賃貸仲介店の選び方
直近の市場ニーズや顧客動向をいちばんよく知っていて、入居募集の強い味方になってくれるのが賃貸仲介店です。
賃貸仲介店の特徴と選び方についてまとめてみます。
賃貸仲介店とは
エイブルやアパマンショップなどの賃貸物件に特化した仲介店は、大体、ある程度の乗降数のある駅前に店舗があります。
大きな駅になると、赤や黄色や緑や青などのカラフルな看板を掲げたたくさんの賃貸ショップが、通りにズラズラっと並んでいます。
お客さんの取り合いになる近接地に密集して出店するのはなぜでしょうか。
お客様が来店するのに便利な駅前だから、というのももちろん理由のひとつですが、わざと近くに配置して「ついで来店」を狙うという理由もあります。
A不動産に来店したけれどどうも気に入らない、じゃあついでに近くにあるB不動産、C不動産に寄って行こう、という回遊客を捕まえるためです。
しかし、インターネットでほとんどの情報が事前入手できるようになった昨今、その回遊客の数が激減しています。
少し限定的なデータではありますが、最近の入居検討者が部屋探しのために訪問した不動産会社の数は平均1.6店舗。
「0店舗(訪問していない)」が9.9%、「1店舗」は46.5%となっており、合わせると5割を超えており、多くの入居者が店舗間の回遊をすることがなくなっていることがわかります。
▶ 参考:2015年度賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(リクルート住まいカンパニー)
それはすなわち、B不動産、C不動産の来店客が、A不動産のみに任せた自分の物件にたどり着く可能性が低くなっていることを意味します。
仲介店に専任で任せるか、一般で広く募集するかは、このあたりのデータも参考にすると良いのではないでしょうか。
賃貸仲介店の得手・不得手
仲介店の仕事は入居の募集と斡旋に係る契約行為の仲介です。
基本的には、商品化された空室に入居者を決めるまでが責任範囲です。
市場調査をしたり、家賃を決めたり、入居後の入居者フォローは厳密に言うと仲介店の仕事ではなく、大家さんもしくは管理会社の仕事です。仲介店が決めやすい、これなら自信をもって勧められる、と思ってもらえるような物件づくりが大事です。
ただ、毎日入居検討者と接して、さまざまな物件を案内している仲介店の営業マンは、エリアのトレンドを一番よく知っていますから、定期的に話を聞きに行ってアドバイスをもらうとよいでしょう。
突然行くと迷惑なのではないか、と遠慮する大家さんもおられますが、自分たちのメシのタネを売りやすいように加工しようとしている大家さんを邪険に扱う理由はありません。普通に伺えばいいと思います。
まずは、店長や社歴の長いベテラン営業マンにアタックしましょう。
稀に、仲介店と管理会社の区別がついていない大家さんもおられます。
本来、大家さんが自分で(もしくは管理会社に委託して)やるべき仕事を、当たり前のように仲介店に押しつけると嫌われます。
仲介店は、賃貸仲介に付随して発生する各業務のサポートはしてくれますが、あくまで「賃貸借契約の仲介業務」が仕事です。善意でやってくれたことを当然のように考えてはいけません。
もちろん、管理委託をしている上での仲介業務、ということであればこの限りではありません。
賃貸仲介店の収益構造
賃貸不動産の仲介店舗の売上の多くは、入居者を決めたときに得られる成果報酬です。
入居者からいただく仲介手数料や大家さんから受け取る広告料(AD)、家財保険や保証契約締結に伴った手数料収入、引越しの斡旋などのキックバックやカギ交換費用、消毒代などのオプション費用が主な売上です。
項目はさまざまですが、すべては入居を決めることができなければ1円も入りません。
手間ひま時間をかけてじっくり接客しても決まらなければタダ働きです。
最短スピードで、最小のアクションで、最大限の効果を得たいというのが、仲介でメシを食べている人たちの本音です。
例えば、紹介したい入居者がいたとき、すぐ連絡がつく大家さんとつかない大家さん、どっちを優先するでしょうか。
空室の商品化を完了させていつでも受け入れ態勢ができている大家さんと、入居が決まったらリフォームするわ、という大家さんはどうですか。
同スペック同家賃でADが多い物件・少ない物件ならどちらを推すでしょうか。
めんどくさい要望が多い大家さんと、ある程度の裁量で任せてくれる大家さんならどちらを選びますか。
そういう商品力以外の部分でも、決まりやすさは変わってきます。
賃貸仲介店を選ぶときの注意点
賃貸借契約の仲介業務自体は宅建業法のルールの中で行われていますので、仲介店ごとで基本的な差はありません。
入居者から受け取る仲介手数料を0.5ヶ月分にするなどの方法で集客効果を高めている仲介店はあります。しかし、契約まで話が進んでいくと、本来入居者が負担する必要のない、カギ交換代や消毒費などを上乗せ請求して帳尻を合わせているケースもあります。
仲介店に客付を頼むときに悩むのが、専任募集にするか、一般募集にするかだと思います。
物件に競争力があり、ネット広告で反響が望めるようであれば信頼できる仲介店に専任で任せた方が契約時に間違いがないと思いますが、少し物件力が低めだなと感じるのであれば、一般にして広く募集し、入居者との接点を増やすこともひとつの方法です。
大手はバンバンCMなども行っていて集客力は高いですが、フランチャイズに加盟したばかりという賃貸未経験の会社が看板を掲げていることもありますし、地場の小さな仲介店でも、地域のことを誰よりもよく知っているベテラン会社かもしれませんから、一概にどういう会社がいいとも言い切れません。
一度決めたら変えられないわけではないのですから、いろんな会社を使ってみたらよいと思います。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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