賃貸経営はどんな目的で行われていることが多いか

賃貸経営を行っている大家さんは、どのような目的をもっていることが多いでしょうか。

家賃収入で生活費を稼ぐことが目的の方もいますし、所得税が高い高給取りの方が節税のために行うこともあります。遊休地の活用や相続税対策の方も多いです。

大家さんの種類と経営のスタンス」で紹介した、大家さんのカテゴリーによっても、目的の違いはなんとなく判るはずです。いろんな大家さんがいらっしゃいますが、その主な目的は、「収益を得る」ことか「節税をする」ことの2つに集約されます。

 

目的1.収益を得る

賃貸経営は入居者がいる限り毎月安定的な家賃収入が見込める商売です。

自分たちが安心して暮らすことができたり、事業を大きくすることで裕福な生活を送れるようにするための収入を得ることが第一の目的です。

しかしその幅は結構さまざまで、他に本業がある大家さんは、ローンと税金の支払いが無理なくできるくらいの収益があればいい、とおっしゃいますし、大家さんが本業の方は、自分と家族が不自由なく生活できるレベルの収入を望まれます。もっというと、セカンドライフを悠々自適に過ごせるだけの余裕のある収入が必要な方もいます。

どのくらい稼がなくてはいけないのかによって、取り得る手段も当然変わります。

そこまで収益性を求めない方は、必要最低限にしておいた方がリスクが少ないですが、大きく稼ぐ必要がある方は、積極的に投資をして規模を大きくしていかなければなりません。

持っている資本によっても取れる手段とリスクが変わります。

手持ち資金が潤沢な方は、ローリスク・ハイリターンが可能なことも多いですが、純資産が薄く借り入れに頼るしか選択肢がない投資は、ハイリスクになることが多いです。

賃貸経営の収益、という意味合いからは少し外れるかもしれませんが、不動産自体の売却益(キャピタルゲインと言ったりもします)を収益源とする場合もあります。不動産を買った値段よりも高く売ることができたら、確かに収益になりますが、それはもう大家さんというよりも不動産屋や不動産投資家さんの仕事です。

 

目的2.節税をする

今、市場に出回っている賃貸物件の大家さんは、どちらかというと「収益を得る」ためというよりも「節税をする」ために始めた方が、圧倒的に多いです。

不動産に関わる税金は本当に多いですが、その中でもインパクトが大きいのは、「所得税」と「相続税」です。

 

所得税は累進課税ですから、課税所得が増えれば増えるほど税率が上がります。

今(H29.7)の最高税率は課税所得4,000万円超で45%。

5,000万円稼いだら、5,000万円×45%-479万6千円(控除)=1,770万4千円にもなります。

高額所得者は、お金を眠らせていても税金で取られていくばかりですから、収益不動産を買って稼ぎを生みつつ、借金をして課税所得を低く見せて税率を下げたり、赤字計上することで損益通算をして他の所得から還付を受けたり、といったことをよく行っています。

 

もうひとつは相続税です。

相続税は(累進課税と呼ぶのかどうか、ちょっと不安ではありますが)相続する財産額が多くなるほど税率が上がります。

今(H29.7)の最高税率は、法定相続分に応ずる取得金額6億円超で55%。

10億円相続したら、10億円×55%-7,200万円(控除)=4億7,800万円にもなります。

10億円の資産を現金で所有している方はめったにいません。多くは不動産で所有していますから、納税に苦慮します。

税金を支払うために不動産を手放したくない方は、なにかしらかの節税対策を考えますが、その時一番効果を発揮しやすいのが賃貸経営です。地主さんが行う賃貸経営のほとんどに、相続税の節税対策という目的があることは否めません。

 

偏りすぎてはうまくいかない

大家さんの中には、賃貸経営の目的が「収益を得る」ことと「節税をする」ことのどちらかに極端に偏っている方がいらっしゃいます。

いっぱい「稼ぐ」と当然払う「税金は高く」なりますが、実際はそんなに儲かっている気がしないのに多くの税金を支払っている大家さんは数え切れませんし、逆にしっかり稼いでばっちり節税している大家さんもおられます。

上記ふたつの目的は、全然違うベクトルのように見えて相容れないような気がしますが、現実はどちらかに偏りすぎることによって弊害がでることが多いです。

手元キャッシュを最大化しようとして、無茶な長期ローンを組めば、当初は儲かっているように思えてもいずれ所得税で苦しめられる時が来ます。所得税の節税ばかりに目がいき過ぎて、賃貸経営がそもそも事業として成り立っていないことも多いです。相続税の最小化を目的にして賃貸住宅を建てたことが、逆に相続人間の火種となり泥沼の「争族」になってしまっては何のための節税対策かわかりません。

私見ではありますが、賃貸経営がうまくいっている大家さんは、このふたつの目的のバランスがとてもよいです。

賃貸を事業としてやるからには、確実に収益は上げなくてはいけません。そして不動産は、買っても売っても貸しても、ただ持っているだけでも税金がかかる金食い虫です。税金の知識なしに戦うことはできないのです。

 

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この記事を書いた人

管理人 いろは大家マニュアル Site administrator
地主系大家さんを中心に、賃貸経営に関わるさまざまなステークホルダーを支援する仕事をしています。
守備範囲は広く浅いです。専門的な深い部分はすぐに専門家に頼ります。偏りはありますが、近視眼的にはならないように心がけています。鳥の目、虫の目、魚の目で大家さんのお役に立つお仕事をしていきたい(と願っている)。

【保有資格】
宅地建物取引士
公認 不動産コンサルティングマスター
賃貸不動産経営管理士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
相続支援コンサルタント
相続鑑定士
福祉住環境コーディネーター 他

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