空室のリスク② ~ 空室対策の考え方
空室のリスクを下げるために効果的な空室対策はなにか?という話題は、大家さん向けのセミナーや座談会では鉄板のネタです。
例えば、こんな対策が行われていることが多いです。
- 家賃を下げる
- 初期費用を下げる
- フリーレントをつける
- 設備を増強する
- リノベーションをする
- ペット可にする
- 家具家電をつける
- 仲介店に広告費を多めに払う
…などなど、大家さんは様々な手段を用いて一日でも早く入居を決めるために活動します。
ただそれらの施策はあくまでも、空室を解消するための「手段」であって、根本的な空室対策ではないと考えています。では、大家マニュアルが考える、根本的な空室対策とはなんでしょうか。
空室対策の基本
空室対策の手法はたくさんありますが、基本的な考え方はたった2つです。
- 発生した空室にできるだけ早く適正な賃料で次の入居者をみつける【入居募集】
- 不可抗力以外の退去を減らしてできるだけ長く住んでもらう【テナントリテンション】
要するに「入れて、出さない」。
コレにつきます。
「適切な商品」を「適切な価格」で「適切に供給」していれば、必ず売れていくのが市場原理です。
きちんと人が住める状態に整備して、近隣の物件と比べて価格に異常な乖離なく、求める人の元に情報が届くようになっていれば、タイミングの前後はあってもいずれ決まっていきます。
決まらない場合は、どこかに課題があります。
▶ 参考:入居募集の基本
そして、入ってもらったらできるだけ長く住んでもらうことです。
滞納や問題行動などもなく快適に住んでもらえれば、賃貸経営は超安定化します。
▶ 参考:テナントリテンションの基本
たったこれだけです。
しかし、これらの基本的な対策を全く行わずに、退去が発生してから「なにやる?どこまでやる?いくらかかる?」と慌てふためいているのが、現状の空室対策です。
世の空室対策は、家賃を下げたり、工事をしたり、広告費を増やしたりといった、お金を使う対策ばっかりです。
なぜでしょうか。
それは、業者が考えた空室対策だからです。
仲介店は、家賃が低い方がすぐに決まって仲介手数料をGETできますし、広告費を出してくれない物件よりある物件にインセンティブが働くのは当然です。
管理会社は、原状回復よりもリノベーションの方が、客付け営業が楽だし工事代金も高くて儲かります。
うがった見方をすると、業者は、空室がある方が儲かるようになっています。入居者に長く住んでもらうメリットはないのです。
賃貸経営をサービス業だと捉えてみる
お金のかかる空室対策を一生懸命やって、入居が決まったら満足して、あとは管理会社に任せて放置してしまう大家さんが多いですが、むしろそこから先が本番です。
賃貸経営は暮らしを提供するサービス業だと思ってみてください。
快適な生活空間を提供する代わりに家賃という対価を得ると考えると、ゴミが散乱していたり、電球が切れていたり、マナーの悪い隣人がいては、サービス品質を疑われます。
品質に疑問をもった入居者が、サービスの提供者である管理会社に電話でクレームを入れたとします。もしその担当者が誠意ある対応をしなかったり、約束を破ったりしたら、サービスの品質だけでなく、サービス提供者自体に不信を持つことになります。
そんなサービス、買い続けるでしょうか。
きっとまた、そう遠くないうちに退去が出ます。
そのたびに、大家さんは高額な空室対策費を管理会社や仲介店に払い続けることになります。
清掃代や入居者対応などの管理委託費は、毎月毎月かかる費用なので、負担感を感じやすいものです。
少しでも収益性を高めるために、ランニングコストを圧縮したい気持ちはわかるのですが、品質に直結するコストなので安ければいい、というものでもありません。
管理コストをしっかりとかけていれば、修繕費も抑えられ、平均入居年数が伸び、募集にかかるコストを圧縮する、ということだって可能なのです。
空室対策は単発ではなくサイクルで考える
賃貸経営と空室対策は切っても切れない関係です。
しかし、基本に忠実に行っていれば、それほど難しいものではありません。
ポイントはやはり、サイクルで考えることです。
賃貸経営は、物販やイベントなどのような単発の商売ではありません。一回お金をもらったら終わりではなく、毎月毎月リピートしてもらわなくてはいけませんので、アフターフォローや顧客満足度の向上が肝になる商売です。
結婚や転勤などのやむを得ない事情で退去になることは当然ありますが、「快適に長く住める環境」が整っていれば、次に入居される方もそうなってくれる可能性が高まります。
必死に入居募集をしてやっとのことで入居者が決まっても、端から退去が続けば一向に空室率は下がりません。
▶ 参考:空室のリスク① ~ 空室率の考え方
退去のたびにリフォーム代、宣伝広告費、空室期間の収入ロスがかさんでしまっては、何のために賃貸経営しているのかわからなくなります。
良いサイクルで回っていくことを理想にして、それに近づけていく空室対策を行っていくことが大事です。
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この記事を書いた人
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地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。
【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他
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