、当然ながらオンリーワンなわけです。

世の大家さんは皆さん、ご自身の立場・状況・環境・背景・目的・目標・できること・できないこと・やりたいこと・やりたくないこと・好き・嫌い…など、さまざまな要因を加味して、ご自身にとってのベストを模索して賃貸経営をされていると思います。

それぞれの大家さんにそれぞれの要因がありますから、誰もが満足する勝利の方程式なんてあるはずがありません。

経済的合理性がすべてを満たす特効薬ではありませんし、非合理な利他的行為から高い満足度を得られることもあります。

いいか、悪いか、の2者択一ではないのですから、「みんなちがって、みんないい」わけです。

 

自分のスタンスを持つこと

大家さんがもっておかなくてはいけないものは、明確な自分自身の経営スタンスです。

例えば、親から受け継いだ先祖代々の土地を守るんだ、と固く決めたなら、そのためにやらなくてはいけないことを頭をフル回転させて考えてください。

もし他人が、そんな価値のない土地にしがみついていても無駄だ、他に投資しろと言っても無視です。

または、人が見たとき、そんなにリスクが高い投資は危ないからやめろ、と言われたとしても、自分の中に明快な勝機があって、想定しうる最大の損失がでたとしてもリカバーできる目算があるのであれば、おせっかいな助言は無視です。

 

自分のことを自分より知っている他人はいません。

スタンスがないと軸がぶれます。

軸がぶれると、小手先の手段や横やり・回り道に惑わされやすくなります。

  • 業者や他人の言うことを鵜呑みにしすぎないでください
  • 人や過去の成功体験を過信しすぎないでください
  • やり方は大いに試行錯誤すべきですが指針はぶらさないでください

いろいろな方のいろいろな意見や事例を聞くなという意味ではありません。むしろ聞きまくって、自分だったらどうするかを置き換えて考えてみてください。

経営スタンスに完全な正解も失敗もありません。

どんなスタンスでもそれが経営の意向、すなわち、賃貸経営を行うための指標なのですから、それに則って経営戦略を練ってやり方を決めればいいのです。

手法に惑わされることはないです。手段は、あとです。

 

Follow me!

この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

CONTACT

大家マニュアルでは、より良いサイト作りのために皆様からのご意見や、記事のリクエストなどのご要望を承っています。また、記事中の誤りや疑義に対するご指摘もこちらからいただけますと幸いです。

送信専用の匿名コンタクトフォームです。お気軽にどうぞ