データで見る賃貸市場 ~ 顧客の動向/日本の人口と世帯数の推移、年代ピラミッド
マクロデータはいろんな省庁や業界団体などからいろんなタイミングで発表されています。
業界紙などに目を通していればそれほどのタイムラグもなく、情報に触れることは可能です。
大家さんは情報収集が本業ではないですから、そこまで過敏に目を光らせておく必要はないと思いますが、時流を知って賃貸経営に役立つ何かしらかのヒントを探すことは大事です。
このページでは、賃貸住宅の顧客でもある日本の居住者についてのマクロデータを要約します。
現時点(2017.7)での最新の情報は「平成28年度住宅経済関連データ」を参照ください。ここでは、昨年2016年1月に行われた、社会資本整備審議会住宅宅地分科会の資料(とてもわかりやすくまとめてあります)を引用しながら考えてみます。
日本の人口推移
5年に一度行われている国勢調査をベースに、国立社会保障・人口問題研究所が推計した将来予測をグラフ化したものです。
人口の推移と将来推計(年齢層別)
*参考:住宅関連データ(国土交通省)
これを見ると、日本の人口はすでに山の頂点を超えてピークアウトしていることがよくわかります。
加えて、働き盛りの生産年齢人口(赤)と子供(青)がぐいぐい減って、シニア世代(緑と紫)の割合が一定の時期まで高まり続ける予測になっています。
その流れは以下の図からもよくわかります。
少子高齢化の進展
*参考:住宅関連データ(国土交通省)
ここで注目すべきなのは、ボリュームゾーンの推移です。
山の盛り上がりがどんどん上にスライドしています。
この図はただ眺めるよりも、自分、もしくは自分の子供世代の位置、そして物件の築年数を確認しながら見ると、実感できます。自分が○歳になったとき、こんなに若者が少ないのか…と思うと、戦慄が走ります。
となると、今計画している新築の将来は?修繕を迷っている既存物件はただ直すだけでいいのか?子供に承継するつもりだったアパートは今のままでいいのか?などに思いがめぐります。
至極ありきたりに考えると、高齢者への対応?外国人入居を促進?シングルマザーや生活保護世帯などの生活困窮者層?ニッチターゲットを設定する?などの未来を想像したりします。
日本の世帯数推移
次に見るのは世帯数の推移です。
住宅は世帯単位で必要とします。ですから、実際の潜在顧客の数は人口ではなくて世帯の数です。人口が減っていても、世帯数が増えていれば住宅の需要は増しているということです。
世帯類型別世帯数の変化
*参考:住宅関連データ(国土交通省)
このグラフを見ると、単身世帯と夫婦のみ世帯、そしてシングルマザー(ファザー)世帯が上向き傾向で、ファミリー世帯が減るんだな、ということがわかります。
よし、じゃあ、今度の新築企画は単身向けのワンルームかDINKS(共働き夫婦)向けの1LDKにしよう。と思われるかもしれませんが、本当にそれでいいのでしょうか。
若者人口がこれからどんどん減っていくのは前項で確認しました。
でも、増えていく単身世帯と夫婦のみ世帯。
内訳が気になります。
*参考:みずほ情報総研(単身世帯の増加と金融機関に期待される役割)
今は、単身世帯というと結婚前の若者、というイメージがあると思いますが、2030年の単身世帯の中心は高齢者です。
そうみると増える世帯の中心は、子育てを終えて夫婦のみになった熟年夫婦世帯と、夫を看取って独り暮らしになった高齢女性(女性の方が平均寿命が長い)という世帯構成が見える気がします。
しかし昨今の賃貸住宅建築ブームでハウスメーカーの営業マンは、「単身高齢女性向けの賃貸住宅を建てましょう!」とは営業していません。
「単身世帯はまだまだ増えますから、新築しても需要はあります!」と言っているはずです。
鵜呑みにしても大丈夫でしょうか。
自動的に顧客が増える時代背景ではない
製品のライフサイクルと混同して考えるのは横暴だな、ということは重々承知してはいるのですが、以下の4つのフェーズが賃貸住宅市場と被っている気がしてしまいます。
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特に成長期。
「成長期は製品が市場で受け入れられ、大幅に利益が得られる期間である。」(引用)
大家業が左うちわの不労所得だった時代のことかもしれないな、と思いました。
そして、成熟期。
「成熟期は製品が市場の潜在的購入者のすべてに行き渡り、成長期での販売の伸びに比べて減速する期間である。利益は安定的に得られるか、または競争の激化によって減少する。」(引用)
今はまさに成熟期なのかな、とも思います。
需給のバランスで人気物件・不人気物件の差が出始めていて、勝つ大家さんがいる一方で負ける大家さんもいらっしゃいます。
できるだけこの部分のボリュームを大きく保ったまま長く継続させたいものです。
賃貸住宅のお客様である日本の人口は減っていき、これまでのメインターゲットであった若年層も減り高齢者が増えることは、このようなデータを見るまでもなく実感値としても皆さん感じ始めていると思います。
四角い箱だけ用意して待っていればお客様が駆け込んでくる、という未来予測はしにくいです。
どうやって勝つ大家さんになるか。経営課題のひとつではないでしょうか。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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