反響と内覧を成果につなげるためにできること
入居募集の広告を出して反響をとり、内覧の日時を定めて案内し、入居契約までもっていくのは仲介店の仕事です。
大家さんは仲介店から申し込みの電話があるまで、指をくわえて待っていることしかできないのでしょうか。
反響率を高めたり、内覧後の成約率を高めたりするためにできることはないのでしょうか。
賃貸物件の決め方の変化
かつて不動産情報誌などの紙媒体が広告の主流だった時代の反響は電話だけでした。
狭い広告スペースに間取りと写真一枚、家賃などの限られた情報しか掲載されていませんでしたので、入居検討者は不動産屋に電話して物件の詳しい情報を聞き、自分の希望を伝えて、部屋の内見予約を取って来店するのが通常でした。
不動産屋は来店までに、入居検討者の希望に沿った他の物件もいくつか用意しておき、一度に2~3件、場合によっては4~5件の部屋を案内しました。
その中にはいわゆる「キメブツ」があって、うまく落としどころに持って行く(ハメる)のが営業マンの腕の見せ所でした。
しかし、インターネットが募集広告のメイン媒体になってから、仲介店の仕事は着実に変化しています。
まず、入居検討者からの反響はメールが中心になりました。
顔も見えない、声も聞こえないやり取りの中で、ある日突然音信不通になったり、来店予約までにかかる手間が膨大になったりしました。さらに、紙媒体と違って、ネット広告は掲載できるスペースに制限がありませんから、より多くの情報・写真・動画を提供することが求められました。
たくさんの情報をクリックひとつで検索できるようになり、下手したら仲介店の店員よりお客様の方が物件情報に詳しい、という笑えない事態も普通に起こっています。
同時に情報の正確性も求められるようになり、物件名や住所、地図なども掲載されるようになりましたので、かつてのように「詳しいことはお店でお伝えしますから、とりあえず来店してください」という営業トークは使えなくなりました。
最近では、来店すらしてもらえず、物件の目の前でお客様と待ち合わせをし、部屋内の案内が終わるとそこで解散、申し込むかどうかは連絡待ち、というケースもあるようですが、これでは時間と手間だけとられた案内損になりかねません。
そのかわり、入居検討者はたくさんの情報をネット上で検索して、比較検討して、もうある程度絞り込んだ状態で内見の予約に至っているという側面もあります。そのため、もう心の中ではほとんど決まっていて、最終的な確認のためだけに内見したいというケースも多く、案内5分で即申し込みとなることもあります。
このような環境変化の中で、大家さんは入居募集をスムーズに行うため、どのようなフォローを行うことができるのでしょうか。
反響をとるために行えること
賃貸仲介店の多くは、複数の不動産情報サイトに広告を掲載しています。
▶ 参考:インターネットを活用したプロモーション
SUUMOも使うし、HOME’Sや自社サイトも使う、反響がいいと聞けば他のサイトも使ってみるでしょう。
物件情報の登録や更新、写真や動画の撮影、空室確認や掲載・非掲載の指示など、行わなくてはいけない作業は膨大です。
ひとつの部屋情報をAサイト、Bサイト、Cサイト…と、3回も4回も入力する手間は果てしなく、大変な労力のかかる作業です。
おとり広告に対する規制も厳しくなっており、悪質だと判断されると業務停止や免許取り消しになることもあります。ついうっかりの空室掲載落としモレがおとり広告とみなされる可能性もゼロとは言えませんので、空室管理は煩雑です。
最近では物件コンバート機能のある業者間流通システムの普及も進んでいて、ひとつ入力したら他のサイトにも自動的に反映される仕組みも整いつつありますが、細かい仕様は各ポータルサイトごとに異なっていて、やはりきちんとした情報を掲載するためにはひとつひとつのサイトチェックが欠かせません。
この作業は仲介店にとって大きな負担ですが、作業自体を大家さんがお手伝いすることはできません。
しかし、掲載するための空室情報を正確に、リアルタイムに、写真などの情報量を多く、お伝えすることで間接的にサポートすることは可能です。
- 募集条件を変えたのに、先方から空室確認の電話がかかってくるまで放置していませんか
- リフォームをしたのに間取り図面はない、現地で見て確認して、と気軽にいっていませんか
- 入居が無事決まったら、決めてくれた仲介店以外にもきちんと募集終了の連絡をしていますか
家賃条件や募集条件を変更したら速やかに伝える、リフォームして間取りが変わったらすぐに間取り図を作成して送る、写真や動画の撮影も率先して行って提供する、などのフォローで仲介店の手間を減らすことができますし、間違った情報や見栄えの悪い写真のまま募集され続けるリスクを減らすこともできます。
内見をスムーズにするために行えること
入居検討者が内見する部屋数自体が減っている現実の中で、1件1件の内見の重要度は増しています。
*参照:『2015年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)』
もうあらかた決めるつもりだったのに最終確認のための内見でガッカリしてやめた、なんてことになってはもったいなさすぎます。
- カギの受け渡しはスムーズにできるようになっていますか?
できればダイヤルロックなども含め現地にある方がいいですが、紛失などのリスクもないとは言えないので判断は分かれます。スマートロックなども安価で使いやすそうなものが出てきましたので、検討の余地はあります。
- 室内の状態は万全ですか?
清掃やリフォームの不備は一番のガッカリポイントです。あとから手直しをする予定があるのなら、必ず伝えてもらえるように仲介店に情報提供しておきましょう。
大切なのは、どのような対処をしておけば仲介店がやりやすいか、という視点です。決めてくれる人の立場に立ったサポートを心がけましょう。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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