大家さんの種類によっても、賃貸経営の目的と手段は変わる

世の中には安易な「成功マニュアル」や、再現性の低い「成功体験談」が多くあふれています。

それらの多くは、万人に有効な特効薬のような口ぶりでサービスや商品をアピールしています。

しかし、ぴったりハマって効く人もいれば、まったく効かない人もいます。

 

例えば、メーカー施工の新築マンションサブリースから始める賃貸経営、地方の築古木造アパートへの投資、新築ワンルームマンション投資…みんなが同じようにはじめても、成功する人・しない人が出てきます。

昔からの地主大家さんが、バリバリの不動産投資家さんの運営スタイルを真似してもうまくいくかどうかはわかりません。また、キャッシュフローに余裕がない個人オーナーさんは、ある程度の余裕がある法人オーナーさんのような運営スタイルは取れません。

ご自分の属性、目的、目指す目標を見据えた事業戦略、手段の選択が必要です。

 

大家さんの種類

生鮮食品を扱うお店の中には、魚屋さんもあれば肉屋さんもあります。八百屋さんや果物専門店もありますよね。

それと同様に賃貸住宅の貸し主である大家さんにも、いくつかの種類があると思います。

 

1.不動産投資家系 個人オーナーさん

将来の資産形成やダブルインカムを目的として賃貸経営をやるために勉強し、土地・建物を購入して始めた大家さん。

アクティブで自らDIYリフォームを行うなど行動力があり、情報収集力に長けている。

2.高属性 個人オーナーさん

センセイと呼ばれるような仕事をしている高収入な本業がある大家さん。

賃貸事業には疎く、本業でたくさん取られる所得税の節税対策のためにすすめられて不動産を買うケースが多い。

3.事業主系 個人オーナーさん

創業社長など、なにかの事業で成功して資産を築いたため、資産運用方法のひとつとして賃貸経営を始めた大家さん。

資産運用コンサルタントや税理士などがバックアップしていることが多い。

4.地主系 個人オーナーさん

もともと地主の家に生まれて、空いている土地の有効活用や相続税対策で賃貸経営を始めた大家さん。

田んぼの真ん中になぜかアパートが…とか、大手ハウスメーカーの一括借り上げは典型的なパターン。

5.地主系 2代目オーナーさん

4のお父さん(お母さん)が亡くなって、賃貸住宅を相続した息子さんや娘さん。

実家の資産管理状態や賃貸住宅の経営状態をまったく知らないまま引き継ぐケースも多く、内情を知ってびっくりすることが多い。

6.賃貸専業 法人オーナーさん

賃貸を「業」として行っている法人大家さん。

居住系よりも、ビル・商業施設・大規模テナント・土地などの大型の取引や開発にウエイトがあることが多い。

7.賃貸兼業 法人オーナーさん

本業は別にあるが多角経営などの目的があったり、もしくは斜陽で余ってしまった工場跡地や社宅などを活用して賃貸経営を始める法人大家さん。

本業を廃業して賃貸経営に移行するケースもある。

 

その他、金融投資家系 個人オーナーさんなど、株や投資信託のような金融商品として不動産の運用を行う方もいらっしゃいますが、そういう方々は実物不動産のリスクを忌避してJ-REITなどの証券化された商品を購入されることが多いと思われるため、【 大家さん 】とは呼ばないことにします。

 

賃貸経営の目的

上記のように大雑把に区分しても、大家さんを始めることになった目的や動機などの生い立ちはさまざまです。

相続税対策で始めた大家さんに出口戦略を説いてもピンとこないでしょうし、DIYが大好きな大家さんに事業承継や資産の評価減の話をしても盛り上がらないかもしれません。

当たり前のことですが、それぞれ大家さんの経営スタンスは違います。

一昔前までは、必要な情報は自分で見に行って、聞きに行って、お金を払わなければ得られないものでした。しかし今では、インターネットで少し検索するだけで数えきれないほどの情報を得ることができます。

中には怪しい情報もあります。

賃貸経営は大きなお金が動きますから、玉石混交、さまざまな事業者さんが大家さんのマネーを狙っています。

もちろん、正しくて有益な情報も本当にたくさんあります。でも、「今の自分にとって」有益で必要な情報かどうかは精査しなくてはいけません。

自分はなんのために賃貸経営をしているのか、その目的を達成するために必要な情報はなにかを取捨選択する必要があります。

正しいこと、有益なこと、必要なこと、はその時々のフェーズで変化します。かつて正しかったことが、今では粗悪にもなりますし、今不必要だと思ったとしても、将来重要な施策であることもあります。

 

目的によって取り得る手段は異なる

それはすなわち、Aさんにとって最適な方法がBさんにとってもベストであるとは限らない、ということです。

みんなが同じやり方をすればみんなが成功するのであれば、世の中みんな成功者です。

不動産は唯一無二です。

隣同士のマンションでも、北向きか南向きか、管理状態の良しあしなどさまざまな要因で、経営状態は大きく変わることがあります。

ネットで得られる手法だけを鵜呑みにせず、しっかり自分の物件を見て、管理会社や仲介店に話を聞いて、大家さんの会などに参加してたくさんの人に会って事例に触れて、自分の事業戦略を立てなければなりません。

事業を成功に導くために必要なものを、他人が何の見返りもなくお膳立てしてくれることは(まず)ありません。

万人に有効な解もありませんし、確実な失策もありません。安易な成功には隠れたリスクもあるかもしれません。ご自身の経営スタンスを明確に、その目的を達成させてください。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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