マーケティングの基礎を知っておこう

マーケティングという言葉を検索してみると、ウィキペディアには以下のように解説されています。

企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。

引用:ウィキペディア

噛み砕くと「お客様が欲しいものを作って、できたらちゃんと宣伝して、お客様に喜んで買ってもらう」ということですよね。当たり前のようなことですが、これがなかなかできていないような気がします。

賃貸経営のお客様は入居者です。その視点で少し考えてみます。

 

お客様が欲しいものを作る

賃貸経営で商品に当たるものは「居室」であることは疑う余地もないです。

でも、その部屋を借りるのは壁と床に囲まれたハコ自体が欲しいわけではなくて、「ゆっくりくつろげる空間」であったり、「子供がすくすく育つ環境」であったり、「駅まで1分の利便性」であったりするわけです。

そのモノ自体ではなく、そのモノがもたらす「価値」にお金を払うことになります。

誰もが嫌がる鉄道高架横のマンションを、鉄道マニアの方向けに大改造して人気物件に変身させた、なんていう事例はまさに好例です。そんなニッチな事例はなかなか真似できるものではありませんが、しかし手をこまねいていても選んではもらえません。なぜなら、同じような価値を提供している競合のお部屋があるからです。選んでもらうためには「差別化」を考える必要があります。

差別化には3つの方向性があります。

1.価格力

2.商品力

3.密着力

まずわかりやすい差別化は価格です。バラ釜で和式便器…でも、超圧倒的に安い!安さに価値を見出す方に選ばれます。

次に商品力。同じ家賃なのに他の物件よりも20㎡も広い!とか、賃貸住宅とは思えないデザイン性や機能を備えている!など商品の魅力で差別化します。

最後は密着力。密着力というのは、自分のことをよく知ってくれている、いつもよくしてくれる、など、同じ商品を買うなら絶対にあの人から!と思ってもらうことです。

大家さんは入居者と直接やりとりをする機会は少ないですから、入居者との密着度が差別化に繋がるかというと難しいかもしれません。しかし、お部屋という商品を入居者に薦めてくれる管理会社や仲介店と密着度を高めることはできます。比較検討されやすい競合物件よりも、自分の物件を推薦してもらえるような「えこひいき」が差別化になります。

▶ 参考:入居募集のための市場調査とリサーチ

▶ 参考:入居者に選ばれるための商品化

 

お客様にきちんと宣伝する

いくらいい商品を持っていても、それを欲しいと思う人へ知ってもらうことができなければ売れません。

どうやって知らせますか?

ポータルサイトへ掲載してもらうことは大事ですね。各不動産屋の自社ホームページや現地の物件看板などでお知らせすることも必要です。自分で物件ホームページを作ってアピールしてみるのもひとつの方法です。

掲載するだけで充分ですか?

たくさんの空室情報の中から、自分の物件を見つけてもらわなくてはなりません。間取り図や設備の情報は最新のものに更新されているでしょうか。周辺環境などのエリア情報は十分ですか。写真や動画をたくさんアップして暮らしのイメージを膨らませるような訴求になっていますか。プロモーションが不十分では情報を適切にお伝えすることができません。

▶ 参考:入居募集のやり方

▶ 参考:インターネットを活用したプロモーション

▶ 参考:反響と内覧を成果につなげるためにできること

 

お客様に喜んで借り続けてもらう

お客様が欲しがる商品ができて、適切な宣伝をしてみつけてもらえたら、継続的に購入し続けてもらう策を考えます。

一度だけ利用して2度と買わないような商品だと、常に新しいお客様を開拓し続けなくてはいけません。これは大変な作業です。気に入ってもらって、リピートしてもらえた方が広告費もかからないですし売り上げも安定します。

賃貸住宅は、物販などのようにひとつのモノを買ってもらったら取引が終わるというフロービジネスではありません。一度契約していただいたら、毎月毎月継続的に売り上げがあがるストックビジネスです。

入居さえしていただければ安定的な収益が見込める事業ではありますが、退去が発生すると数ヶ月~数年分の収入が吹き飛ぶこともあります。入退去ごとの礼金(一時金)収入は見込みづらくなっていますし、再募集家賃は現状よりも下がるケースが多いです。経年と共に商品は劣化しますから突発的な修繕や事故が起こるリスクもあり、経営を安定させるためにはできるだけ長く、入れ替わりなく住んでいただくことが大事です。

結婚や就職など、ライフステージの変化に伴う前向きな転居は人生の門出として快く見送ってあげてほしいですが、物件や大家さん自身、管理会社の対応などへの不満が募っての退去はできるだけ減らしたいものです。そのためには、設備の故障やトラブルに即時対応できる体制を整えたり、テナントリテンションに力を入れたりすることも必要な施策かもしれません。

▶ 参考:テナントリテンションとは

▶ 参考:テナントリテンションの具体的な方法

 

バランスのよい経営を心がける

マーケティングというと、広告宣伝のことか、市場調査のことか、といわれますが、もう少しだけ広範囲な意味合いを含んだ言葉です。

部屋のリフォームに300万円かけてフル改装を行ったとしても、仲介店さんが知らなければ入居検討者には伝わりませんし、管理状態が劣悪で入居者にストレスが溜まってしまえば早期退去されてしまいます。

ありきたりな普通の部屋だったとしても、入居者に紹介する仲介店さんが丁寧に薦めてくれて、管理会社がこまめに管理をして快適に暮らせる状態を保ってくれていたとしたら、長く住み続けてもらえるかもしれません。

一部分だけ完璧に行っていたとしても、他の点がおそろかでは片手落ちです。俯瞰して総合的な施策をとっていくことが大事です。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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